Act.1 鋼の少女と漆黒の魔王
作者より:
はじめまして!JUPITER製作委員会です。
小説を書くのはなにぶん初めてなので…
小説というよりは、映画の脚本みたいな書き方になってしまいましたがお許しを。
未熟で大変申し訳ありませんが、お楽しみいただけましたら嬉しいです。
よろしくお願いします。
プロローグ
――暁の空に、赤い閃光が走った。
それは、魔法でも科学でもない「第三の力」の目覚めを告げる信号だった。
惑星JUPITERには、ふたつの法則が存在する。
魔力によって形づくられた世界と、物理法則に従う科学の世界。
何千年にわたって並び立っていたふたつの文明は、いま――戦争の只中にある。
魔族。彼らは魔力によって大地と命を支配する種族。
その頂点に立つのが、魔王ミーティア=モス。見た目は少女だが、38億年以上の時を生きた最強の存在。
そして、人類。科学を武器に立ち上がった者たち。
彼らは科学の粋を結集させ、感情を持つ少女型戦闘用アンドロイド「メティス」を創り出した。
さらに世界の均衡を保つ最後の希望として立ち上がったのが――
若き勇者、アイル。人類にとって救世主とも呼ばれる存在だった。
「魔族との和平交渉はすべて失敗に終わりました。このような手段は取りたくはないが、仕方がありません。我らが力を示すときです。
立ち上がりましょう。人類、そして我々の未来のために!」
――湧き上がる歓声。アイルの行動と言葉は、いつも人々を希望で満たした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「作戦コード:エクス・ゼロ開始。対象座標 ニ
〈メティス〉ヲ 投入」
――時刻、08:34。気温15度、風速3m。
魔族前線領域、第七層空間、カッシーニ平原。
鋼鉄のカプセルが天空から撃ち出され、赤い尾を引いて落下していく。
中には一人の少女がいた。
その瞳は深い紫色。無表情だが、どこか儚げな雰囲気を漂わせている。
彼女の名は――メティス。
人類が魔族に対抗するために創り出した、唯一無二の「心を持つ戦闘用アンドロイド」である。
「命令:敵 最新型ドラゴン部隊ノ殲滅。
任務失敗時 自壊プロトコル ヲ 起動セヨ」
メティスは自らの使命を反芻するように、頭の中で繰り返す。
彼女は命令に従うだけの兵器ではなかった。
しかしそれでも、「なぜ自分が戦うのか」はまだ理解できていなかった。
着地と同時に、周囲の空間が揺れる。
濃紫の霧が立ちこめ、ドラゴンを従えた魔族の尖兵たちが次々と現れる。
「対象、十二体……殲滅開始」
メティスの紫の瞳に赤色が宿り、戦闘モードに入った。
数分後、地に伏すドラゴンたち魔族の影――メティスの動きに迷いはなかった。
戦闘モード解除。
だがその時。
――音楽が聞こえた。
地面の下から、まるで地鳴りのような重低音。
異常だ。分析不能の周波数。攻撃とも違う。
そして次の瞬間、空間が割れた。
「Hey! 今! 黙示録級ソロパート突入しとるがや!
邪魔したらその場でヘドバン強制参加だがね!!」
紫電をまとう黒衣の少女が、ギターを引っ搔き重低音に乗って空から舞い降りた。
禍々しい山羊のような角に、鋭い八重歯。
魔王、ミーティア=モス。
見た目は少女そのものだが、彼女がこの戦線の主であり、魔族の王であることに疑いはなかった。
メティスは即座に戦闘モードを切り替える。
敵性存在。即時排除対象。
だが。
「おみゃあ……アンドロイド、かや? 人類もどえりゃあもん創り出したね。名前は?」
「……メティス」
「ふぅん……にゃるほど、きゃわええ顔して鋼鉄のハート」
魔王がゆっくり近づいてくる。
魔力の波動が空間を歪ませ、周囲の時間すらもねじれたかのように感じられる。
「ねぇ……おみゃあ、音楽、好きかや?」
その問いに、はしばし沈黙する。
応答すべきか、情報なのか、罠なのか。
しかし、気づかぬうちに口が開いていた。
「……メタル ハ ……心地ヨイ 振動」
魔王は目を丸くし、数秒後に破顔した。
「うっひょ!でらやべー!気ぃ合うじゃん? 今日からおみゃあ、ウチに来りゃあて! 戦闘とかどうでもええかんね、よけりゃあバンドとか組まんきゃ?!」
そして、メティスの視界が白く弾けた。
魔王の空間魔法によって、彼女は一瞬で転移させられた――魔族の本拠地、深紅の玉座へ。
一方その頃。
人類の指揮本部では、彼女の消失信号にざわめきが走っていた。
「消えた? あのメティスが、魔王によって連れ去られた……?」
司令部に混乱が走る中、ただ一人、落ち着きを崩さない男がいた。
白い外套に身を包み、瞳に静かな炎を灯した青年。
彼こそが、若き勇者――アイルであった。
「やはり動き出しましたか、魔王。
メティスを取り戻さねば――」