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「温泉地で異世界転移-ジムニーに謎の力が宿っていた」  作者: やまちゃぁん


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24/25

第24湯 俺は湯上り牛乳を堪能する

 そして再び、猫とともにミーナがぷかぷかと漂っていく。


「いいお湯なんですけど、長湯するとミーナちゃんには良くないかもですねぇ」


 ふと美月が湯船の縁にもたれながら呟く。


「ミーナちゃぁん、少しお湯から出て涼んだら上がりましょうか?」


「えぇぇ~、ミーナ達もっとはいってるぅぅ」


 「達」……たぶん猫たちのことだろう。微笑ましい、と美月は思う。


 しかし、猫たちはすでに湯船から出て岩場の上で「へそ天」状態。


「ミーナちゃん、湯上がりにおいしい飲み物があると思うから、そろそろあがろぉぉ~よぉ。お姉さんのど乾いちゃったなぁぁ」


「んんん~、わかったぁぁ、じゃあミーナも上がるねぇェ。ねこさんたち~も終わりだよぉぉぉ」


「いやいや、ねこ達はとっくにダウンしてますけど(笑)」


 ──風呂上がり──


「おぉぉ、先に上がってたぞ!!」


 ルークが脱衣所のベンチにぐったりと腰掛け、タオルで顔を拭いている。


「温泉なんて慣れてないだろうに、欲張って浸かっているから(笑)」


 亮が水分補給しながら笑う。


「こっちも猫たちはへそ天でしたよ(笑)」


「てか、ねこ温泉は入れんのかよ!?」


「器用に体も洗っていましたよ」


「すげーな異世界猫!!」


「おねーちゃぁん、飲み物は?」


 ミーナがきょろきょろとしながら尋ねたその時、ぬるっと女将が登場。


「今日の牛乳、お持ちいたしました」


 びくっとするミーナ。猫たちはもう反応する余裕もなく床でぐったり。


「女将さん、今日は幼い子がいますんで程々で(笑)」


「あらあら、これは失礼いたしました。では、こちらがフルーツとコーヒー、そして“とまと牛乳”でございます」


「うわぁぁ、トマトと牛乳やっちゃったんですか」


「でも、あのトマトだとしたら……」


「だがしかし、あたしはフルーツ牛乳で。先輩はもち、トマトですよね♡」


「おぉぉおぅ!! だな」


 亮を見つめるミーナ。


「あたしも、あたしも~とまと牛乳ぅぅにするぅ」


 ごそごそと起き出すルーク。


「コーヒーだとぉ!!」


 彼は転生前、カフェイン中毒と言っても過言ではないほどコーヒーを愛していた。今はそれ以上にミーナを愛しているが(笑)


「こいつ、コーヒーに反応したぞ」


「お、俺はコーヒーを所望する」


「牛乳ですけど、ね(笑)」


 それぞれが牛乳を飲み始める。


「んんーん、鉄板ですね」


「あぁぁぁコーヒー!! 甘いけどかすかに……コーヒー(涙)」


 ちびりと飲んだ後、ゴキュゴキュと飲み干す亮。


「とまとさん、おいしぃぃぃ」


 猫たちは普通の牛乳を飲んでいる。


(猫って人が飲む牛乳って良かったったけ? まあ異世界猫だし今更だよね)


「おかわりぃぃぃ!!」


 ミーナが叫び、ルークも「コーヒー~!」と続く。


「これはどうかと思ったが、トマトすげーな」


 そんなやりとりの中、ふたたび女将がぬるっと登場。手には黒塗りの木箱。細やかな金模様が施され、やたらと厳重そうな“いつものやつ”。


「お土産来ましたねぇ」


「あぁぁ」


「湯玉でございます」


「ゆだまぁ??」

なんだろぉって感じでミーナが言う。


「玉手箱だろ(笑)」

と、ルークも返す。


「ご安心くださいな。これは“湯の実”と申しまして、旅の記憶を少しだけ持ち帰るためのもの。お風呂に入れると、ほんのひととき、この地の香りと癒しが広がるのです」


「久しぶりに説明聞きましたね」


「それな(笑)」


 木箱を受け取る亮。それを見て欲しそうに見つめるミーナ。


 ルークは心の中で「偉いぞミーナ。我慢が出来るんだな、うん天使だ」と呟いた。


 そんなミーナに女将がそっと近づき——


「可愛いお嬢さんにはこちらを……」


 猫たちが箱に入れられたトマト牛乳とコーヒー牛乳を担いで持ってくる。


 目をキラキラさせるミーナ。


 うれしいのだが、ちょっと残念なルーク。


「それではまたのお越しをお待ちしております」


 女将の声とともに、温泉の外まで送られていくと、再び靄がうっすらと森に漂っていた。



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