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「温泉地で異世界転移-ジムニーに謎の力が宿っていた」  作者: やまちゃぁん


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23/25

第23湯 俺は温泉にとけてゆく

──男湯──


 湯けむりがやわらかく立ちのぼる中、亮とルークは静かに温泉に身を沈めていた。


「……っはぁ~~……やっと、やっと見つけたぁぁ……」


 湯面から顔だけ出して、亮が心の底からの脱力の声を漏らす。


「うっわぁぁ、すごいよこれ……! ……あっつい……のに、気持ちいい……!!」


 ルークは目をうるうるさせながら、ほとんどとろけたように岩にもたれていた。


「お前、転生してから風呂すら入ってなかったんじゃねぇか?」


「川の水浴びはあったけど……こんな自然の奇跡、久々すぎてもう……っ!」


 ルークは湯を両手ですくい上げて、頬にぱしゃぱしゃとかけながら、心底嬉しそうだった。


 亮は「この泉質はな……」と語りかけようとしたが、ふと横を見ると、すでにルークは完全に温泉に身も心も溶け込み中。


(……まあ、いっか)


 亮も静かに湯に体を沈めて、二人して至福のときに包まれていった。


 ──女湯──


「わぁぁぁぁぁ! おふろーーー!! おっきいーー!!」


 ミーナが湯気の中をぱたぱたと駆け回る。湯船をのぞきこんでは「うわぁ~」と感嘆し、壁に描かれた異国の絵に目を丸くしていた。


 その様子に、美月はもう、にやにやが止まらない。


「やばい……今日のミーナちゃん、天使度マシマシ……!!」


 さらに彼女の足元では、なぜか猫たちが二匹ずつ背中を洗いあっている。


「……自立してる!? ていうか背中洗いあってる!? え、なにそれ!?(笑)」


 ぽかんと見つめる美月。


「ミーナちゃん、私たちも洗いっこしよっか♪」


「うんっ♪ ミーナ、おねえちゃんの背中、がんばるよぉぉ」


 二人は湯桶とタオルを持って、座り込む。そしてぴしゃぴしゃと水をかけながら、くすぐったそうに笑い合った。


 そして気づけば、猫たちも混ざって背中に乗っていたり、泡まみれになっていたり……。


「カオスだ……猫混入型洗いあい空間……」


 美月が半笑いでタオルを持ち直す。


 ようやく洗い終えて湯船へ。


「ふわぁぁ~~……」


 ミーナがゆっくりと肩まで浸かり、湯けむりの中でとろけるように息を漏らした。


 その隣で、猫たちも「にゃぁ……」と声をあげながら、器用にタオルを額に乗せて浮いている。


「猫の額ほどのスペースなのに……器用な奴らですね(笑)」


 美月が笑いながら、滑りやすい岩に注意を促す。


「ミーナちゃん、足元気をつけてね。滑ると危ないよ」


「うん……あっ、あーーっ!」


 その言葉と同時に、猫の一匹がぬめってツルンッと滑り、派手に湯船にぽちゃん!


「にゃわぁぁあ!!」


「わははは! ぬこが飛んだぁ~!」


 ミーナがケラケラと楽しそうに笑い出す。その笑顔は、湯けむりに溶けてなお輝いていた。


「ミーナも浮かぶのぉぉ……」


 ぷくっと体を丸めて、猫と並んでぷかぷか浮かぶミーナ。


 その様子に美月は微笑み、目を細めた。


「……はしゃぐのもいいけど、ゆっくりつかるんだすよぉぉ~……」


「はぁーい♪」


 そして再び、猫とともにミーナがぷかぷかと漂っていく。


 ──異世界温泉、まさに極楽。


 誰もがそう思った瞬間だった。

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