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CLOVER ROOM

cloverroom case3

作者: fairy

cloverroomの第3弾

両親が大好きだった子供の小さな願い


case3 小さな思い


木村亮太、真奈美

(きむらりょうた、まなみ)

共に25歳

友人の結婚式で意気投合し、交際から1ヶ月のスピード婚、今年5年目の夫婦である



それぞれ亮太は不動産で、真奈美は駅前の雑貨屋でショップスタッフとして働いていた



2年前、1人息子の(みつる)が亡くなってから2人は毎日仕事に打ち込んでいた



ある日

いつものように亮太は朝ご飯を食べて準備し、真奈美より先に出勤しようとしていた


真奈美は茶碗洗いなど家事をしてから家をでる



「真奈美!」


久々に亮太に呼ばれた

真奈美は水を止めて、玄関に向かう

すると、家の前に一匹の猫が段ボールの中にいた



「えっ捨て猫?」「みたいなんだ

 どうしよっか?」

「飼えなくはないけど、私達家にほとんどいないし…」

「そうだよな…」

「でも今日はとりあえず家に入れとこう」

「そうだな、次の休みにでも保健所連れてこう」

「そうね」



亮太は猫を抱き上げた

すると、亮太は猫の首輪に目がいった



「ミツル…?」

「えっ」

「ほら、首輪にカタカナで」

「本当…」


2人に沈黙が走る



「あっ亮太、時間!」

「やべっとりあえず家に…」

「うん、かして」

「じゃあ行ってくる」

「いってらっしゃい」


充が亡くなってから会話は減り、2人で出かける事もなくなった

朝の会話も1年ぶり位かもしれない




真奈美は猫にミルクをあげて、とりあえず段ボールに毛布をひいておいた



「ごめんね、私も出なきゃ」


優しくなでる


「にゃあ~」

「人なつっこいのね」


「じゃあね」




真奈美は仕事中もミツルという名の猫が気になってしょうがなかった

イタズラ?それとも偶然?


『全然仕事が手につかなかった…』

ぐったりとして家に帰ると明かりが付いていた



真奈美はドアを開けて中に入る



「おかえり」

「…亮太、早いね」

「お客さん送ってそのまま直帰した」

「そう」



亮太が真奈美より先に帰る事も充が亡くなってから初めてかもしれない


「ご飯食べてないでしょ?」

「うん」


亮太は猫とじゃれていた

すると、キッチンに見慣れないものがあった


「キャットフード…亮太、これ…」


「真奈美、この猫飼わないか?」

「えっ?」

「何かさ、名前といい…運命的なもの感じるんだょ」

「……」

「しかも、こいつ帰ってきた時、段ボールの中でちゃんと大人しく寝てたんだよ

 その寝方が充にそっくりで…覚えてるだろう?」

「当たり前じゃない」


真奈美は亮太が猫を愛しそうに笑う姿に嬉しくなった


「飼おっか」



2人は久々に見つめ合って笑った



真奈美はご飯を作りながら泣きそうになった


「今日はハンバーグにしよっかな」


独り言を言った時


トテトテ


「ミツル?」

「えっ?」


猫のミツルが真奈美の横で壁に手をつき、立ち上がって真奈美を見ていた



「……ハンバーグ好きなの…?」

「にゃあ~」


真奈美は驚いた

充もハンバーグが好きだったから…


真奈美は我慢していた涙がこぼれ、猫を抱き締めていた


「ひっく…充…みつ……みつるぅ」


「真奈美」


亮太は真奈美の涙を久々に見た

お互いの張り詰めていたものが無くなったきがした




猫のミツルは寝方や食べ物だけでなく、青色が好きで海の写真や空をずっと見ていたり、船のおもちゃで遊んでいたり、本当に充と同じものが好きだった


そんなミツルのお陰で亮太は早く帰宅し、夜は家で食事をとるようになり、夫婦間は元通りになってきた




充は3歳の時、病気で亡くなった

元々生まれた時から体はあまり強くなく、ぜん息をわずらわっていた


そして、3歳の誕生日の次の日、肺炎にかかり、そのまま息を引き取った


真奈美はその日から1ヶ月ほど放心状態で亮太は見ていられず、帰りが遅くなるようになった


亮太はよく2人のキューピットでもある友人に相談していた

真奈美の働く雑貨屋はその友人が紹介してくれた場所だった


真奈美が働くようになってからは普通になってきたが、2人の間には壁があるままだった




猫がやってきて1週間

その日はちょうど充の誕生日であった


真奈美の休憩中

携帯が鳴る



「亮太?」

「真奈美、今日、夜外食しないか?」

「うん」

「じゃあ駅で待ち合わせよ」

「わかった」


気休めかもしれないが2人でディナーをすることにした


付き合い始めた頃よく行ったレストランに2人はいた

楽しそうに話していた



その様子を外から猫のミツルは嬉しそうに見ていた


『良かった』



安心したミツルは、近くの原っぱに向かっていた

幸せそうにしている2人を見て嬉しい

嬉しいはずなのに、少し寂しくなった




真奈美と亮太は食事を終えて、ケーキを買って帰宅した



「ただいまぁ」

「ミツル?」

「えっいないの?」

「どっかに隠れてるのかな?充もそうだったじゃん」

「ふふ、そうね」

「ケーキがあるって言ったら出てくるんじゃないか」

「え~一応猫よ」

「ミツルぅ~ケーキ買ってきたぞ

 ママと2人で食べちゃうぞ」



真奈美は少し嫌な感じがした

亮太はくまなく探すがミツルは見つからない


その時真奈美は充が死んだ時の記憶が甦ってきた


「あっ嫌…亮太…」

「真奈美大丈夫か?」

「充が…充が…もしかしたら…」

「大丈夫だから落ち着いて…」

「あっ…でも…充が」

「俺外見てくる」

「私も行く…」

「でも…」

「………大丈夫だから連れていって」

「…行こう」


2人は探しにでた

心当たりを全て探す

そして

3人でよく遊んでいた原っぱに一匹の猫がいるのを見つけた



ミツルだった


「真奈美、こっち」

「えっいた?」

「ほら」

「良かった…」


2人は安心した

ミツルは月を見上げていた


すると、時計が0時をさした瞬間だった



ミツルは人間の姿になって消えかかっていた


「「充!」」


2人は思わず叫んでいた



充は2人に気付いた



『ママ、パパ

 僕を産んで育ててくれてありがとう

 いつまでも仲のいい2人が大好きだよ』


「充!」


真奈美が駆け出し触れようとした瞬間

充は消えていった



「充…?」

「真奈美」

「充いたよね、今」

「いたね」

「私達に会いにきてくれたんだね」

「そうだね」

「…どうして気付かなかったのかしら」

「俺もわかんなかった」

「充が会いに…」


真奈美は泣き崩れ、その場に座り込んでしまった

亮太はその横で真奈美を抱き締めていた




2人はしばらくそのままでいた



「朝になったら次は俺達が会いに行こう」

「買ったケーキ持ってね」







2年後

真奈美と亮太は充の墓参りにきていた



「充、今日は紹介したい子がいるんだ」


真奈美の腕の中には生後半年の赤ちゃんがいた


「充、妹の(みのる)よ」



end

充が亡くなった後の両親からは笑顔が消えていることがすごく悲しかった

2人に元の笑顔を取り戻してほしいという願いが鍵となった

充は捨て猫となって、両親に近付いた

case1同様、1週間だけ



次はlastcase 花嫁

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