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本能

今回は少し短め

男も…女も…関係ない。


『【月】に気をつけて』

華南の言葉の意味をようやく知った。


吸血鬼な家系の人々は名前に【月】が付いてるらしい。確かに私に近付いて来た人達には【月】が付いていた。


知り合い、お近付きになってくる学生。

純粋にお友達になれると思って嬉しかったのに…殆どが私の血目当てだって知った。


男子なんか、強引で俺様。無理やり吸い付いて来ようとした人も中にはいた。

そんな感じなのに、今無事でいられるのは…愁先輩のおかげ。


毎日のように私に会いに来てくれて、誰も触れられない様に見張っていてくれる。

何も知らない一般の人達は、私達が付き合い始めたのだと勘違いしていた。


気が付けばもう5月も中旬。私の16歳まで約1ヶ月。

よくわからないけど…16に近付くにつれて血が濃くなっているらしい。


「正直…俺にも限度があるから…こんなに魅力的な匂いを漂わせられてたら…」

「それって、どんな匂いなんですか?」


私にはわからない…普通の人にはわからない匂い。吸血鬼の血族だけが嗅ぎ分けることが出来る…匂い。


「そうだな…例えるなら…金木犀かな」

「結構…強烈ですね…」


ある程度の距離、その匂いを感じることが出来る金木犀。近くなるにつれて、その匂いは強烈になる。


「俺は、吸血の本能が無いから耐えられるんだろうな」


そう言いながら愁先輩は目をつぶった。

昼休みの中庭。一緒にお昼を食べてココで過ごすのが日課。木の下でマッタリしていると眠くなる。私も小さく欠伸をした。


「あら…愁ってば寝たの?」


横から声をかけてきた女生徒。栗色の髪の毛に、赤茶色の瞳。まるでお人形みたいな容姿のその人…。


夕映ゆえ先輩」

「こんにちは」


微笑むその姿の麗しい事。彼女は…正真正銘の吸血鬼。月村の分家…葉月はづきの女性だった。


「吸血鬼が獲物に近付いてるのに寝てるなんて…ナイトとしては失格じゃないかしら?」

「相手が夕映先輩だからですよ」


私はニコリと微笑む。


「でも、本当に…菜月ちゃん…心配じゃない?」


これまで夕映先輩に何度も言われた事…。

私が自分の身を守るためには…理事長の擁護が必要だって事。誰も手出し出来なくするには…力がある者に守ってもらうべきだって。


「愁が純血で資格があれば…越したことはないのにね…」

「夕映先輩は…平気なんですか?」

「菜月ちゃんの匂い?そうねぇ…魅惑的ではあるけど…私、女の子に興味ないから」


楽しそうに笑う夕映先輩。最初は警戒してたけど…知ってみると気さくな人。


「本当だったら蓮に守られる方が良いんだろうけどね…。アイツ…本能のままだから」

「本能の…?」

「そうだよ。そういえば知ってる?愁の異名」

「何ですか?ソレ」

「噂に聞いていない?愁は女癖が悪いって…」


私は前に華南が言ってた事を思い出した。


「その名も【処女キラー】…改めるとダサイわね」


私は苦笑いしている夕映先輩をジッと見つめた。


「それって、本当なんですか?」

「ええ、本当よ」


今の愁先輩を見ている限り、そう思えない。


「ただ、その原因は蓮のせいだけどね」

「え?」

「愁は…女の子たちを…守っていたのよ…。蓮の本能から…」


蓮先輩の…本能…か。


「…蓮は…吸血鬼の本能のまま…処女の…乙女の血が好きなんだよね」



夕映先輩が語った真実。


****


事の始まりは、蓮先輩が13歳の頃。本格的に目覚めた吸血行為。


一度も血を口にしていない吸血鬼は抑制する力が働き、血を含まなくても意外と平気らしい。

ただ、蓮先輩は…その年に血に目覚めてしまったという。


同級生が流した血が…偶然、蓮先輩の手に触れ…興味本位で舐めてしまった。それが原因…。


蓮先輩は血を覚え好み…血を求めるようになってしまったそうだ。そして色んな血の味を知ってしまったとか。


初めて付き合った彼女の血を啜り…その味にハマっていたらしく何度も口にしていたらしく。

一線を越えてしまった途端、味が変わってしまったそうで…自分の好みは【処女】だと15歳の頃に悟ったそうだ。

(そもそも経験、早くない?そんなもの?)


それからは処女の血を好んで、男性経験のない女のコと交際をするようになったらしい。

(この年齢ならかなりいるよね…)

ただ…血に溺れすぎて…限度なく口にする事が多く…女の子は瀕死の状態にまで追い込まれていたそうだ。


意識不明…仮死…。蓮先輩は血を求め…処女の子をその容姿で魅惑しとす。


だから…愁先輩は、蓮先輩のターゲットになりそうな女の子達を守る為、軽薄な男のフリをした。とにかく血を変化させる為だけに女の子の処女を奪ってきたそうだ。


****


(それって…何だか複雑…)


そこには愛情がないのに…ただ義務のように体を交えるなんて…。

そんな愁先輩を知ると…私の中で疑問に思う。愁先輩が私を守ってくれようとしてる理由。


(正直、守る理由なんてないじゃない?傍観してても構わない立場なんだから)


「やっぱり、同情なのかな?」


血のせいだけで、吸血鬼達に狙われる私への。端から見ると、哀れな存在になるよね?私って。


(どうして、私を守ろうとしてくれるんだろ)


嬉しいけど…勘違いしそうになる。だって、恋愛感情抜きで女の子を蓮先輩から守る為だけに抱ける人だよ?私の事だって…。

隣で居眠りしている愁先輩をチラリと見る。


「愁先輩にとって私って…」


(私は…?私にとって愁先輩は…?)


「一体、何人の女の子とそんなコトしちゃってるんですか?」


守られていただろう女の子達が、ちょっと憎い。これは、嫉妬だろうか?普通なら、けがらわしい案件で引いちゃうんだけど…理由がな…。複雑。


どうして…なんだろう…。よくよく考えてみたら、愁先輩より下級にあたる吸血鬼の面々は愁先輩によって私に近付けない。

(でも…蓮先輩や理事長は?)

月村の直結の吸血鬼なら…私の血を求める事が出来るんじゃない?なのに…誰も何もしてこない。

今の私は平和に女子高生やっていられている。蓮先輩だって、あの時以来…接触してこない。それが不思議でならない。



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