表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

月村一族


高校1年生になり私は寮生活を始める。


お嬢様が多い学園だから、寮生活する人は少なかった。寂しいような気もしたけど、それほど気を使う必要もなくてラクだった。


入学式の人数も少なく…全体40人くらいしかいなかった。約、1クラス分。始業式の前日の入学式は高校の教師と在校生の代表…その他来賓くらいしかいなかった。

ただ、その在校生代表に彼がいた。

2年生代表…月村愁

3年生代表…月村つきむられん

同じ姓の3年生代表のヒトは愁先輩と容姿が似ていた。黒髪で赤茶色の瞳…愁先輩を優等生風にした感じという印象だった。


背後で他の新入生が小声で話す。


「あの在校生代表2人って、兄弟らしいよ」

「そうみたいだね、しかも理事長の孫なんでしょ?」


愁先輩たちって有名な人なんだ…その時はただそれだけの感想だった。

だって、私が2人と交流を持つなんて思っていなかったし。きっと愁先輩だって、私の事なんて覚えていないって思ったから。

正直、私は愁先輩に会えて凄く嬉しい気持ちだったけど。

出会った時に惹かれていた想いは、会えない時間で少し育まれていたみたいで…再会した時には、恋が芽生えていたんだ。


『キーンコーンカーンコーン…』


校内に響くチャイムの音。入学式が終わり自由な時間。寮に戻る人、家に帰る人それぞれ。

私は真新しい制服に身を包み、学園内を散策する事にした。だって、ワクワクするじゃない?新しい事って。

教室を出て、廊下を進み、入学式のあった体育館へ向かう。もしかしたら、まだ愁先輩がいるかと思ったから。

中を覗くと、まだ数人ほど人が残っていた。私はその残っている人を確認する。


「あ」


4人ほど集まった人達の中に愁先輩がいる事に気付いた。よくよく、見てみると…皆似ている気がした。私の視線を感じたのか、それぞれがコチラに振り返った。悪い事をしているような気分になりソワソワしてしまう。


「菜月?」


愁先輩が私に気付き、驚いた表情をしていた。そして小走りに私に近付いてきた。


「菜月…だよね?」

「あ…お久しぶりです!愁先輩。あの…無事、入学できました」


私は照れながら笑う。愁先輩は驚きの後、微笑みに変わった。


「おめでとう!」


私の頭をクシャクシャと撫でる。それが照れくさくて、でも嬉しかった。頑張ってよかったって思えた。


「愁?」


私達のやり取りを見ていた男の人が、近付いてきた。見た感じ30代の愁先輩に似た男性。落ち着いた雰囲気で、妖艶な人…。瞳の色が紫で…惹かれる気がした。


「その少女は?」

「あ…えっと、今年の高校新入生で…清瀬菜月さんです」


愁先輩は微妙に緊張しているように思えた。


「き…清瀬…菜月です。初めまして」


私は不思議な感覚になりながら、挨拶をする。


「愁の…父親です。どうぞ宜しく」


優しく微笑み、手を差し出してきた父親。私はその手を軽く握った。父親は、私の事をジッと見つめてきた。


「キミ…僕の愛人になるかい?」

「は?」


真面目な表情で突拍子もない言葉を吐く父親に私は呆然とした。


「何を言っているんですか?」


愁先輩も驚き、突っ込みを入れる。


「僕は大真面目だよ」


父親はフッと笑った。


「愁…気付いているんだろ?」

「…そう…なんですか?」


2人のやり取りがわからず、呆然と見つめる。


「必ず…そうなる」

「…」

「ただ…決めるのは彼女だけどね」

「…はい…」


ヒソヒソと話す2人をよそに、私は他の2人の様子を見ていた。気のせいか、私を見てやっぱりヒソヒソと話す。

(一体、何なの?)

怪訝に私は愁先輩を見た。


「あの…」


愁先輩は私と目が合うと、優しく笑いかけてきた。


「菜月…父の愛人になる?」

「愁先輩まで、何言ってるんですか?」

「ははは」


実はこの時、愁先輩が半分以上本気で言っているなんて思ってもいなかった。



*****



次の日…不思議と私を見つめてくる視線が多かった。


「私、どこか変?」


同じクラスで、同じ寮生の新しい友達…優希ゆうきに質問してみる。


「どこも?何で?」

「う~ん…気のせいかなぁ?視線を感じる気がするんだよね…」

「そう?」


優希には感じていないらしい視線。でも…。


「菜月」


校門をくぐると、愁先輩が私に声をかけてきてくれた。


「愁先輩!おはようございます」


まさか朝から会えるとは思わなかったので、気分が少し持ち上がる。


「え?月村先輩?」


一緒にいた優希が驚き、そして照れる。


「おはよう」


愁先輩は、挨拶をすると周囲を見渡した。


「注目されてるね」

「きっと、先輩が私達に話しかけてるからですよ」


理事長の孫が一般生徒に声をかけてたら、注目されるでしょ?しかも新入生。


「いや。菜月のせいだよ」

「え?」

「コチラを見ている人の大半は…月村の一族だね」

「…一族?」

「血縁者」


私は周囲を見渡した。この学園って…血縁者が多いんだ…。


「遠縁だけど…一族だ」

「そう…なんですか…」


優希も私同様に驚き、周囲を見渡す。愁先輩はマジマジと私の事を見つめてきた。その視線に私は顔が熱くなる。


「多分、これで…大半の者は手を引くと思うんだが…」

「?」


愁先輩は呟くと、一つ溜息を吐き…その流れのまま、私の顔を引き寄せキスをした。

突然のキスに驚き、固まる。

軽く触れたキスは、次に触れると長いものになった。私は我に返り、愁先輩の腕の中で暴れた。


「んっ…」


先輩は暴れる私を力強く抱きしめ、深いキスに変えてきた。深く絡まってくるキスは私の抵抗を打ち消していく。優しくて、甘い…官能的なキス。体中の力を奪っていく。


キスが終わった時には、私は愁先輩に体を預ける感じにもたれ掛っていた。初めてのキスだった。


「菜月、可愛い」


耳元で囁く愁先輩。恥ずかしくて真っ赤になる。


「何で…こんな事…」

「それは、周囲の注目する奴らに知らしめる為だよ」

「何をですか?」


愁先輩は、真剣な眼差しで私を見つめ、そして微笑む。


「菜月は俺の女だって」

「え?」







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ