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はじまりの日

性的表現あります。苦手な方はご注意ください。



私は…私の全てをアナタに捧げると決めたから…。



*****



「っあぁ…ん」


抑えられず漏れた声。

誰もいない図書館は、月の光によって周囲を確認できる程度の暗さだった。

静かな場所に響く2つの吐息と興奮を煽る営みの音。


「っ!!」


急な痛みと同時に、空間が静まる。

身動きとれずに…ただジッとソレが終わるのを待っていた。

体中が熱い。呼吸が荒くなる。


「もう…ダメ…」


力が入らないので抵抗しきれない。目の前が一瞬、暗くなるような気がした。

再び動き出す体が、私を快楽に導く。

自分の体が溶けて無くなるのではないかと思うほど焦がれていた。


菜月なつき…愛してる…」


私の目の前で、優しく見つめてくる彼。容姿端麗なその姿の彼は…紫色の瞳をしていた。


しゅう先輩…私も…」


これ以上もないほど、愛してる…そう思える人。私の永遠の人…。永遠を共に生きると誓った愛しい人。


私は彼と出会う為にココに導かれたんだ。



*****


私達の出会いは、1年前になる。

エスカレーター式の私立校である桜御台さくらみだい学園は小学校から大学まである広い敷地に建つ洋館。敷地内には、図書館と希望者専用の寮がある。

私は家庭の事情で、寮のある学校を希望していた。


中学3年生の私。

高校から受験する人は少ないらしく、珍しい存在として見られた。

受験前の夏休みに、下見として学園に訪れた時…私は愁先輩と出会った。


広い敷地で迷子になった私。

自然豊かで、慣れないと右も左もわからなくなるほど木々に囲まれている。道なりに歩いていたつもりだったのだけど…気が付くと学生寮付近まで入って来ていたらしい。


たどり着いたのは、一番奥に配置されている図書館だった。この図書館は寮生専用の建物で一般生徒の立ち入りは殆どない。


正確には、この図書館は月村つきむら一族の専用スペースと言われていて滅多に他の人は入ってこないらしい。

月村一族っていうのは…この学園の創立者であり理事長の一族。古くからの血筋らしくこの地域では有名らしい。

そんな人達の憩いのスペースである図書館に迷い込んだ私。何も知らないから、踏み込めたんだ。


「誰?」


背後から突然声をかけられて、驚き振り返る。確認したその姿に私は息をのんだ。

映画俳優の様な麗しい容姿のその人は、爽やかでスタイルが良くて…少女漫画から飛び出してきたのではないかと思うほどだった。少し茶色がかった髪の毛に、少し赤っぽい茶色の瞳。


「あの…ごめんなさい。迷ってしまって…」

「ここの生徒じゃないの?」

「えっと…来年、受験する予定なんです」

「へぇ…珍しいね」


高すぎず低すぎない声。惚れ惚れする。


「キミの名前は?」


真っ直ぐな瞳にドキッとした。


清瀬きよせ菜月なつきです」

月村つきむらしゅう

「え?」

「俺の名前」


淡々と自己紹介をしてくれた愁先輩。微笑ましくて顔が緩んだ。


「14歳?」

「あ、いえ。6月に15歳になりました」

「俺も6月に16になった。誕生月、同じだね」


些細な事で、愁先輩は笑顔になる。その笑顔が何だか可愛い。


「菜月」

「え?は、はい?」


突然、名前で呼ばれて驚く。


「敷地内、案内しようか?」

「良いんですか?」


更に驚きつつも笑顔になる。優しさが嬉しかったから。

愁先輩は、私の手を繋ぎ歩き出した。初めての経験でドキドキが止まらない。一瞬、夢なのではないかって思った。


案内してもらっている間、楽しくて会話が弾む。私の中学の事、この学園の事。


「菜月、頑張って入学して来いよ」

「そうですね!頑張って入りたいです」


せっかく愁先輩と出会えたのだから、このままサヨナラも寂しい。


「待ってるからな」


優しい笑顔と声。私はこの時、愁先輩に魅了されていたんだ。



私は頑張って受験勉強して、入試を受けた。何とか合格して入学が決定する。

時々、手続きやらで学園に行っても…愁先輩と再会する事はなかった。


結局、入学するまで会えなかったんだ。


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