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独占情報!! あの都市伝説のバイトに迫る!!

作者: まい

 大前提で、この作品はフィクションです。


 現実ではありえない架空の話を、インタビューの形で書き上げたものです。

――――まず、(くだん)のアルバイトをする事になったきっかけから教えて下さい



 はい。


 ある日の夕方でした。


 家へ帰ろうと、急いでいる時でした。



 男性でした。


 仕立ての良い高そうなスーツでビシッと決めた、ある程度高い地位にいる真面目な会社員に見えたんです。


 そんな人が私に話しかけてきて。


「1度だけで良いから、軍手を道路に落とすバイトをしてみませんか?」


 って、その軍手を手で(つま)んでプラプラさせながら。



――――いくら良さそうなスーツの男と言っても、(あや)しすぎませんか?



 あはは、そうですよね。 怪しすぎますよね。


 でも私は怪しすぎるからこそ。


 その非日常感に()かれてしまって、思わず()けてしまったんです。



――――勇気がありますね



 ですよねぇ。 当時はどうかしてたんですよ、私。


 世の中は私が思うように上手くいかなくて、気に入らなくて、ムシャクシャしていて。


 そんな時にこんな誘いをされたものだから、もうどうにもなれとか、世の中への些細(ささいな)反逆のつもりとか。


 ネットで軍手落としの闇バイトの物騒な話も見たことがありますし。


 反逆とかそんな気持ち……うん。 そんな気持ちだったんだと思います。


 それでその場でバイトするって答えまして、男性からプラプラさせてた片手だけの軍手を受け取りまして、こう言われたんです。


「住宅地で、貴女(あなた)の住むアパートの近所にある〇〇さん(プライバシーに配慮して伏せております)の家の前の生活道路のド真ん中に、貴女へいま渡した軍手を落として下さい。

 今から帰りがけに、ポンと落として頂くだけで終わりの簡単なバイトです」


 そう、言われたんです。



――――へえ。 ネットで見つかる求人広告とは、また微妙に違うんですね。



 そうですね。 しかも渡された軍手を落とす前に入念に確認しても何も無い普通の軍手でしたし、がっかりした気持ちがあったのを覚えています。


 本当に普通の軍手でしたから。



――――その軍手、落とした後の話は有ったりしますか?



 ええ、ありますよ。


 普通の軍手にちょっとガッカリしながら落としたのですが、やっぱり気になるんですよね。


 落として、それがどうなるんだろうって。


 なので落とした後はその落とした場所はアパートから見られるので、チラチラと見てました。


 通行人やバイクに踏まれて、汚れてく軍手を。


 あ、その道路の幅は車の1.5台分位なので、車は真ん中を通るからほとんど軍手をまたいで行ってしまいますね。



――――なるほど。



 それでもう寝るかな。 なんて時間で最後の確認で軍手を見てみたんです。


 すると、ちょうど部活か遊びから帰る男子学生が来たんですが、その子が軍手を踏みました。



――――ん? 他の通行人とわざわざ分けて言ったって事は、何かあったんですか?



 はい。 警察の方に言っても信じてもらえませんでしたが。


 えっと……その男の子が軍手を踏んだら、軍手ごとパッと消えまして。



――――消えた?



 はい。 消えました。


 なのでビックリして、警察へ通報したんですよ。


 名前を何故か思い出せないのですが、その◯◯さんの家とは私のアパートを挟んで反対側の△△さん(プライバシーに配慮して伏せております)の息子さんだったはずなのです。


 その子が消えてしまって。


 訳が分からなくなって、それから自分が落とした軍手が影響したのかと考えて、責任感やら罪悪感やらがゴチャゴチャになって恐ろしくなってしまって。


 それで確認のために警察の方が現場に来てくれたのですが、証拠になる物が何も無いから、私のアパートへ確認に来て。


 名前は出せなかったけど苗字と家は覚えてますから、そこの息子さんだって伝えて、確認してもらったんです。


 でも、(かんば)しくなくて。



――――どうしてですか? そこまで分かっているなら、確認できるてしょう?



 そのはずなんです。


 でも、警察の方からはイタズラの通報だと見られてしまって。



――――は?



 その△△さんの家のお子さんは兄と妹の子供2人だったはずなんですが、確認が済んだ警察の方から「そこのお宅は確かに子供は2人ですが、()()ですよ」と。


 はい、そうなんです。 私の記憶と違っていまして。


 そうなったら、私が頭のおかしい人なんじゃないかって思うでしょ?



――――それは、なんとも……



 いえ、私自身もそう思っていますから。


 今でも。



――――今でも、ですか?



 はい。 息子さんだったのは確かなんです。


 でも警察の方から言われていると、私の頭の中でも変化がありまして。


 息子さんだったはずなのに、記憶の中で「そう言えば姉妹だったのが正しい記憶だったな」ってなってました。


 これが不思議なんですよ。


 息子さんだった記憶がしっかり残ってるのに、でもその息子さんはいなくて姉妹なのが正しい。


 おかしいですよね。


 でも本当なんです。


 それで今も思い出すと混乱する時がありまして。



――――それでしたらもう、今回のインタビューはここまでで大丈夫ですよ



 いえ、もう終わりなので最後まで言わせて下さい。 大丈夫ですから。





 ……………それでこのおかしい状況をどうにか理解しようと頭を整理していたら、警察の方に言われたんです。


「あの家に息子はいない。 最初から娘が2人だった、それで良いではないですか。

 あの男子学生は求められたので遠い所へ存在ごと行ってもらい、最初から男子学生はいなかった。

 それでは矛盾があるから世界が人数的な辻褄を合わせるために、最初から姉妹がいた。

 ただそれだけですよ」


 なんて意味深な事を言われまして。


 それで慌てて警察の方の顔を見たら顔が変わっていって、私に軍手落としを頼んできたスーツの方になりました。



――――それはまた……



 不思議でしょ?


 でもそれを本当に体験しました。


 それでスーツの方にそう言われて、腑に落ちまして。



――――落ちちゃったんですか!?



 はい。 私では理解出来ない大きな何かの都合によって、私が利用された。


 それならこの理解出来ない事態にまきこまれて、振り回された被害者です。


 そして私がやった事は悪い事ではないと、なにか意味があるんだと、スーツの方が認めてくれたんです。


 証明できるものなんてありませんし、私にはその言葉だけで十分です。



――――そうですか



 ええ。 そうでないと、私は罪悪感で押しつぶされてダメになってしまいますから。


 私がした事で、人を文字通りに1人消してしまった重さに。


 その重さを軽くしてくれるために、用済みになったはずの私に男の子がどうなったかを教えに来てくれたんです。



――――そうですね。 そう思っておけばいいと思います



 ですよね。



――――ええ。 では、本日はインタビュー取材に応じて下さって、どうもありがとうございました。



 ありがとうございました。

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