目覚め
ここは人里離れた土地。
緑豊かで動物達も土地も穢されていない、誰が見ても一目で分かる美しい場所。
大きな樹々に囲まれたここは時間を忘れてしまうほどに、心静かに過ごせる。
光を求め、土から出てきたであろう樹の根っこに頭を置き、樹々の隙間から差し込むような微かな光を浴びつつ、俺は寝ていた。
「ふぅわぁ~......、く、首が...痛い,...な。」
しばらく同じ姿勢で寝ていたのか、首まわりがとてつもなく痛い。
起きてすぐ、喉が渇いてたことに気づいた。
「んんん、ぁあ、あ、あ。」
渇きすぎてうまく喋ることができない。
欠伸をして目に涙を溜め、目を何回かパチパチして目を潤わせた。
俺は独り言が好きなので、何か喋りたくなってきた。
近くにあるそれはそれは美しく澄んだ川が流れていたので、なんとか体を起こして川まで歩いて行った。
「み...水。」
ゴクゴクと手で掬った水を飲んだ。
当然ただの水なのだから味もするはずなくお腹が少しタプタプするほど飲んでしまった。
お腹がすいていたのだろうか、と思うほど良い飲みっぷりをした。
飲んだ時喉を伝う水とは違った感覚を感じた。
肺の真ん中にある気管支のあたりに何かが一点に集中するように集まる。
「ぁああ、あああ。おお、やっと喋れるようになったか。」
言葉を正確に発することができた俺はあることを思いだした。
そうだ、この感じこれは魔素だ。
魔素とは魔法を使うための材料みたいなもので、魔法を使うなら魔素を持ってない者は扱うことができない、とても大事なものだ。
寝る前の俺はたしか、魔素を限界まで摂取してから寝たと思うんだが、寝てる間に発散でもしてしまったんだろうか。
「うぅ、水を少し飲みすぎたな。にしてもここの川には魔素が含まれているのか。
こんな川聞いたことないぞ。なにか保存できる容器は持ってなかったかなぁ。」
寝ていた樹の根っこのあたりを探してみると土を被っていた小さくも大きくもない袋があった。
土を掃って袋の中を開けてみると、空の瓶が二つ、古そうな手記、何枚かの硬貨、銀色の指輪などが入っていた。
「お、ちょうどいいところに空き瓶あるじゃん。
これを開けて、水を入れて......よしこんな感じでいいか。」
綺麗な水を二つ手に入れた俺は袋の中に入ってあった手記を読んでみることにした。
手記を開けた瞬間、目の前が真っ暗になって俺は倒れこんでしまった。