52話 兄弟
「カイル殿下!公爵家は皆無事で、ジルコニア公爵がこちらへ軍勢とともに応援に向かっているところだと報告が入りました!」
「そうか!アイリスはどうなった⁉︎」
「無事避難され、家人の実家へ匿われているということです」
「よかった…、では憂いは何もないな…行くか!」
カイルは装備を整え覚悟を決めると、待機する軍勢の陣頭指揮に向かった。
王はカイルに近々代替わりすればいいと思っていたので、危険な陣頭指揮は自分がやると前に出ようとしたが、到着したジルコニア公爵に止められた。
現王が前に出てやられてしまっては国がひっくり返ってしまうし、カイルの戦闘力なら心配ないから、どっしり構えて待っているよう諭され、渋々隠しルートがある王の間で控えていた。
◆ ◆ ◆
カイルが味方軍勢の前に出ると、敵の陣頭指揮官が見えた。思っていた通り、マクロスだった。
マクロスもカイルと話そうと思っていたのか、カイルが前に出てくるとよんで、逸る軍勢を抑えながら時を待っていた。
先にカイルが声をかける。
「マクロス!…引くことはできないのか?」
「…当然です」
「どうして僕たちが争わないといけないんだ⁉︎」
「…兄上が余計なことをするからですよ!…全て知る必要なんてなかった!…人には知らないからこそ幸せということもあるんです‼︎」
「まだそんなことを!あの女ではこの国が潰されてしまう!そんなこともわからないのか⁉︎今まさにそうなってしまっているじゃないか!」
「…その国に僕とマリーサは潰されかかっていますよ…
僕たちを追い詰めてくるような国、僕はどうだっていい…
なぜ自分が幸せになれないのに、幸せを奪おうとする国を守らなければならないのです?
どう考えても理不尽でしょう?
僕とマリーサが幸せになれるなら喜んでこの国を守りましょう。しかし!そうでないならこんな国滅びればいい!
僕はマリーサとその子を守る!」
「マクロス!なんて事を!…お前になら王の座は譲ってもいいとまで思っていたのに…
あんな女のことで、そこまで狂ってしまうのか⁉︎
なぜだ…お前と戦いたくなんてない…」
カイルは苦しい顔をしたが、マクロスはそれを冷たい目で見ていた。
「…ご自由にどうぞ。ただ、兄上が戦わなくても、僕はやめません。兄上と父上のお命を頂き、僕はマリーサと子どもと幸せになります」
「どうしてもか…?」
「僕の気持ちは変わりませんよ」
「…これは僕たち親子の問題だ。殺し合うにしても3人でやればいい。こんな大勢人を巻き込んで血を流させようとするな…」
「残念ながら、護衛だらけのお二人をどうにかできる力は僕にはありません。こうして内戦の形を取るしかなかったんです。どちらにせよ、僕が王になるならそちら側の派閥は邪魔になりますから、一石二鳥でしょう?」
「マクロス!人の命を軽んじるな!皆にはそれぞれ愛し愛される者がいる!命を奪われれば涙を流す者がいることを忘れるな!」
「…多くの命を奪った兄上がそれを言うのですか」
「……だからこそ言うのだ。わかるから、やられる辛さもやる側の辛さも、わかるから言うのだ!」
「…平行線のようですね。兄上…こんな風になってしまいましたが、僕はあなたが大好きでした。憧れのかっこいい兄上でしたよ。…今までありがとうございました」
「…なにを…」
マクロスは、剣を頭上に振り上げると、前へ振り下ろした。
戦闘開始の合図だった…




