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3話 お名前は?

パタパタパタ


 足音を立てながら急いで戻ってきたアイリスは、薬草のような何かが瓶詰めにされたものと包帯を抱えていた。

 それを見た男性は少し不安そうな顔をするが、

アイリスは気にせず男性が押さえていた布を取る。


「少し血が止まってきたみたい…よかった」


 と言いながら、新しい布にその薬草を貼り付けると、ベタッと傷口に乗せた。


「っ⁉︎」


「…ごめんなさい、少ししみるけど、これを付けておけばすぐに痛みが引いてきて、治りも早くなるから、ちょっと我慢してね?」


 痛みで顔を歪めた男性にそう言うと、傷口が開かないようにしっかりと包帯を巻いた。


「…ありがとう、助かったよ。…君は医者でも薬師でもないのにこんなことができるなんて、すごいんだね?」


 男性は、こんなに若そうな女の子が血を見て少し手を震えさせながらも、一生懸命に手当てしてくれたことに、感謝していたし、本当にすごい子だと思っていた。


「ふふっ。私にはすごい先生たちがついてますから」


 アイリスはわざと自慢気にそう言うと、ベッドの下をガサゴソと探り…


「ほらっ、私の先生たち!」


 と、ニコっと笑って沢山の分厚い本を抱えて見せた。それは図鑑や辞書などで、色んな種類の物があり、その中には『世界の薬草と使い方』と書かれた本もあった。


「なるほど…でもその本を頼りに1人で何でもしているのは、やっぱりすごいな。あ、そうだ、君の名前を聞いてもいいかな?」


「あっ…え、ええ。イリスよ」


 アイリスは本当の名前を言いたくなくて、でも根が正直者なだけに全く違う偽名も思い付かず、少しだけ嘘をついた。


「イリス…」


「そう。イリス。…あなたは?」 


「ああ、僕は…?…あれ?…僕は…あれ?おかしいな…思い出せない…?」


「ええっ⁉︎自分の名前が⁉︎…じゃあもしかして…ここへ何しに来たのかも…?」


「……そういえば……わからない…」 


「ええー⁉︎それって記憶喪失⁉︎」


 アイリスは両頬に手を当てると、大きな口を開けて叫んだ。

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