20話 アクアの記憶6 逃げた婚約者候補
カイルがこの王宮に戻ってから3か月が経ったころ、王である父からの書状が執務室に届けられた。
緊急と言われたので、急いで中を確認する。
「何々……?………なっ⁉︎ど、どういうことだ⁉︎
アイリスが、に、逃げた⁉︎
僕との婚約が嫌で逃げただって⁉︎
…嘘だろ?約束したのに…
はぁ…幼な過ぎたからか?…そりゃまあ確かに、あんな小さい頃の約束なんて無効だよな…」
カイルは口に手を当て愕然とする。
「…それにしたって、逃げられるほど嫌われるようなことしたか?
…4歳も年上は嫌になったのか?
王妃になるのが嫌なのか?
…戦争で…人を殺したから…か?」
カイルは今すぐアイリスを探して話をしてみたい衝動に駆られたが、まずはジルコニア公爵を王宮へ召集し、王と共に3人で話をした。
公爵からは、アイリスの居場所は分かっているが、頑固な性格で、無理に引き戻しても余計に思い余った行動をしかねないから、少し様子を見させてほしいと言われた。
あの幼い頃の性格を思い出すと、確かに公爵の話にも納得できた。
だからそれはいいとして、アイリスの身が心配になったカイルは、居場所だけは教えて欲しいと頼んだ。
しかし自分から聞いたものの、公爵から王都の外れにある森の奥で一人暮らしを始めたのだと言われた時は本当に驚いた。
そこまで自分との結婚が嫌なら、お互い他の相手を探すべきだと公爵と父上に打診したが、それは国のためにならないと諌められた。
カイルは3年の間に想い合える相手がいなければ精霊になって人間界から消えてしまう。
もし今違う相手を探しても想い合えなければ相手の時間を奪って迷惑をかけるだけだ。
アイリスが逃げているなら、そのうち自分は消えて自由を手に入れて貰えると考えたカイルは、それもいいのかもしれないと思った。
しかし、そうは思っても、森の中で令嬢がたった1人で暮らしているなんて心配すぎる。
父上からは、近衛の中でも腕が立ち、外の生活に慣れた者を猟師の格好をさせて護衛につけたから心配するなと言われたが、心配しないわけない。
本当に大丈夫なのかとても不安だった。




