風の精霊シルフ
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―――光の集束が遂には人間の形を創り出して、そこに女性の姿をした存在が現れる。
「漸くBOSSのお出ましか……」
風の精霊だと察した八雲が静かにそう呟く―――
巨大な竜巻の中心部で周囲は暴風が吹き荒れる状況の中で、八雲は『風の精霊シルフ』と対峙した。
「風の精霊!―――何故この国に嵐で襲い掛かる!!」
八雲の正面で淡いライトグリーンの光に包まれながら、暴風の中でも静かに浮遊する風の精霊シルフに八雲は大声で問う。
【……】
だがしかし、シルフがその問いに答えることはない―――
「おい!!なんとか言ったら―――」
「―――マスター!シルフは何かに怒ってるんだよっ!!」
無言のシルフに業を煮やした八雲が怒声を上げるその時、水の妖精リヴァーが八雲の声を遮るように叫んだ。
「怒ってる?何に怒っているって言うんだ?」
「分かんない……でも!シルフから怒りの感情が溢れ出ていることは確かよ!!」
八雲とリヴァーが言い合っている最中に、シルフが動いた―――
「―――ッ!?」
―――シルフが右腕を天に翳すとその右手に大気を圧縮していく。
先ほどのエアリエル達が撃ち出していた空気弾とは明らかにものが違う強力な力を感じ取った八雲―――
「リヴァー!―――あれはヤバいっ!!」
―――八雲が叫んだ瞬間、
シルフの右手が振り下ろされると同時に圧縮された巨大な大気弾が八雲に向かって発射される―――
「クゥッ!!―――なんとか避け……なにっ!?」
―――するとそれを回避してホッとしていた八雲の背後から追尾するように戻って来た大気弾が再び襲い掛かる。
「ホーミング機能搭載かよっ!!―――だったら!!!」
竜巻の中を《空中浮揚》で飛び回り、大気弾を回避していく八雲だが、埒が明かないと夜叉と羅刹を構えて大気弾に向き合って夜叉と羅刹を鞘に納める―――
「これで斬るっ!!
―――九頭竜昂明流・八雲式剣術―――『影一閃』!!!」
―――空中で居合いの構えから抜き放たれた夜叉は、影のように刀身が黒く伸びていき、対象を切り落とさんと大気弾に迫る。
しかし―――
「なにぃ!?」
―――伸ばした刀身にはまったく手応えがない。
むしろその伸びた影の刀身を伝わるようにして大気弾が液体のように形を変えて八雲に襲い掛かる―――
「マスター!!!」
―――離れていたリヴァーの声も虚しく、変形した大気の塊に飲み込まれた八雲。
「カハッ!?こ、これ、は―――」
その塊に飲み込まれた途端に、八雲は―――
(い、息がっ!?―――こ、呼吸出来ないっ!!!)
―――大気の塊であるはずのその中に取り込まれると、まったく空気のない真空状態で呼吸が不可能に陥ってしまう。
その上に集束された大気の中は、まるで金属の液体の中を泳いでいるかのように重たく全身に絡みつき、身動きすら儘ならない―――
―――予想にしなかった常識外れの攻撃に八雲は困惑する。
途方もないLevelの高みにいる八雲だからこそ、日本にいた頃の普通の人間の時と比べて長時間の呼吸の停止も平気ではあるが、いつまでも呼吸が出来なければ八雲でも絶命する―――
―――生物の呼吸を止めるという原始的だが確実に命を奪う攻撃に、八雲は水の精霊オンディーヌとは違う恐怖をシルフに感じていた。
(流石に、このままだとヤバい!)
空気のない状況で思考をフル回転させた八雲の脳裏に浮かんできたのは―――
―――この異世界に着た頃、ノワールの胎内世界でクレーブスに受けた魔術の講義内容だった。
『八雲様、魔術属性の関係は―――火は風に、風は土に、土は水に、水は火に有利な属性となります』
『火は風に―――』
(火は……風に……それならっ!!)
空気のない状況の中、八雲の瞳には諦めることのない力強い光が宿っている―――
―――次の瞬間、
なにを思ったのか八雲は空中から地上に向かって急降下を開始する―――
「マスター!?―――何をする気!?」
―――リヴァーは八雲の行動の理由が分からずに困惑する。
しかし、そこで八雲からの『伝心』が届く―――
【リヴァー!ノワール!グラハムドも連れてすぐに竜巻から脱出しろっ!!!】
【八雲か!?なにをする気だ!?】
―――それに対してノワールの返事が届いたが、
【説明している暇がない!早く脱出しろっ!!】
【分かった!だが絶対に我のところに戻ってくるのだぞ!!絶対だからな!!!】
そう叫んだノワールの『伝心』が八雲に届いた時には、八雲は既に大地に下り立っていた―――
(当たり前だ!精霊が相手だからって容赦しねぇからな!!)
―――そう決意した八雲は『限界突破』を発動する。
蒼白い炎のようなオーラに全身を包まれた八雲が、空を見上げてライトグリーンに淡く光る風の精霊シルフを睨みつける―――
―――そして両手を黒雲の広がる空に向けると、
(八雲式創造魔術―――)
『思考加速』を発動した中で急速に独自の魔術を構築していく―――
―――空に上げた両手の先、空中には蒼白い炎で形作られた巨大な魔法陣が展開される。
今、この時、この場所で生まれた新たな魔術式―――
「―――《煉獄極焔》!!!」
―――肺に残っていた空気を使い切ってその新魔術を詠唱した。
空中に展開した巨大な魔法陣が呼応するように蒼白い光を放ったかと思うと、魔法陣から蒼白い焔の柱が天空に向かって噴火する―――
―――その焔は凄まじい勢いで竜巻の内部を駆け昇っていくと、まるで竜巻に引火していくように渦巻く風がみるみる蒼白い焔に置き換わって火炎の竜巻へと変貌していった。
「―――ッ!?」
空中に浮遊していた風の精霊シルフのいる場所までも蒼白い焔で包み込み、風が火に書き換えられるようにして竜巻の制御を失っていった―――
―――首都ミルで防壁を展開するラーンは、
「流石は我が主……力技で押し通すとは」
巨大な蒼白い焔の柱と化した竜巻を見てフッと微笑む―――
―――同じく首都ミルのダンフル城から竜巻の様子を見ていたデカダン王やアクニス王女達は、
「な、なんなのだ……あれは……まるでこの世の終わりのようではないか……」
天まで届く巨大な焔の柱に慄き、戦慄するデカダン王だったが、その隣では不安そうな表情を浮かべるアクニスがいる。
「八雲様……」
両手を胸の前で握り締めたアクニスは、八雲の無事な帰還を海聖神に祈るのだった―――
―――膨大な魔力の奔流となった爆炎を噴火させた魔法陣の発動により、八雲の周囲を取り囲んでいた真空状態が解除された。
「ハァッ!よし!息が出来るぞ!!―――やってくれたな!シルフ……今度は俺の番だっ!!!」
八雲の標的となった風の精霊シルフは周囲を取り囲んでいる蒼白い焔の柱に声もなく困惑して見回す―――
―――八雲に奪われた竜巻は既に自分の制御から外れて、さらに前後左右からまるで蛇のような蒼白い炎の渦が飛び出しては襲い掛かってくる。
淡い輝きを放つ身体で空中を飛翔しながら襲い掛かってくる炎を回避していると、背後に気配を感じて振り返る―――
「―――煉獄の炎に包まれた気分はどうだ?」
―――そこに現れたのは、青白いオーラに包まれた九頭竜八雲だ。
―――煉獄
地上と天国、地獄との狭間にある天国へと迎えられるために必要な自らの罪を浄化するための炎を指す―――
―――八雲の『創造』したこの《煉獄極焔》は、火属性と光属性を合成したこの世界に存在する究極の浄化の焔なのだ。
この焔に包まれると肉体的燃焼のみならず、その魂の根源にまで浄化の焔が及んで浄化という名の消滅を引き起こす―――
それはこの世界の四大精霊である風の精霊シルフといえども逃れられない絶対浄化の力だ。
ただの火属性魔術と大きく違うところがこの浄化という効果であった。
「―――この焔に触れれば、それだけで魂まで浄化の焔に包まれて完全に消滅する」
一切会話しないシルフに八雲は淡々と、この焔の効果を説く。
その間もシルフは取り囲まれた蒼白い焔の檻の中で飛び回る小鳥のように襲い来る炎の渦を回避し続けていた。
だが―――
その回避行動も遂に炎に捕まって全身を蒼白い焔に包み込まれていく。
「―――ッ!?!?!?!?」
混乱したシルフは暴れまわり、八雲の周囲を飛び回っては魂が焼かれる苦しみに悶えていく。
そしてシルフの動きがほぼ止まり掛けたところに―――
「―――なにっ!?なっ!?これは―――」
―――突然八雲達のいる空間に白い光が真横から襲い掛かって来た
「―――『龍崩壊撃砲』だとっ!!!」
八雲の蒼白い焔の竜巻に横から一直線の白い光線が巨大な穴を穿つと、
「今度はなんだ!?」
その穴から大瀑布のような水が浸入して一直線に蒼白い焔に包まれた風の妖精シルフへ直撃したかと思うと、その全身を包んでいた焔を消火していく。
「おい……これは一体どういうつもりだ?」
水を噴き出した穴の方を睨みつけながら、八雲は目の前に現れた存在に問い掛ける。
「―――答えろ。水の精霊」
そこに姿を現したのは『龍崩壊撃砲』を放ったノワールと―――
【久しいな……黒神龍の御子……】
―――ノワールに並んで空中に浮遊する仮面をつけずに素顔で佇む『水の精霊オンディーヌ』だった。
「ああ。だがまだ俺の質問に答えていないぞ?オンディーヌ」
まだ鋭い目つきを解かない八雲に向かって青い光の筋が急接近してくる。
「―――私が本体を呼んだのよ!!」
そう叫んだのは水の妖精リヴァーだった。
「お前が?どうしてオンディーヌを?」
リヴァーの一言で鋭い目つきを解いて、目の前のリヴァーに問い掛ける八雲。
「―――それは我から説明してやろう」
そう言って八雲に向かい合うのはノワールだ。
「一言で言えば風の精霊を消し去られては困るからだ」
「困る?誰が?」
「この世界で生きるすべての生物達だ」
「―――えっ!?」
この世界のすべての生命と言われて殺気だってシルフを相手にしていた八雲の血の気が引いていく。
「シルフはこの世界の大気を司る四大精霊だ。オンディーヌもそうだが、この世界にはなくてはならないものなのだ」
風の精霊は大気を司る、いわば生命の手綱を握る重要な役割を持った精霊である。
その精霊を消滅されてはこの世界の大気が統制されずに完全に霧散して、それが生命終了の時となるのは明白だ。
「だけど、このまま、また暴れ出されたら……」
そう言ってシルフに目をやる八雲だったが、
【我がシルフと話しをつける。そのためにこの場に来たのだからな……】
その八雲にオンディーヌが静かに告げるのだった―――




