デス・ワーム討伐
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―――月明りも乏しい暗闇が広がる夜の森の中を疾走する七野
着物のような形状の黒い服を纏い、はち切れんばかりに飛び出す胸元には鎖帷子を纏い、手足には手甲、具足を装着して首には白い襟巻をなびかせ、そのしなやかな美しい脚には網タイツを履いている美女―――
長い黒髪をツインテールに纏めた七野が、漆黒の瞳を鋭く細めて暗闇の中を睨みつける。
「やはり考えすぎだったかしら……」
八雲に進言した通り、元自分が所属していたアンゴロ大陸の『幕府』子飼いのくノ一軍団である華組十勇士のひとりに蟲使いがいたことから、今回のデス・ワームの暴走に絡んでいるのではないかと疑った七野だったが杞憂だったのかという考えが過ぎる。
「もう少し探索してから主様の元に戻るとしますか」
そうして再び『身体加速』で風の様に森の闇の中へと溶け込んでいく七野だった―――
―――迫りくるデス・ワームの群れに突き進む八雲達
「それじゃあ、いくぞっ!!!
―――九頭竜昂明流・八雲式剣術―――『千本刀』!!!」
突進する足をデス・ワームの群れに激突する前で止めて、両手に持った二刀を逆手に持ってそのまま大地に突き刺すと―――そこから大地が盛り上がり、デス・ワームの群れに向かって盛り上がりながら地走ると、先頭にいたデス・ワームの元で横一線に地面から刀の様な形状をした千本の刃が天に向かって突き出る。
数百体の群れの先頭にいたデス・ワームが突き出した刃に串刺しにされたことで、動きが止められた群れは後ろから激突して次々に強制停止され、大混雑の状況に陥ってしまう。
「一番槍を獲られたな!!―――だがっ!我も負けてはいないぞっ!!!走れっ!!因陀羅!!!」
長さ三尺はある黒大太刀=因陀羅を抜刀したノワールがその刃に龍気を流し込むと、先頭近くで八雲の千本刀に串刺しにされて動けないデス・ワームの胴体を横薙ぎに斬撃を繰り出す―――
―――『龍気』の軌跡を残しながら刃走りを起こす因陀羅は、音もなく醜いデス・ワームの図太い胴体に吸い込まれると、その刃が届いてもいないところまで『龍気』の覇気が届いて鋭利な切り口を生み出していく。
ノワールが因陀羅を振り抜くと、次の瞬間には数体のデス・ワームが胴から横一文字に切断されてドス黒い体液を噴き出しながら絶命していった―――
「フフッ♪ 今日もいい斬れ味だぞ、因陀羅」
手にした因陀羅を翳しながら愛情深く愛でるノワールを見て、
「ノワールは絶好調みたいだな。あのふたりは―――」
次に振り返って連れて来たラーンとグラハムドに視線を向けた。
その視線の先に見えるグラハムドが大地に赤黒い光を放つ魔法陣を展開すると―――
「出でよ―――魔槍ベイオグラス!!」
―――グラハムドの呼び掛けに答えるように魔法陣が一段と光り輝いたかと思うと、その中心から槍の柄が浮かび上がってくる。
その柄には黒い瘴気のようなものが纏わりつき、その柄を握ったグラハムドが一気にその槍を魔法陣から引き抜く―――
―――槍の穂先は長く太い刃の先端に禍々しい波打った刃が相対して突き出た戦斧とも見える槍だった。
その槍をブンブン!と旋回させて、デス・ワームの群れに穂先を向けるグラハムド―――
「―――お前!?そんな強力そうな武器持ってたのかよ!?」
―――突然現れたグラハムドの武器に知らなかった八雲は驚きの声を上げた。
「これは我の血統であるアンドロマリウス家の秘宝で魔界の名工が鍛えた魔槍です」
穂先から石突に向かって全体的に黒い瘴気を纏うその槍はグラハムドの言う通り、『魔槍』と冠するに相応しい姿をしていた。
「魔神が魔槍を出すというのなら―――」
グラハムドの武装を見たラーンが、頭上に右手を差し伸べると―――
―――今度は夜の暗闇広がる大空に光り輝く魔法陣が出現した。
「来なさい……聖槍……ロンギレスト」
ラーンがそう唱えると次の瞬間その光を増した空の魔法陣の中央から、純白の光り輝く槍の柄が降りて来た―――
「今度はラーンさん!?」
―――グラハムドに続いて強力そうな武装を召喚するラーンに八雲は驚愕する。
「オオッ!!まさか時空を超えたこのような場所で神の生み出したる聖槍を目にすることになるとは……」
八雲と同じくラーンの召喚した槍を見て、感嘆の声を漏らすグラハムド―――
光を帯びた純白の柄をした槍は、その穂先に一本の穂先を冠し、その刃の側面には神紋が刻まれて並んでいた。
舞い降りた聖槍の柄を握りしめたラーンは、ブン!と一振り振り払うとその軌道に沿って光の軌跡が走り抜けた。
「お前もヤル気のようだなぁ?―――ラーン」
「貴方こそ……そんな槍まで持ち出してきて、サッサと攻め込みたいという気が見え見えですよ?―――グラハムド」
互いに名前を呼び合い体勢を整え終わったふたりは―――
「いくぞォオオ―――ッ!!!」
「参ります!」
―――手にした武器を巨大な魔物に向けて突撃していく。
その様子を見た八雲は苦笑いを浮かべて見送る。
そして八雲の隣では、
「おのれぇ!!―――我も因陀羅を取り出す時の演出を考えようと思うのだが、どう思う八雲?」
「ハハハ……それは帰ってから考えようか……」
ノワールがふたりの武器の召喚を見て、因陀羅の召喚演出について相談を持ち掛けてきて、八雲は更に苦笑いが増すのだった―――
―――数百匹のデス・ワームは人の軍勢にすれば数万の軍と遜色のない大群である
エルフの森に群生する長い時を過ごして育ってきたこの異世界特有の大木達と並んでも余りある大きさのデス・ワーム達が、その太くて長い巨体を蠢かせて闇夜の森で周囲の大木を薙ぎ倒しながら逃げ惑っていた―――
「ハハハッ!!!―――魔槍の餌食になるがいいわっ!!この虫ケラがァアアッ!!!」
「冥府に迷わず堕ちなさい……」
喜々として魔槍でデス・ワームを斬り殺していくグラハムド―――
―――神聖な光を放つ聖槍でデス・ワームを葬っていくラーン。
黒い瘴気が赤黒いオーラとなってデス・ワームの血を啜るように輝きを増すグラハムドの振るう魔槍ベイオグラスは、まるで大砲を撃ち出すかの様にオーラの塊を発射してデス・ワームを粉砕する様子まで披露する―――
―――ラーンの手にした聖槍ロンギレストは、切り裂く動作から振り被って槍投げの動作で飛翔させると、まるで意志を持っているかのように縦横無尽に飛び交い、デス・ワームの太い胴体を貫通して滅していく。
巨大な魔物など物の数ではないことを体現しているふたりの討伐振りに八雲とノワールも負けてはいられないと、次々にデス・ワームを討伐していった。
「フン!―――おい八雲!あのふたり、思った以上に食わせ者だぞっ!!」
デス・ワームを斬り裂きながらノワールが八雲に告げる。
「確かになっ!あんな武器を持ってるなんて知らなかったからな!」
八雲も夜叉と羅刹で太いデス・ワームを輪切りに切り刻みながらノワールに答える。
「イェンリンではないが―――あのふたりに早く『龍紋』を与えておいた方がいいかも知れんぞ?」
ヴァーミリオンを出る前にイェンリンに言われたことを思い返す八雲。
「俺は本人の気持ちを尊重したい。その考えはノワールに出会った時から変わらないしこれからも変えない。例えそれが魔神と天使が相手でもだ」
八雲は当初からの基本的な考えを変えるつもりはないと言い切った。
例外があるとすれば、八雲が絶対に手に入れたいと思った女を全力で堕としにいくことがあるが、それも八雲は責任を取る覚悟を持って向き合っている。
「お前のことだからそう言うだろうと思った!好きにするがいい!何かあれば我が全力でお前を護ってやる!」
笑いながらそう宣言したノワールに八雲も笑みを返す。
たった四人の超越した存在は数百匹のデス・ワームを道端の草木を薙ぎ倒すように次々と刈り取り、間もなく戦闘が終了することは誰の目にも明らかだった―――
―――七野がその戦場に辿り着いた時、
咽返るような生臭い臭気が漂うその地にはデス・ワームから噴き出した大量の体液と、切り刻まれた太く巨大な肉塊が彼方此方に転がっている凄惨な状況だった―――
「これは……流石は主様。この程度の魔物では相手にもなりませんでしたか」
最早呼吸するデス・ワームは残り少なく、八雲とノワールは満足したのか残りをラーンとグラハムドに譲り、今はふたりの奮闘を眺めていた。
そのふたりに近づこうとデス・ワームの肉塊の中を歩み寄っていた時―――
「ムッ!?―――あれはっ!!」
―――その肉塊の山の中で目聡く心当たりのある物を見つける七野。
近づいて来ていたのに突然しゃがみ込んだ七野の様子に気がついた八雲は、ノワールと共に七野に近づく。
「どうした七野?何か見つけたのか?」
八雲がそう問い掛けると、ゆっくりと立ち上がり、振り返った七野の手にはキラキラとまるで綿菓子のような細い糸が光を放っていた。
「随分と細い糸だな?目を凝らさないと見えないくらいの。デス・ワームのドロップアイテムか?」
黙っている七野に続けて問い掛ける八雲に、息を整えた七野が答える。
「……主様……これは鬼倭番のひとり、華組十勇士のニ番……二色の『封魔』鬼蜘蛛が操る糸でございます」
「鬼倭番の二色だと?……ということは七野が言った通り……」
七野の無表情な顔を見つめながら八雲が呟くと、
「はい。このデス・ワームの暴走は『幕府』の鬼倭番が絡んでのこと、と見て間違いございません」
ハッキリとそう言い切る七野に八雲は更に問い掛ける。
「だけど一体どんな意味があるんだ?レオパールを狙う理由があるのか?」
その問いに七野は首を横に振って答える。
「分かりません……ですが、レオパールを狙ったのではなく誰かを狙ってのこと、ということも考えられます。私もそうですが、要人の暗殺はよくある任務でしたから」
眉を八の字に歪めて辛そうな顔で答える七野。
「エルドナやエヴリンを狙ってのことだと?まさかエディスとか!?」
そう言って動揺する八雲に七野は申し訳なさそうな顔で答える。
「あの……この場合は、どう考えても主様の命を狙ったものかと……」
その言葉に八雲は硬直し、ノワールは後ろでやれやれといった顔で「はぁ……」と溜め息を吐いた。
「えっ!?―――俺!?」
自分のことを要人だと自覚していなかった八雲に、ノワール同様に七野も溜め息を吐くのだった―――




