招かれざる客
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―――『龍紋』のステータス向上で能力が向上しているエディスの身体は大した怪我はしていないのだが、巨大な魔物との近接戦闘は未経験であり、しかもデス・ワームという砂漠地帯でしか遭遇しないような魔物との戦闘経験などありはしない。
そんな無防備な状態で倒れ込んだエディスにデス・ワームが開いた巨大な口が上から襲い掛かる―――
(―――八雲さん!!!)
―――直上から巨大な口を開いて落下してくるデス・ワームを見上げた瞬間、エディスは愛する者が脳裏を過ぎる。
そして―――
―――ドゴォオオオン!という激しい轟音と土煙。
エディスの倒れていた一帯ごとデス・ワームは頭を地面にめり込ませて飲み込んだのだった―――
―――その様子を映し出したガラス板を見て、
「パクんちょ!?」
「あわわ……」
「エディスおねぇちゃ!たべりゃれちゃった!?」
「しょんな……おねえしゃん……」
サピエンツィア議事堂の迎賓室でモニターとなっていたガラス板を見つめていた子供達は、エディスがデス・ワームに一息で飲み込まれた場面を目撃して顔を強張らせる。
「―――エディス!?そんなっ!!!」
「なんてこと……」
一緒にその場面を見ていた母親であるエヴリンとエルドナは青ざめた顔でガラス板の映像を見つめていた。
だが、八雲とノワールはその状況でも冷静な表情をしたままだ。
何故なら、もう一枚のガラス板にも、同じデス・ワームが映っていたからだった―――
―――暗闇の森の中
エディスを飲み込んだデス・ワームがゆっくりと地面にめり込んだ頭を持ち上げようとしたところで―――
「―――フゥウウンッ!!!」
デス・ワームの横面を凄まじい衝撃が襲う―――
【―――GYUFUOOOO!?】
―――側面から衝撃を受けたデス・ワームは頭がブルン!と振り子のように揺さぶられて、今その口に入れたばかりのエディスを吐き出す。
「キャァアアア―――ッ!?」
放物線を描くように吐き出されたエディスは、草むらの上に落下した。
「大丈夫か?―――エディス」
落下したエディスの元に近寄る人物は―――サジテールだった。
「ケホッ!ケホッ!サ、サジテール?あ、貴方が、助けて……」
落下の衝撃で息が詰まるエディスだったが、サジテールの顔を見て絶望から一気に安心感が広がり、思わず笑顔が零れる。
「危なかった。見たところ大きな怪我はなさそうだな。では俺はあのミミズの化物を倒すとしよう」
エディスの状態をサッと確認したサジテールは、手にした黒弓=暗影を構えながら先ほどの衝撃で混乱するデス・ワームに向き合う。
「ケホッ!ま、待って、サジテール。わ、私もやります!!」
よろめきつつも立ち上がって体勢を整えるエディスを見て、
「大丈夫なのか?無理はするな」
そう告げるサジテールだったが、しかしエディスの瞳には闘志の炎が燃えていた。
「狩りの獲物を横取りしたものは、絶対に許すな……そう教えてくれたのは貴方ですよ、サジテール」
幼い日に狩りを教えてくれたサジテールが常日頃唱えていた言葉、人の獲物を盗む行為を決してしてはならない、許してはならないというエルフに伝わる風習を唱えるエディスを見て、
「……そうだったな。俺は頭をやる!エディスは胴体と尻尾に警戒しながら援護してくれ!」
「はい!分かりました!!」
サジテールの共闘の誘いに賛同するエディス。
元から打ち合わせでもしていたかのようにお互いの攻めるべきポジションへと駆けて行く。
そして《空中浮揚》で空中に飛び上がったサジテールは、手にした暗影に矢を番えて弦を引き絞る―――
「エディスが世話になった礼だ……遠慮せずに喰らえっ!!!」
―――放たれた矢には黒い炎である地獄の業火や付与されて、弾丸のように飛翔した矢がデス・ワームの頭部に命中すると途端に黒炎を舞い上がらせる。
「私だって―――えいっ!!!」
大地を駆けるエディスも手に握った黒弓=夜風から火属性魔術を付与した矢を何本も胴体に撃ち出していく―――
【FUSYUGYOOOOO―――ッ!!!】
―――叫び声を上げるデス・ワームの全身は見る間に炎に塗れて周囲には焼けて焦げ付いたような不快な臭いが充満する。
ふたりの攻撃は次々に命中して、巨大なデス・ワームの命運も終わりを迎えることが見えていた―――
―――その時、サピエンツィア議事堂の迎賓室では、
「……よかった。エディス、無事で/////」
突然のデス・ワームの出現に娘の非業の最後を見せられたと嘆いていたエヴリンの瞳にも涙が浮かび、同じくエルドナの瞳にも涙が光っていた。
しかし―――
「喜んでいるところ悪いけど、それどころじゃないみたいだぞ……」
「えっ?どういうこと?」
水を差すような八雲の言葉にエヴリン達が疑問の声を上げると、八雲はスッと三枚目のガラス板を指差す。
飛ばした偵察機は三基―――
―――まず一機はエディスに、
―――二機目はサジテールに、
そして、三機目はフィールドとなる森全体を映すように高度を取った映像を送らせていた―――
その三機目の偵察機が捉えた映像には、このレオパールではあり得ないものが映っている。
「……あれは!?まさか―――デス・ワームの群れだというの!?」
驚いたエヴリンの大声が迎賓室内に響き渡ると、同室でガラス板の映像を見ていたエルフの重鎮達もどよめき始める。
ガラス板には数百匹はいるであろう巨大なデス・ワームが木々を薙ぎ倒しながら首都ウィズドムの方向に向かって来る様子が映し出されていた。
だが、そこで声を上げたのは指導者であるエルドナだった。
「―――静まりなさい!!今すぐ軍に伝えて東の森に出陣の命令を出して!接近するデス・ワームの群れを一匹たりとも首都に入れては駄目よ!!!」
すぐに近衛兵に伝令を言伝するエルドナと、その命を受けて走り出す近衛兵を見送ると八雲は『収納』から黒刀=夜叉と黒小太刀=羅刹を取り出して腰のベルトに佩びていた。
「八雲様」
八雲が出るのだと察したエルドナは名前を呼ぶ。
「ちょっとあれを片付けてくるよ」
そこまで散歩してくるみたなノリで答える八雲の肩にノワールが手をポンと置いた。
「なんだ?水くさいではないか。我も参加するぞ♪」
既にノワールの肩には黒大太刀=因陀羅が置かれていた。
「それなら暴れ足りてないだろうから―――ラーン!グラハムド!ふたりもついて来い!デス・ワームが相手なら好きなだけやってもいいぞ」
「―――お供させて頂きます。我が主」
「―――ようやく我の力が役に立つ時がきた!!」
八雲の命令に生気を漲らせるラーンとグラハムドを見て、
(コイツ等、相当溜まってたみたいだな……偶にこうやってガス抜きしてやらないと、いつかまた変なことをやるかも知れない……)
八雲はガラス板に映るデス・ワームにまったく臆することなく、やる気を漲らせるラーンとグラハムドにそう感じていた。
「アリエス、葵、白金、七野は万一に備えて首都の防衛に回ってくれ。取り逃がすつもりはないけど何が起こるか分からないからな」
「畏まりました、八雲様」
「フフフッ♪ 荒事は主様にお任せすると致しまする」
「ご武運を」
「八雲様……私は少し周囲を偵察に出ても宜しいでしょうか?」
「どうした?七野、何か気になることでも?」
七野が偵察に出たいと言い出したことに引っ掛かった八雲が問い掛ける。
「いえ……思い過ごしであればよいのですが……『幕府』の鬼倭番・華組十勇士のひとりに蟲使いがおります」
「アンゴロ大陸のくノ一か?でもアイツ等はアンゴロ大陸に戻ったんじゃないのか?」
「そのはずですが、私達は主の命とあれば世界中の何処にでも参ります。再びこのフロンテ大陸に来ていてもおかしくはありません」
「マジか……また厄介なことにならなきゃいいけど……兎に角、七野はその件を調べておいてくれ。だけどくれぐれも無茶はするなよ!何かあったら『伝心』で俺を呼べ」
「承知しました!では―――」
そう返事をして、七野の姿は一瞬で掻き消えてしまった。
「それじゃあ、ミミズ狩りに行くとしますか!」
八雲の掛け声にのノワール、ラーン、グラハムドがニヤリとした笑みを浮かべて頷いたのだった―――
―――八雲達がデス・ワームの群れに向かって出陣した頃、
「これで―――終わりだ!」
暗影から連続発射した矢で頭部を貫いていくサジテールの攻撃に、デス・ワームが上半身を大地にドスン!と横倒れに倒し、遂に絶命した。
「……やった」
地上でサジテールの援護に回っていたエディスも、エルフの森にある太い幹をした大木のようなデス・ワームを倒したことに喜びと高揚感が湧き上がっていた。
しかしその喜びを噛みしめる間もないうちに―――
【―――エディス!サジテール!大変な事態になったわ!】
―――エヴリンの『伝心』が脳裏に響いてきた。
【母さん!?どうしたの?デス・ワームなら―――】
【―――そのデス・ワームが群れを成してウィズドムの東の森から向かって来ているの!】
「な、なんですって!?」
母からの急報にエディスは声を上げて驚いてしまう。
【八雲様とノワール達が対処に出てくれたわ。エディス、貴方は戻って来なさい】
【でも―――】
自分も八雲を護りたいという想いの強いエディスは戦闘地域に向かうと告げようとしたが、
「エディス、エヴリンの言う通り、お前はウィズドムに戻って万一のために首都を護ってくれ。帰る場所を護るのも大切だということはお前が誰よりも分かっていることだろう?」
「サジテール……」
サジテールの諭すように告げる優しい声に幼い日に指導してくれた頃のサジテールを思い出すエディス。
そのことで冷静さを取り戻したエディスは、コクリと頷く。
「皆で絶対に帰ってきてくださいね!!」
サジテールに強く告げると、踵を返してウィズドムへと向かって走り出していた。
その背中を見送るサジテールは―――
「無論、そのつもりだ!」
―――笑顔でその背中に答えると、《空中浮揚》で夜の空に飛び立っていくのだった―――
―――デス・ワームの群れを見下ろせる丘の上まで来た八雲達
《空中浮揚》で飛び立ち、デス・ワームの群れに接敵する位置まで移動してきた八雲達は、闇夜の中で木々を薙ぎ倒して進んで来るデス・ワームの群れを睨む。
「……随分と乱暴な客だなぁ」
闇の中で木々を薙ぎ倒して土煙を上げるデス・ワームの群れに八雲が皮肉めいた言葉を告げる。
「礼儀を知らんヤツを呼んだ覚えはない。それで、どうやって殺る気だ?」
招かれざる客に対してどう料理するのか問い掛けるノワール。
「あっ!!だがあの天からの一撃で全部吹き飛ばすのはなしだぞ!!あれをされたら我が狩る分が残らん!!!」
そこで続けて八雲に『魔術反射衛星』による超威力広域攻撃の使用を禁止した。
「分かってるよ。あれを撃ったらラーンやグラハムドからも不満が出そうだからな。ラーン!グラハムド!存分にやってもいいけど森を全部吹き飛ばしたり首都まで届いたりするような力は使うなよ!」
「―――承知しました」
「―――約束しよう」
ふたりに念押しも終わり、八雲はニヤリと不敵な笑みを浮かべると―――
「それじゃあ皆―――狩りの時間だ」
―――そう告げて一歩前に足を踏み出した。
そして、漆黒の闇に溶け込むような黒い衣装の集団はデス・ワームの群れへと突撃していくのだった―――




