リオン議会領での会談
pixivにて新規キャライメージ画像更新中!
※AI生成画像
https://www.pixiv.net/users/15342558
※モチベーションに繋がります!※
いいね・ブックマーク・評価☆☆☆☆☆採点いただけますと励みになります。よろしくお願いします。
―――シュヴァルツ皇国の四カ国には、これまで八雲の手により天翔船発着用の空港が各城や議会堂の傍に建設されている。
リオン議会領の首都レオーネのアサド評議会議事堂にも、その上空に空港エリアが建設されていた―――
八雲がヴァーミリオン皇国のバビロン空中学園がある浮遊島に設置されていた魔術昇降機を『創造』で創り出して、評議会議事堂から直通の昇降機を設置してあり、その馬車がそのまま載せられるほどの大型昇降機にジョヴァンニを始めカタリーナとリオン評議会議員達が大勢で黒帝の出迎えに向かっていた。
「お父様。八雲様からお話のあった黒神龍特区に建てる学園の教師の件ですが……」
昇降機で上空の空港に昇りながらカタリーナがジョヴァンニに問い掛ける。
「うむ。その件についてはお前の通う聖ミニオン女学院の校長と話しをつけてある。学院の紹介で経済に精通した先生を派遣して下さると約束してもらっているよ」
「そうですか。ですが……ブリアント先生は……」
「ブリアント教授は流石にお歳で動けないと断られたよ。あの御方ならばきっと優秀な生徒が育つことだと思うのだがね……」
珍しく力なく答えるジョヴァンニにカタリーナも、期待していた教師はティーグル行きを了承してくれなかったことに残念な表情を浮かべる。
そんな間に昇降機は空中の空港エリアへと到着するのだった―――
―――この空港を利用するのは八雲の建造した天翔船しか利用しない。
実質は八雲専用の空港となるのだが、天翔船が横付け出来るように伸びたタラップに正確に接舷するディオネの腕前は文字通り天翔船を手足のように操る。
到着した漆黒の艦体に黄金の魔術紋様を施した巨大な船が接舷すると、船内の艦橋でその様子を見ていた子供達はキャッキャとはしゃいで、ラーンとグラハムドはディオネの操舵に感心していた。
「あの自動人形、凄い腕だな」
「グラハムド―――アウトォオオッ!!!」
八雲がそう叫ぶと同時にグラハムドの下着をつけていない服の下では、そこに装着された黒いリングのピアスが遠慮なしに振動を始めた―――
「んなァアッ!?あっ!んんっ!!―――な、何故ぇ/////」
「ディオネは自動人形だが、ちゃんとディオネという名前を持っている。俺の妻でもあるディオネをそこら辺の自動人形と一緒にするな」
「マスター/////」
ディオネを人形扱いされたことが八雲の一線を越えて、快感の刑を受けるグラハムド。
「ハァハァ……しょ、承知しました/////」
今回は軽い警告くらいの短い振動で許されたが、グラハムドの緊張感は跳ね上がった。
その様子を見ていたラーンは、天空基地でディオネ達と接する期間と八雲の彼女達に対する扱いをグラハムドよりは長く見ていた経緯があったので彼女達を見下したようなことは口にしない。
この八雲の傍にいた期間の長さで言えば、最近に従属したグラハムドは不利な状況だった。
「これからリオン議会領の人達と会合がある。その際にも今みたいなことがあれば遠慮なくリモコンスイッチを押すから、くれぐれも注意しておけよ?」
「りもこん?すいっち?と言うのは、何ですか?」
ようやく息が整ったグラハムドが問い掛ける。
「お前達のアソコにつけたリングを動かしたい時に作動させる装置だ」
「そ、そんなものが!?気づかなかった……」
(いやリモコンなんかある訳ないだろ。俺の意志で操作出来るのに……今度遊びで作ってみようかな……)
そんなくだらないことを真顔で考えながら、八雲達はタラップを渡って空港エリアへと向かうのだった―――
―――空港エリアで八雲達を出迎えるジョヴァンニ達を見つける。
「ようこそお越し下さいました!黒帝陛下、黒神龍様」
仰々しい挨拶を述べるジョヴァンニに八雲も笑顔で、
「お久しぶりです。ジョヴァンニ評議長。今日は有意義な話をしたいと思っています」
ジョヴァンニに挨拶を返した。
「陛下の御考えはトレーラー馬車を始め、このオーヴェストの発展に繋がるものばかりです。この度の学園のこともリオンの評議会は全面的に何でもご協力致しましょう」
「ハハッ!それは心強い!まあ、詳しい話は空港の会議室で行いましょう」
「承知致しました」
この空港エリアは空中高く建造されていることもあり、防犯対策はしっかりしている。
外壁も黒神龍の鱗を表面に使用しているため、下手な魔術攻撃を受けてもビクともしない構造になっていた。
その上で侵入出来るのは魔術昇降機だけだが、この昇降機も各国の首脳陣に渡した始動キーを差し込まなければ起動しない構造に八雲は『創造』していた。
そんな空港エリアで行われる首脳会談は、この異世界でもトップクラスの警備体制の中で行える会談だと言える。
八雲が先頭に立って会議用に用意してある広間に向かいながら、
「カタリーナもいつもありがとな!今回も色々無理なお願いをした自覚はあるよ」
ジョヴァンニの隣を歩くカタリーナに声を掛けた。
「いいえ♪ 八雲様とノワール様のなさりたいことは、お話を聴けば聴くほどこれからの世界に必要なことだとわたくしも賛同しております。ですから、どうぞわたくしには我が儘を言って下さいませ」
「カタリーナ……ありがとう」
カタリーナは以前よりも益々重責を背負っていく八雲の様子を、遠く離れたリオンにいながら感じ取っていた。
事実、八雲の名前とその力、それに数々の偉業はこのオーヴェストのみならず北部ノルドにも広まり、直接の関わりが少ない南部スッドや東部エストにも徐々に広まっている。
実際に四大神龍の御子が存命で、しかも一所にこれほど長い間集うことがこれまでの大陸の歴史を顧みてもなかった状況なのだ。
これまでに経験してきたことと皇帝という肩書きの元で八雲の心が固くなってきていると感じていたカタリーナは、無力な自分でも話しを聴くことで八雲に心を開いて欲しいと、彼女がそう言っていることを誰よりも八雲自身が感じ取っていた。
首脳会談には八雲とノワール、ラーンとグラハムドが向かうことになり、アリエス達は子供達を連れて先に下に降りて街を見て回ることになった。
子供達を連れて昇降機に乗り、首都レオーネに下りていくアリエス達を見送り、八雲は首脳会談に向かって行く―――
「―――ところで黒帝陛下、其方にいらっしゃるご婦人方は?」
ジョヴァンニが八雲に問い掛けたのは初めて見るラーンとグラハムドについてだ。
「ええ、最近新しく秘書官を雇ったんですよ♪ 堕天使のラーンに魔神グラハムドです」
「―――堕天使!?魔神ですって!?」
紹介に驚きを隠せないのはジョヴァンニだけではない。
議会の議員達も一斉にどよめくが、
「ハハハッ!陛下もお人が悪い。冗談をおっしゃるとは!!」
何かを察したジョヴァンニが慌てることなく八雲の冗談だと言い放ち、周囲を落ち着かせる。
「ははっ、すみません」
相変わらずやり手のジョヴァンニによる対応に八雲は感心しながら、この話は冗談として流したのだった―――
―――会談は終始穏やかに、そして円滑に進んでいった。
今回の来訪は学園の話しばかりではない。
―――トレーラー馬車運行についての意見交換
―――先のインディゴ公国とシニストラ帝国の国際問題
―――そのインディゴとのトレーラー馬車開通に伴う流通について
―――そして黒神龍特区に創設するシュヴァルツ皇国立『黒神龍学園』について
―――その運営にはトレーラー馬車の収益を充てて、学生からの学費は徴収しない件までを話し合った。
それぞれの問題点などを話し合い解決策を考え、ひとつひとつを片付けていき、学園についてもカタリーナの通っている聖ミニオン女学院から優秀な教師を派遣してもらえることになって経済学部の陣容は固まった手応えを八雲は感じていた。
滞りなく終えた首脳会談の後で、今日は八雲達も評議会議事堂の来賓のための客室に泊まる予定になっている。
時刻は既に陽が傾いて沈む準備をし始めた頃、街を散策していたアリエス達も戻ってきて皆でリオンが用意した晩餐会の食事を頂くと、就寝するために皆が部屋に入っていく。
八雲も専用の客室に案内されて休もうと考えていたところで、
「―――八雲様」
後ろから声を掛けられて振り返ると、そこにはカタリーナが立っていた。
「今から少しお話させて頂いても宜しいでしょうか?」
いつになく神妙な面持ちのカタリーナに八雲も何かを感じ取り、
「勿論!カタリーナとだったら一晩中でも語り明かせるよ」
と笑顔で答える。
「もうっ!それはわたくしが我慢出来なくなってしまいますわ/////」
そう言って八雲の胸に飛び込むカタリーナを八雲は優しく抱きしめた。
「それじゃあ、まずは話しを聴こうか」
そう言ってカタリーナの額にキスをすると、嬉しそうに笑顔を浮かべたカタリーナが小さく、
「……はい♪/////」
と答えて、ふたりで八雲の客室に向かった―――
―――客室のソファーに向かい合って座る八雲とカタリーナ
座る前にお茶の用意をして八雲と自分の分を用意してくれたカタリーナの気づかいを受けながら、八雲は出された紅茶に口をつけてから本題に入る。
「それで?何か大事な話があるのか?まさか!?―――ソフィーが結婚するとか!?」
「まったく違います!それにソフィー姉さんは―――ッ!」
そこまで言い掛けてカタリーナは口を噤んだ。
「うん?ソフィーがどうしたって?」
「い、いえ!何でもありませんわ!そ、それよりもわたくしが話したいことと言うのは学園に紹介する教師のことなのです」
「教師?さっきの会談では結構な人数を用意してくれるって話だったけど?」
カタリーナはそこで姿勢を整えて神妙な表情で話し出す。
「はい。聖ミニオン女学院から紹介頂ける先生方のことはわたくしも身辺についてまで調べまして、皆様優秀な先生方だとわたくしも思います」
「だったら、何が問題なんだ?」
「その方達の問題ではありません。ですが……わたくしはもうひとり、ある先生を推薦したいのです」
カタリーナの話を八雲はすぐに察した。
「こうしてこの場で話すってことは、断られたんだな?」
八雲の察しの良さにカタリーナは小さな溜め息を吐く。
「はい……ご自身は歳を取ったからシュヴァルツまで行っても役に立たないと……」
「ふむ……その先生はどんな方なのか教えてくれないか?」
八雲はカタリーナがそこまで推薦する人物について気になりだした。
「はい。その先生の名前はジョーンズ=ブリアント教授と申します―――」
そこからカタリーナはジョーンズ=ブリアントなる人物について語り出すのだった―――




