友を想いて
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―――八雲との謁見を終えて屋敷に戻ったゲオルクは、
「なにが宜しくだァアアッ!!!あの平民めぇええ!!!」
自室に戻るなり、目に入った物を彼方此方に投げつけて破壊していく―――
一通り部屋を無茶苦茶にしたところで、
「ハァハァ……おのれぇ……しかしこのままでは私もヤツの学園に通わされる。体調不良を理由にしようと思ったが……」
玉座の間で体調不良を理由に辞退を試みたゲオルクだったが、その場で八雲に強力な『回復』の加護を発動された。
「これで健康そのものだな!俺の『回復』は五体バラバラになっても……生きていれば治せるからな♪」
と、笑顔で告げられて身の危険を感じてしまったのだ。
「あの男なら、あの場で本当に俺を五体バラバラにしてもおかしくない……クソッ!!―――化物め!!!」
椅子に座りながら頭を抱えて、これからの運命を呪うゲオルクだった―――
―――アークイラ城で王族や貴族達に説明を終えた八雲は、
いつものようにヴァレリアとシャルロットを実家に戻して家族との時間を過ごしてもらい、自身はノワールと共にキャンピング馬車で黒龍城に戻る―――
その途中の道で、
「―――ノワール、ちょっと寄り道してもいいか?」
八雲はキャンピング馬車で共に寛ぐノワールに問い掛ける。
「うん?我は別に構わぬが、何処に行くつもりだ?」
ノワールは了承しつつ、何処に向かうのか問い掛ける。
「ああ、レベッカの孤児院だよ」
「レベッカのところか。いいだろう、付き合うぞ」
ノワールの返事を聴いて八雲はキャンピング馬車を引くゴーレム馬の黒麒麟に新たな目的地を《情報入力》で付与する。
そうして馬車は教会と並ぶ孤児院へと向かい駆けていった。
暫く走って到着した馬車が孤児院の前に停車すると中から八雲とノワールが下車して、丁度そこで孤児院の用事を手伝っていた様子のカイ=カーマインと遭遇した。
「―――八雲様!?黒神龍様も!!ようこそ、お越しくださいました。でも突然どうなさったのですか?」
突然止まった巨大な黒い馬車にも驚いたが、そこから下りて来た八雲とノワールを見て更に驚くカイに八雲が笑顔で答える。
「こんにちは、カイ。ええっと、今日はレベッカとルドルフに用事があったんだけど、ふたりともいる?」
「レベッカさんはいらっしゃいます。でも、ルドルフさんはユウリと一緒に簡単なクエストに出られました」
「そうか、タイミングが悪かったな……」
「あ、でもルドルフさん達が受けたクエストは日帰りで済むようなクエストですから、もう少ししたら戻って来られると思います」
落胆した様子の八雲を見て、カイはフォローするようにルドルフの戻る時期を告げる。
「そうなのか?だったら先にレベッカと話しさせてもらおうかな」
カイにそう告げると同時に孤児院の扉がゆっくりと開き、中から美しいエルフ―――レベッカが現れた。
「八雲……お帰りなさい」
「レベッカ!急にお邪魔して悪かった。実はレベッカとルドルフに話があって来たんだ」
「私とルドルフに?……そう、でもルドルフは、まだもう少し時間が掛かると思うから……先にお話を伺っても?」
「うん。レベッカに先に話しておくよ」
「そう、それじゃあ中にどうぞ。カイ、お茶の用意をしてくれる?」
カイにお茶の用意を頼むとレベッカは八雲とノワールを中へと促して、応接用の部屋へと通す。
中でソファーに腰掛けた八雲は早速だがレベッカに話し始める。
「今日来たのはレベッカにお願いがあるんだ」
「お願い?そんなに改まって……どうしたの?」
レベッカは普段と違って真剣な面持ちの八雲に緊張が走る。
「実は、来年の春までにこの黒神龍特区から首都に向かう途中にノワールの学校を建てようと思っているんだ」
「まあ♪ 学校まで建てるなんて……それは、とっても凄いことね」
レベッカが笑顔で答えると、八雲は間髪入れずに―――
「―――その学園で先生をしてくれないか?」
「えっ!?……私が?」
―――その学園で教師をして欲しいとレベッカに頼む。
「ああ、勿論此処の子供達も全員学園に通えるようにする」
「子供達も全員!?―――ちょ、ちょっと待って八雲」
話しが飛躍して話について来られないレベッカを見て、ノワールが口を挟む。
「おい八雲、ちゃんと初めからレベッカに説明してやれ。今のままでは答えられんだろ」
「ああ、ゴメン!ゴメン!それじゃあ―――」
八雲が説明しようとした時に、応接室の扉が勢いよく開く―――
「―――あんなデカい馬車があるからと思ってみれば、やっぱり八雲か!黒神龍様まで御一緒で!」
―――現れたのはレベッカと同じく英雄クラスの冒険者ルドルフだった。
「お、帰ってきたのか。ユウリも久しぶり」
ルドルフの後ろに従うユウリ=ユーレシアにも挨拶する八雲に彼女はペコリと深く頭を下げて、
「―――お久しぶりです八雲様、黒神龍様。その節はお世話になりました」
丁寧に挨拶を返した。
「そうだ!丁度いい時に帰って来てくれた。これから大事な話があるから、ルドルフと一緒にユウリとカイも話を聴いてくれ」
「私達も、ですか?」
お茶の用意をし終わり、給仕していたカイと戻ったばかりのユウリが顔を見合わせる。
「なんだ?なんだ?またとんでもない話じゃないだろうな?」
「俺がそんな話をしたことがあるか?」
「自分の胸に手を当てて思い返してみろ……」
「―――あ、ゴメン!いっぱいあったわ♪」
冗談で返す八雲にルドルフは顔を顰めるのだが、八雲は構わず先ほど話そうとしていた学園について皆に説明を始める―――
―――暫くの時間、八雲が学園の概要や授業料についても全て説明し終わったところで、
「―――という訳で、レベッカとルドルフにはその学園の先生をして欲しいんだよ」
此処を訪れた理由を話した。
「レベッカは兎も角、俺に先生だとぉ~?」
ルドルフは勿論嫌だと言わんばかりに顔を顰めて答える。
「ああ、レベッカには魔術についての先生になって欲しい。それと当初考えていた学部に新しく『冒険者学部』も追加しようと考えているんだ。ルドルフにはそこで先生をしてもらいたい」
当初、八雲が考えていた学部は、
―――『経済学部』
これはリオンなど商業に通じる指導者に教壇に立ってもらう。
―――『農学部』
農業全般、地域における農業の差も合わせて農業の研究などを行う学部。
―――『騎士学部』
騎士道や作法、振る舞いなどを指導して各国の騎士団に入団を促す学部。
―――『魔術学部』
この世界特有の魔術・魔法の研究、学んでいくのと同時に魔道具の研究も行う学部。
―――『神学部』
聖法国の指導者を迎え、教会の歴史について、そして神の教えについて学ぶ学部。
―――『鉱石学部』
この世界の彼方此方にある鉱山、その鉱山から採取される鉱石の研究をする学部。
―――『建築学部』
この世界の建築技術を学び、新たな建築を目指す研究をする学部。
―――『法学部』
各国の法律について記録・研究を行い、各国の法整備に協力することも視野に入れた学部。
以上の八つの学部だったのだが、この世界の必要性を鑑みて更にもうひとつ、
―――『冒険者学部』
冒険者の基礎知識や過去の冒険者の偉業の記録、実施研修などを行いより実戦的な学部。
この学部を追加することにしたのだ。
これにはユウリとカイの存在も少なからず影響している。
「言うのは簡単だが、俺は元々レベッカに勉強を教えてもらったくらいで人に教えるような知識なんかないぞ?」
ルドルフは面倒事だと決めつけて何とか断ろうという空気が八雲には見え見えだ。
「必要なのは冒険者の資質と知識だ。現にお前は今、ユウリとカイの指導をしているんだろう?それと一緒だよ」
「いやいや!このふたりだけに教えるのと何十人も相手に教えるのだと全然違うだろっ?!」
すると八雲はユウリとカイに向き直して、
「―――ユウリ、カイ。ふたりはルドルフに冒険者のことを教えてもらっていてどうだ?」
するとユウリが、
「はい。ルドルフさんの冒険者に関する知識は流石の英雄クラスです!実際に現場でもやるべきこと、やってはいけないことを的確に教えて下さっています」
「―――そうか。カイはどうだ?」
「はい、あの、私はどちらかというとレベッカさんに魔術を指導してもらうことが多いのですが、それでも冒険者の基礎的な知識はルドルフさんから丁寧に教えてもらいました」
「だそうだけど?ルドルフ。少し真剣な話しをしてもいいか?」
急に神妙な面持ちに変わった八雲にルドルフも黙って頷く。
「俺は―――レベッカとルドルフのふたりに会えて本当によかったと思っている」
「と、突然何言いだすんだよ!?」
「いいから黙って聴けって。俺には血の繋がった家族はもういない。そんな時ノワールに出会って御子になってからふたりに出会った。色々なことに関わって、ふたりのことを知っていって、そして今回ノワールの夢だった学園を創設することになって、真っ先に思ったのはふたりのことだったんだ」
「……八雲」
レベッカが静かに八雲の名を呟く。
「このまま冒険者を続けるのもひとつの道だと思う。だけど、それには多くの危険も伴うもので、ルドルフが前に言ったように突然、何処で命を落とさないとも限らない」
その言葉に全員が静まり返る。
「俺は―――ふたりにそんな死に方はして欲しくないんだ。俺の両親は事故で死んだ。この孤児院の子供達にもそんな境遇の子供もいるだろう。そんな子供達にとってふたりは親も同然だろう?」
「それは……」
「うっ……」
レベッカもルドルフも八雲の指摘には返す言葉もない。
「子供達のためにも、これからこの国を担う子供達、若者のためにもふたりは必要だ。そういう人材を失わないためにも俺は学園を創ると決めたんだ」
「八雲……お前……」
初めて聴いた八雲の想いにノワールも感動していた。
八雲にそこまで言われてレベッカとルドルフも胸の中で何か確固たるものが固まった気持ちになる。
「ありがとう、八雲……そこまで考えてもらえて、とても嬉しい」
「ああ、そうだな。色々あったけど、そんな風に思ってくれていたっていうのは、正直嬉しいよ」
「だったら、この話―――受けてくれるか?」
再度問い掛ける八雲の言葉にレベッカもルドルフも笑顔でコクリと頷いて、その様子を見ていたノワール、ユウリ、カイの三人もまた笑顔で笑い合う。
「ようし!それじゃあレベッカ!学園の用意が整ったらまた知らせるから、この孤児院の子供達にも学園のこと話しておいてくれるか?それとユウリとカイも勿論、学園に来てくれよな!」
「分かったわ。八雲、ありがとう」
「えっ!?―――私達もですか?」
「……いいんでしょうか?」
学園に誘われてユウリとカイも驚きの表情に変わるが、
「八雲が学費面倒見てくれるって言ってるんだ。俺も先生になったらお前達にずっとついていられないし、丁度いいだろう」
ルドルフもふたりに学園入学を促すとふたりは笑顔で頷いていた。
こうして優秀な教師を二名確保した八雲は、ノワールと共に黒龍城へと向かって帰還するのだった―――




