首都防衛戦
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―――インディゴ公国首都ディオスタニア
『伝心』で知らせを受けて、大型魔物ヘル・マンタ達が背に載せる百隻のシニストラ軍船により運ばれてきた七万の魔物兵を待ち受けるフォウリン達―――
【―――来ました!】
前線に立つスクルドからの知らせを『伝心』で受け取ったフォウリンは、
「発見したとの知らせがきました。ここからが正念場です。首都を護り抜くのです!!!」
「オォオオオ―――ッ!!!」
総勢四万を超えるヴァーミリオン皇国軍に風属性魔術の《拡声》で兵達を鼓舞した。
同じく首都に集められたインディゴ正規軍凡そ五千も同じく整列し、フォウリンの声に耳を傾ける。
「これは戦ではありません!魔神が生み出した魔物の兵によるインディゴへの侵略です!我等ヴァーミリオンは、同盟国の窮地を救うために来ました!さあ、共に人間の国を護り抜くために、貴方達の家族を、愛する人を護るために!―――共に戦いましょう!!!」
「ウオォオオオ―――ッ!!!」
フォウリンの言葉にヴァーミリオン皇国軍のみならずインディゴ正規軍からも雄叫びが上がる。
そんなフォウリンの姿を見て、ヴァーミリオン皇国軍司令官ジャミルは、若き日にイェンリンと駆けた戦場を思い出しながらも、イェンリンとは違う新たな次代の皇帝に笑みを浮かべる。
前線には―――
紅の戦乙女
第三位 スクルド
第四位 ヒルド
第八位 ゲイラホズ
―――この三人がそれぞれ紅神龍の武装を手に空から飛来する敵を待ち受けていた。
『伝心』でヒルドとゲイラホズに連絡するスクルド―――
【―――ふたり共、配置につきましたか?】
【ああ、此方は問題無い】
ヒルドからの返信と、
【私も既に配置についている】
そしてゲイラホズからの返事が返ってきたことで、準備は整った。
【いいですか、ふたり共。何が何でもインディゴは護り抜きますよ!】
いつになく語気を強めるスクルドにゲイラホズが訊ねる。
【―――いつになく言葉が強いな?何か理由でもあるのか?スクルド】
【当然です。インディゴはヴァーミリオンにとって重要な貿易主要国です。ここを失ったら、どれほどの損失が出ることか……】
ヴァーミリオンの財政を担うスクルドにとって、優良貿易国であるインディゴが滅ぶなどヴァーミリオンの財政から見てもあってはならない損失だった。
【ああ……そういうことなんだな……それは、大変だな】
スクルドのリアルな理由にゲイラホズは少し引き気味になる。
【大変だなどというレベルではありませんよ!ゲイラホズ!貴女も酒代をなくされたくなかったら、死ぬ気で働きなさい!!】
【何!?―――酒代は関係ないだろう!?】
【―――ふたり共!お喋りはそこまでだ!!】
反論しようとしたゲイラホズの言葉を遮るようにしてヒルドが告げる。
「来たか……私の酒代のためだ。全部まとめて……沈んでもらう!!!」
手にした紅蓮槍=朱雷に魔力を込めて紅のオーラを纏った瞬間、ゲイラホズは《空中浮揚》で弾丸のように空へと舞い上がっていくのだった―――
―――開始された首都防衛戦
大空から飛来する巨大なエイのような魔物ヘル・マンタの背中に載せられた軍船には無数の魔物兵が搭乗している。
スクルド、ヒルド、ゲイラホズの三人は飛翔しながらヘル・マンタごと軍船を粉砕して撃墜していった―――
「ハアアア―――ッ!!」
―――空中で紅蓮双剣=紅燐に風属性魔術を仕込んだヒルドが刃を振るうと、そこから生じた巨大な風の刃がヘル・マンタを斬りつけて墜落させていく。
「ウオォオオオ―――ッ!!!」
全身を紅のオーラで包み込んだゲイラホズは朱雷と一体になり、まるで弾丸の様に突き進むとヘル・マンタと軍船に突撃して貫くと同時に紅い雷撃攻撃により感電を引き起こしていく―――
―――そしてスクルドは、
「沈みなさい!!」
構えた紅蓮戦斧=紅激に集束した魔力から火属性魔術を発動し、自分の周囲に展開した無数の魔法陣から一斉に《炎弾》をマシンガンの様に撃ち出した。
その《炎弾》による直撃を受けたヘル・マンタは次々と炎上して地上へと墜落していく―――
首都からも目視出来る空で、黒炎を上げながら墜落していくヘル・マンタの様子はインディゴの国民達の目にも映っている。
「な、なんだ……あの化物達は……それに、それと戦っているのは?」
誰しもが現実離れした光景に息を飲んで見守っている。
暫くの戦いを経て半数以上のヘル・マンタが墜落したことで、敵の兵力も半減したかといえば―――そうではなかった。
「チッ!―――やはり魔物と化したことで、この程度の高さから落ちても死にませんか」
撃ち落として落下したヘル・マンタの多くは息絶えていたものの、その背の軍船に乗っていた魔物兵達は落下で破壊された軍船から這い出してきて、群れを成して首都ディオスタニアへと向かっていく。
元はシニストラの国民だったが『魔種』を移植されて魔物化したことで、その肉体は強化されて高度から落下した程度では致命傷にはならなかったのだ。
その姿は移植された魔種により顔面に肉の塊がこびりついたような容姿に変貌して、その肉の塊にはひとつの巨大な眼が見開いている異形な姿をしており、更に肉の塊からはウネウネと触手のようなものが揺らめいている。
「悍ましい……国民をそのような姿に変えて兵として使うとは……魔神ルドナ、許すまじ!」
地上を進軍する魔物兵の姿を見て、そう呟くスクルドの瞳は鋭く細められた。
墜落したヘル・マンタから這い出した魔物兵は、続々と首都ディオスタニアを目指して侵攻していく―――
「ここからはわたくし達が力を示す時です!全軍!!―――突撃ィイイッ!!!」
―――首都に迫る魔物兵が所定の位置を越えたところでフォウリンの大号令が響き渡る。
「―――突撃だァアアッ!!!」
フォウリンの大号令を復唱して、ジャミルが息子のガレスと共に皇国軍に命令する。
同時にインディゴ正規軍の将軍も突撃の号令を下した。
魔物兵凡そ七万に対してヴァーミリオン・インディゴ連合軍五万―――
―――雄叫びを上げて突撃する連合軍は魔物兵と激突する。
軍の最先端となって突撃するジャミルとそれに続くガレス―――
―――人と魔物の戦闘の火蓋が切って落とされる。
スクルド、ヒルド、ゲイラホズの三人は空中のヘル・マンタをすべて撃墜すると地上に下り、今度は魔物兵の後方から追撃するように次々と魔物狩りを開始する―――
「ウオォオオオ―――ッ!!!」
―――紅の雷を纏いながら地表を弾丸の様に疾走して魔物兵を駆逐するゲイラホズ。
「ハァアアア―――ッ!!!」
―――風属性魔術の刃を繰り出して、周囲の魔物兵を両断していくヒルド。
「迷わず冥府へ旅立ちなさい……」
そして紅激に無属性魔術《重力操作》を発動し、周囲の魔物兵を大地に押し潰すスクルド―――
一匹たりともその美しい身体に近づけさせず、醜い魔物兵を駆逐していく三人の戦乙女達。
その姿は勇猛というよりもむしろ芸術的な美しさと神と見紛う圧倒的な強さを纏っていた。
首都側の前線では―――
「オォリャアアアア―――ッ!!!」
―――その鍛え抜かれた肉体から繰り出す戦斧の舞で馬の周囲に群がる魔物兵を次々に斬り裂き、吹き飛ばしていくジャミル。
年齢をかなり重ねているにも関わらず、現役のままその力を示す皇国軍の最高司令官の姿に若き兵達も魅了される。
「オラオラッ!!!」
―――同じく鍛え抜いた肉体で大剣を振り翳して魔物兵を斬り裂くガレスの雄姿も数多くの兵の心の支えとなっていく。
皇国軍に数多くの猛者はいれど、このふたりは群を抜いている。
そして統率された兵達も自らの役目をこなすことに集中して、手にした槍や剣で魔物兵に応戦していった―――
フォウリンは中央の陣でその戦況を見守る。
本来ならイェンリンのように最前線に立って戦うと主張したのだが、その意見はジャミルによって退けられる。
イェンリンのいいところと悪いところ、これはその悪いところであり、総大将が最前線に立つことで鼓舞することは出来るが、全体を見通す判断が疎かになってしまう。
剣聖と謳われる最強のイェンリンであれば、最前線で敵と対峙してもすべてを打ち払う力を持っている。
しかしフォウリンにはその力はない。
八雲の『龍紋』によって相当ステータスが向上はしているが、ヴァーミリオンの後継者を前線に立たせることで失う訳にはいかないというジャミルの判断であり、フォウリンもジャミルの意見を退けるほどの胆力はまだなかった。
もどかしい気持ちを抱えてフォウリンは前線のスクルド達とジャミル達の無事を祈ることしか出来ない。
「皆……どうか無事に戻って来て」
ひとりそう呟くフォウリンだった―――
―――ディオスタニア防衛戦を開始して、数時間の時が過ぎた。
首都ディオスタニアの郊外には、大量の魔物兵の死骸が大地に転がっている―――
連合軍側にも犠牲は出ているが、それでも魔物兵側に比べれば少ない損耗で収まっていた。
当初は数の上で有利だった魔物兵の軍勢も、人間の率いる統率の取れた軍の前では烏合の衆といっても過言ではなかった。
戦術は大軍を凌ぐ―――そのことを現実に示した戦いはもうすぐ終焉を迎えようとしている。
前線の兵達が体力を消耗すると、控えている第二軍が入れ替わりに前線に立ち、それを第四軍まで用意していた連合軍は兵達に十分な休養を与えながら、その過酷な前線を維持し、最後には押し返すまでに至る。
ジャミルとガレスも何度か前線を引き、代わりに立つ将軍と入れ替わりになってフォウリンのところに戦況を報告に来ていた。
「―――魔物兵の数は残り一万を切っております。このままいけば押し潰せるでしょうな」
ジャミルの報告にフォウリンも安心するが、まだ油断は出来ない。
それは、イェンリンから『伝心』で届いた魔神ルドナのことだ。
「気は抜けません。恐らく魔神ルドナもこの地へ向かったと聞いています。剣帝母様と八雲様がお戻りになるまで、魔神からこの国を護らねばなりません」
戦況を聴いて浮足立つことなく、冷静に状況を判断するフォウリンにジャミルは内心で感心しながら頷いて返す。
するとその時―――
―――ジャミル達の離れた最前線で巨大な黒い稲妻が落雷を繰り返し、真っ赤に燃え盛る溶岩で生み出されたドラゴンが姿を現した。
「あれは!?―――ドラゴン!?」
溶岩の龍に目を見開いて見つめるフォウリンだが、呆気に取られている場合ではないとすぐに正気を取り戻してジャミルに視線を向ける。
「どうやら……魔神のお出ましのようですな」
その返事にフォウリンはゴクリと喉を鳴らすのだった―――




