魔神達との死闘
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「そうか……ついに神剣が解放されたか……クックッ」
―――魔神ルドナは、まるでそのことを喜ぶかの様に歪んだ笑みを浮かべる。
そのルドナを見て八雲は訝しげに睨みつける。
「なんだ?まるで神剣が解放されたことが嬉しそうな顔だな?」
そう問い掛ける八雲に、ルドナは笑みを浮かべたまま答える。
「フフッ……ああ、お前達は私が神剣を恐れて破壊しようとしていると思っていたのだろう?」
「……違うのか?」
「いや、確かに神剣は魔神にとっては脅威と言えるだろうさ。だが……」
「……」
そこで眼を細めて鋭く睨むルドナに八雲の警戒心が跳ね上がる。
「神剣には別の役割があったのさ。それが―――これだっ!!」
「―――ッ!?」
玉座に座ったまま右腕を前に突き出して掌をルシアに向けた瞬間、ルシアの正面に巨大な赤黒い魔法陣が浮かび上がる。
「ルシアッ!!」
隣にいたバサラもルシアの名を叫ぶが、ルシアは胸を押さえて、その場で苦しそうにしながら膝をついた。
「ウグゥウウウッ!!―――アアッ!!ウアァアアァアッ!!!」
胸を押さえて苦しむルシアをバサラが介抱し、八雲は『回復』の加護を発動するが効果がない―――
「お前、何をした!!」
―――ルドナに怒声を浴びせる八雲。
その瞬間―――
―――ルシアの前に展開された巨大な魔法陣が赤く点滅を開始すると、その中心から何かが飛び出してくる。
「フハハッ!―――遂に解放された!!数千年もの昔、この世界で忌まわしい神剣に封印されし『魔神剣』がっ!!!」
「―――ッ!?魔神剣だとっ!?」
魔法陣から現れたのは―――巨大な黒い剣の柄だった。
サイクロプスなどの巨人でも扱えないのではないかというくらいに巨大な剣の柄は、バサラとルシアが白い光の世界で見た神剣くらいに巨大な剣だ。
ルドナが伸ばした右手に向かって魔法陣から抜けていく魔神剣―――
「させるかっ!!!」
―――その刀身が現れる前にルドナを仕留めんと、八雲がルドナに向かって黒刀=夜叉と黒小太刀=羅刹を握って突撃する。
だが、八雲の側面から襲い来る無数の刃の出現にその突撃は阻まれてしまう―――
「くそっ!グレイピークかっ!!」
―――『身体加速』で繰り出す神速の夜叉と羅刹の剣戟で、空間を突き抜けて襲って来るグレイピークの刃を弾き返している間にルドナの伸ばした右手に魔神剣の柄が到達する。
手が触れた瞬間、魔法陣から現れた巨大な剣がルドナの手に握られた一振りの両刃の剣へと一瞬で姿を変えた―――
―――その剣はドス黒い刀身に血の様に赤く輝く紋様を浮かべ、
―――その刀身からは黒い煙のようなオーラを噴き上げ、
―――その刃渡りは大太刀ほどの長さがあり、禍々しい力を周囲に振り撒く。
「おお……流石は長きに渡り神剣に封印されていただけあって、積み重ねた怨嗟の力は星でも砕けそうだ」
魔神剣に頬ずりしそうなくらい禍々しい刀身を眺めるルドナに、八雲達は脅威を感じていた。
「ハァハァ……」
魔神剣の解放によってルシアの苦悶の表情も回復の兆しを見せているが、そんな彼女を神剣の光によって人間に戻ったウルスラが抱え支える。
「ルシア様!大丈夫ですか!?」
「ウ、ウルスラ……ありがとう」
フレイアから渡された白い布に身を包み、傍で身体を支えるウルスラを見て、自分のことよりも元の姿に戻っているウルスラへ向けて笑顔を向けるルシアに、ウルスラは涙を浮かべる。
「さて……これで舞台も役者も揃ったようだ。後は……脇役には早々に舞台から退場してもらうとしよう」
魔神剣に見惚れていたルドナが、悦に浸った表情で八雲達にその剣の切っ先を向けて言い放つ―――
「そうだな。薄汚い魔界のゴミはこの世界からとっとと排除しないとな」
―――八雲もルドナと妖魔達に向かって夜叉の切っ先を向けると、堂々と宣言した。
「やれるものなら―――やってみろっ!!!」
ルドナが怒声を上げて魔神剣を振り抜くと、その剣圧がグレイストルス城の玉座を横薙ぎに斬り裂き、城の崩壊を引き起こす―――
「危ないっ!!!」
―――八雲の声にイェンリンは剣圧を躱し、バサラとルシア、ウルスラの前に出たフレイアは防壁を張り、魔神剣の剣圧を受け止める。
「フレイアッ!!」
防壁を張るフレイアを案じて声を上げた八雲だったが、
「―――此方は大丈夫です!!」
フレイアの返事を聴いてルドナに振り返る。
そして八雲は《空中浮揚》で空中に飛び上がると、魔神剣が崩壊させたグレイストルス城の瓦礫の上に次から次へと飛び乗り、ルドナの元に向かって突き進む。
「―――ルドナ様には近づけん!!!」
その八雲に側面から襲い掛かるグレイピーク―――
―――だが、そのグレイピークに襲い掛かる真紅と黒の合わせられた刀身。
その剣を両手の刃で受け止めるグレイピーク―――
「チィッ!!―――剣聖かっ!!!」
「―――小僧、お前の相手は余が直々にしてやる。だから八雲の邪魔はさせんぞ!」
―――そう言い放って黒炎剣=焔羅を振り抜くと、刃を受け止めていたグレイピークが崩壊した玉座の壁まで吹き飛ばされる。
イェンリンの援護を受けて八雲がルドナに辿り着き、夜叉と羅刹を神速で上段から振り下ろした―――
―――しかしダークエルフだった頃のルドナであれば、この一撃で斬り裂かれて終わりだった。
だが、今は魔神だ―――
―――金属のぶつかり合う甲高い音が響いたかと思うと、ルドナの手にした魔神剣と八雲の夜叉、羅刹が激突したところからドス黒い魔神剣のオーラと八雲の蒼白いオーラが吹き出し周囲の建造物まで巻き込んで吹き飛ばしていく。
「グウゥ―――ッ!!!」
思った以上に強力な魔の力に、八雲は五体が引き千切られるほどの衝撃がノックバックして返って襲い掛かってきた―――
「ハハハッ!!どうした?黒神龍の御子!この程度の力しかないのか?―――吹き飛べェエエッ!!!」
―――醜く歪んだ笑い顔で叫ぶルドナから更に黒いオーラが吹き出すと、八雲をその崩壊した壁の穴から城外へと吹き飛ばしていった。
しかし間髪入れずにその八雲を追って城外に飛び出すルドナ―――
「―――八雲ッ!!!」
―――吹き飛ばされた八雲の身を案じるバサラだったが、そこに巨大な黒い影が覆い尽くしていく。
「ゲフッ♪ 他人のことを心配している余裕があるのかぁあ?」
そこに現れたのは、首都ディオスタニアで初めて見た時よりも更に巨大化して、下半身がタコの様な触手の群れに変わった妖魔グスターボだった。
「どうか、ルシアとウルスラをお願いする」
障壁を張り、ルシアとウルスラを保護するフレイアに頭を下げてグスターボに向かおうとするバサラに、
「バサラ様……ご武運を」
恐れることなく妖魔に立ち向かうバサラの瞳から力強い何かを感じ取ったフレイアは、勝利を信じて送り出す。
「バサラ……」
魔神剣の解放で体力を消耗されたルシアは、その名を呼ぶことしか出来ない。
そんなひとり向かって来るバサラにグスターボの下卑た笑い声が響く―――
「ゲラゲラッ♪ お前、ディオスタニアであれだけやられておいて、それでも立ち向かってくるとか馬鹿なのかぁあ?」
―――そんなグスターボの言葉を無視して、バサラは腰から漆黒刀=黎明を抜刀する。
「ゲヘへへッ♪ そんな細っちょろい剣で何が出来るゥウウ―――ッ!!!」
唾を飛ばしながら叫んだグスターボの下半身から大量の触手がバサラに向かって飛んでくる―――
「―――フンッ!」
―――今まさにバサラを貫かんばかりの勢いで飛んで来た触手が、バサラの手にした黎明の一閃で切り刻まれてその場に落ちていく。
いや、落ちただけではなく切り落とされたすべての触手がシュウッ!という音を立てて、蒸発するようにその場から消えていく―――
「ぎ、ぎざまぁあ!!!―――その剣は何だぁあ!!!」
―――バサラの握る黎明が白いオーラに包まれていて、しかも自分の身体の一部を蒸発させたことに叫ぶグスターボ。
そんな妖魔をバサラは睨み返して―――
「これが―――神剣だ」
―――その神剣と化した黎明を握りしめるバサラ。
グスターボにそう告げると、巨大化した目の前の妖魔に突撃するのだった―――
―――グレイピークと対峙するイェンリンは、
「どうした小僧!お前の剣技はこの程度かっ!!」
互いに刃を神速の動きで繰り出して、ふたりの間では残像を残しながら刃と刃が激突して火花を放っていく―――
―――魔神の血を授けられ、身体能力も魔力も各段に跳ね上がったグレイピーク。
目にも止まらぬ剣戟を、イェンリンはまるで鼻歌でも歌いそうなほど余裕で受け、弾き返しては更にグレイピークの身体に無数の傷を刻んでいった―――
「その程度では天璽は授けられんなァアアッ!!!」
―――イェンリンは叫びながらグレイピークの懐に入り込み、思い切り蹴り飛ばす。
「―――グホッ!!!」
蹴り飛ばされたグレイピークは城の壁に新たな穴を空けて、城外へと突き抜けていった―――
「余が直々に稽古をつけてやろう」
―――不敵に笑いを浮かべたイェンリンは、
グレイピークを追って《空中浮揚》でその穴から外へと飛び出していくのだった―――
―――ルドナに吹き飛ばされた八雲と、
それを追って出たルドナは―――
「ハハハッ!!!簡単には死んでくれるなよっ!!!―――九頭竜八雲!!!」
―――空中で魔神剣を振り翳して八雲と剣技で渡り合い、互いの刃が衝突する度にドス黒いオーラと蒼白いオーラが周囲に閃光となり放たれていった。
シニストラの上空で城下に降り注ぐ二色のオーラは、建物や地面に触れたところから爆散させていく―――
(ぐぅううっ?!―――コイツ!なんて力だっ!!)
―――魔神剣を手にする前のルドナであれば、これほど押されることなどなかったであろう。
しかし神剣に封印されていたというだけあって、魔神剣に内包されていた膨大な魔の力はルドナに無限に近い力を供給している―――
―――それは『限界突破』によりオーバー・ステータスを発動した八雲を凌駕するほどの巨大な力だった。
「―――さあっ!!これはどうだぁあああっ!!!」
魔神剣を握る手とは逆の手を翳すと、そこから膨大な黒いオーラが炎の様に噴き出して八雲に向かって発射される―――
―――その黒い炎のオーラには、なんと怨嗟の表情を浮かべた無数の怨霊の様な影が潜み、蠢きながら八雲に襲い掛かってくる。
「―――ッ!!これは!?」
魔界で鍛えられ、長きに渡り魔界で血を啜り、そして三千年前の『魔神戦争』で此方の世界の多くの命を吸い取った魔神剣に囚われた数えきれないほどの命の怨嗟―――
―――その怨霊が放たれる黒いオーラの攻撃が連続して八雲に向かって撃ち出され、八雲の命を奪おうと襲い掛かってきた。
「舐めるなよっ!!!
―――《輝弾》!!!」
その力に対抗して《光属性魔術》中位の《輝弾》をマシンガンのように撃ち出す―――
「フッ!―――そんなものっ!!!」
―――するとルドナの周囲に五つの黒い球が現れると、ルドナを中心に四角形と頂点を結ぶ陣形を組み、更に互いの黒い球を結ぶ赤黒い光線によってピラミッド型の防御障壁を展開していった。
その防壁に命中していく《輝弾》が、尽く黒いオーラの壁に飲み込まれてその光を消していく―――
―――八雲の《輝弾》はオーバー・ステータスによって並みの光属性魔術とは比べ物にならない威力を持っている。
それにも関わらず、事も無げに消滅させられていく様子に、流石の八雲も頬を冷たい汗が流れていった―――
「これは……本当に予想以上だわ……」
―――魔神剣によって強化されたルドナの力に、八雲も絶句する他なかった……




