ふたりに贈り物を
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―――同盟国であるインディゴ公国を目指していたヴァーミリオン皇国軍
その皇国軍に三妖魔のひとり、グルマルスが襲撃を仕掛けた報を聴いて八雲とイェンリンも不安が過ぎったが、そこは紅の戦乙女達の活躍でフォウリンは無事だと告げられて胸を撫で下す―――
そしてシニストラ帝国では、
「……グルマルスがやられた」
そう呟くルドナの言葉にグレイピークは眉を顰める。
「確かに……グルマルスに呼び掛けても何ら返答がございません」
魔神ルドナより生み出された妖魔達は『伝心』のような互いの声を遠くに伝える能力がある。
その能力を駆使して呼び掛けても一切グルマルスの反応はない。
何より生みの親であり、絶対の支配者でもある魔神ルドナの呼び掛けにも反応しないということは、三妖魔にとっては死を意味していた。
「おのれ……紅神龍の御子と紅神龍の使徒め……」
静かに告げるルドナだが三妖魔の一角が討伐されたことに怒りは沸々と沸き上がり腸の煮えくり返る思いであり、玉座に腰掛けているルドナの前に控えていたグレイピークにもその怒りのオーラがヒシヒシと伝わってきている。
その証拠にルドナの座る玉座の肘置きを掴んでいた手に力が籠り、ピシッと音を立てて握っていた先の部分に亀裂が走った。
「フゥ……準備は整ったか?グレイピーク」
一呼吸入れて冷静さを取り戻したかのようなルドナが、玉座から眼下のグレイピークに問い掛けた。
「はい。グスターボによる『魔種』の生成とシニストラの民への憑依も予定通りに……あとはルドナ様の号令をお待ちするだけです」
期待通りの返答を受けてルドナの口角がニヤリと上がる。
「よし!―――ならば行くぞ。インディゴへの海を渡り、かの地を地獄に変えて、そしてその次はヴァーミリオン皇国、そして次にシュヴァルツ皇国をこの世から消し去って、忌々しい御子共は―――まとめて嬲り殺しだっ!!!」
「―――ハッ!!」
―――玉座から立ち上がり、グレイピークに号令を掛ける魔神ルドナ。
向かう先は海峡を隔てた広大な大陸、フロンテ大陸を目指すことを高らかに宣言した―――
―――フォウリン達がグルマルスの襲撃を受けてから二日後
既にインディゴ公国の国境を越え、間もなくヴァーミリオン本隊も首都ディオスタニアへと到着するとの先触れが城に到着していた。
その間に八雲は首都の郊外を整地して天翔船朱色の女皇帝を移動させ、先行して連れて来た三千の精鋭部隊と本隊の受け入れ準備を始めた。
整地した土地に女王クレオニアの許可を得て八雲が土属性魔術で兵舎を建てていき、受け入れられるだけの基地を整備していく。
バサラとルシアも土地勘のない八雲達に協力して手伝い、バサラはインディゴの糧食の解放や市街の商人ギルドの協力を求めて、その基地への物資の取引も繋いでいた。
―――戦争には金が掛かる。
今いる三千の兵を配備するだけでも主に食糧問題はつきまとう。
賊や侵略者であれば、その場で略奪する行為を横行させて腹を満たせばいいだろうが、イェンリン達は正式に相互軍事条約により遠征してきた援軍である。
元々は司令官のジャミルの厳しい軍律により略奪行為は完全に懲罰対象とされ、万一にもそれを行った者や部隊は実際に過去にも厳しい罰を受けている。
―――戦争には金が掛かる。
そのことを知っているバサラと八雲はこの段階から首都の商人ギルドに交渉を持ち掛けて、物資の枯渇を防ぐためと物価の上昇を抑えるように働きかけていく。
その動きの早さにインディゴの商人ギルド長も驚いていたが、ふたりの交渉には快く賛同し、物資の枯渇防止には隣国のシュヴァルツ皇国のリオンからインディゴへと物資供給をすることで解決した。
八雲がリオンのカタリーナに『伝心』でことの次第を告げ、カタリーナが父であり議長でもあるジョヴァンニに働きかけた結果だった。
「―――上手く話が進んでよかった」
商人ギルドからの帰り道、八雲がバサラに話し掛ける。
「ああ。これも八雲のおかげだよ。リオンから全面的に協力を得られることになって、戦争で国の物価が上昇するのも何とか抑えられそうだ」
「この世界はまだ流通の道や連絡網が弱い。賊に襲われたり奪われたりすることもザラだからな。それだけに戦争で物資が消費されて枯渇すると物価の上昇は必然的に起きてしまうからな」
「その通り。だからこそ、戦争なんてものは早く終わらせないと国民がもたないし、国自体も結局は破滅の道に向かってしまう」
「そもそも戦争なんかやるなよって話しなんだが、流石に攻めて来られるものまではどうしようもないからなぁ……」
八雲が首都ディオスタニアを見たいと言い出したので、歩いて戻るふたり。
言い出した八雲は街道を進みながら他国の首都の様子を彼方此方見ては感心したり、珍しそうな顔をしている。
「観光客みたいになっているな」
バサラが少し呆れたように告げると、八雲はニヤリと笑みを浮かべて、
「元々はお前の真意を確かめてから、こうして観光しながら帰るつもりだったんだぞ」
そう言い返す。
「ウッ!それを言われると俺も言い返せない」
「ああ、別に攻めている訳じゃないさ。ルドナの件も分かったから逆にこっちに来てよかったと思ってるんだ」
「魔神ルドナ=クレイシア・アンドロマリウス……次はどうする気なのか」
不安を浮かべたバサラの表情を見て、八雲もその気持ちは分かる。
「いつ海を渡ってくるのか、そこが問題だな。軍船の姿さえ確認出来れば、俺とイェンリン達で何とでもなる。だが―――妖魔達は別だ」
さらに不安になる言葉を聴いて、バサラは北門で繰り広げられた地獄の景色とレベルの違う戦闘の様子を思い出す。
「……今の俺の力じゃ、八雲達の足手纏いにしかならないな」
珍しく自信を失った様子を見せるバサラに八雲は感じるものがあった。
「何言ってんだよ!お前がこっちの世界に来て、そこで努力してきたことは決して無駄なんかじゃない。俺はよく一緒に鍛錬する子達に言ってることがあるんだけど」
「うん?なんだ?」
「―――鍛錬は決して自分を裏切らない。今日鍛錬した自分は昨日の自分より、たとえ僅かでも前に進んでいる、そのことを忘れるなよって」
「……努力は無駄じゃない、か……そうだな。少し弱気になっていたみたいだ。俺は俺に出来ることをやる。今までもこれからも、そうすることにする」
「よしっ!それでいいと思うぞ!それじゃあ―――そんなバサラ君に、俺から良い物をあげよう♪」
最後にニヤニヤとしながら告げる八雲に、どこか不気味なモノを感じ取り顔がヒクつくバサラだったが、
「良い物って?」
八雲に問い返して真意を探る。
「それは―――戻ってからのお楽しみだぞ♪ テヘッ♪」
自分では可愛くテヘペロしたつもりの八雲だが、その顔がバサラをますます不安に陥れるのだった……
―――陣を敷く基地に戻る八雲とバサラ
そこに八雲が建設した兵舎があり、そのひとつである八雲達が軍議に使用している兵舎に入ると、
「ちょっとこっちの部屋に来てくれ」
八雲に促されるまま、幾つかある部屋のひとつに促される。
室内に入って、八雲が用意していた物をバサラに渡す。
「……これは?」
何事かと呆気に取られたバサラだったが、八雲は笑いながら、
「だから!良い物を渡すって言ってあっただろう?いいからこれ着てみろよ!」
そう言って手渡した装備一式をバサラに押しつけた。
そうして着替え終わったバサラは―――
八雲と同じ黒色生地に藍色のラインが入ったシャツと、同じく黒地に藍色のラインが入ったパンツに着替えていた。
その上に羽織るための黒地に藍色の装飾が刺繍され、背中には金の刺繍でクロイツ家の紋章が描かれたコートを渡される。
「これって……うちの紋章まで……」
「更に!」
声を張り上げた八雲が取り出したのは、コートの上から纏える漆黒の手甲に胸当てといった軽装鎧のような防具と―――
「これは黒神龍の鱗で『創造』した防具と武器だ」
「これって―――刀か?」
―――それと一緒に一振りの刀をバサラに手渡す。
「ああ!やっぱり日本人には刀を持ってもらいたいって思ってさ。この国で持っていた西洋剣の両刃の剣とは勝手が違うけど、折角こうして知り合ったんだ。それなら刀を贈りたかった」
「こんなレアな素材を使ったものを、本当に貰ってもいいのか?」
神龍の鱗と言えばこの世界では伝説級に珍しい素材であり、しかもその世界最硬の素材を用いた防具と武器となれば、その価値はどこまで上がるか分からないくらいの代物なのだ。
流石のバサラもその武装に慄く。
「心配するな!お前だけじゃないから♪」
「―――えっ?」
その言葉に驚いたバサラの声に合わせたかのようにして部屋の扉が開くと、そこに立っていたのは―――
「……ルシア」
「あっ、バサラ……その、お帰りなさい/////」
―――バサラと同じ装備だがコートは白地に赤い刺繍が施され、白いブラウスに紅いチェックのプリーツスカートを履いたルシアが、恥ずかしそうにモジモジしながら部屋に入ってきた。
防具は白く、その腰に下げられた細剣も白い鞘に収まっている。
「……おい、八雲」
「ん?なんだ?バサラ。ルシアの姿を見てお揃いで感動しちゃった?んん?」
少し煽り気味に答える八雲に、ルシアはバサラとお揃いと言われて更に顔を赤くしていき、バサラは更にジト目がきつくなる。
「八雲……お前、向こうの世界で何かアニメにハマってたか?」
「えっ?は?イヤだなぁ~!ちょ、何言ってんだよ~!まるで俺が好きだった異世界物の主人公とヒロインのコスプレ造ったみたいなこと言わないでくれよ!」
「いや、そこまで言ってない……むしろ自白してるじゃねぇか……」
バサラがジト目になっていたのは、此方の世界に来る前に日本で流行っていた異世界物のアニメキャラが着ていた装備にそっくりだったからだ。
「いいじゃねぇか~!自分で着るのは勇気いるけど、他人が着ることにはまったく恥ずかしくない」
「俺が恥ずかしいんだが?!しかも再現力が半端ないし、確かあの主人公のメイン武器も刀だったよな……」
「同じ名前を付けてもいいぞ?」
「誰が付けるか!その名前を言う度に羞恥心が止まらなくなる!!」
完全に遊ばれていると思ったバサラは憤慨するが、
「冗談だ!冗談!俺は黒神龍の鱗を使って装備を造る時には必ず自分で名づけしている。バサラの刀の銘は『黎明』、ルシアの細剣の銘は『永遠』だ。これからシニストラを撃退してお前達の時代が来ると信じている女王とも相談して決めた銘だぞ」
「陛下と……」
八雲の言葉を聴いて感慨深げに全身の装備と、腰に帯びた刀と剣を撫でるバサラとルシア。
そんな時に扉がノックされたかと思うと、ブリュンヒルデが部屋にやって来る。
「ヴァーミリオンの本隊が到着した。皆で出迎えをするために表に来てくれとイェンリンからの伝言だ」
「分かった。丁度良かったな。皆にもお披露目しようぜ♪」
バサラとルシアに外へ向かうように促す八雲。
その八雲にふたりは有無を言わせずの勢いで表に連れ出されるのだった―――




