妖魔と戦乙女
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―――蒼天の空の下、集う紅の戦乙女
真紅の戦鎧に身を包みし四人の戦乙女に、巨大な土の巨人と肩に乗る三妖魔のひとりグルマルス―――
まずは紅の戦乙女のゲイラホズが前に出る。
「まずは私から行こう。ヒルドに一番槍は取られたが、あの土人形がどれほどのものか……見定めよう!!」
―――紅蓮槍=『朱雷』を握り直したゲイラホズが『身体加速』で一直線に土の巨人に向かって飛んだ。
その膨大な魔力から『朱雷』に紅い稲妻を発生させて、土の巨人の胸元に突き刺すと同時に巨人の身体に稲妻が走る―――
―――そして放電しながらその胸を貫いて、そのまま貫通したかと思うと大きな風穴を空けていた。
その圧倒的な威力の突進に土の巨人もぐらつき、その肩に乗るグルマルスも放電によって感電し、落下しそうになっていた―――
「ウオォオオッ!?なんて突進するんだよ……稲妻まで操るとは、顔に似合わず化物だな」
―――その力に慄くグルマルスだが、ゲイラホズはロングストレートの白髪を風に舞わせながら舌打ちを打つ。
「チッ!……本体は土人形の中かと思ったが、ハズレか……」
グルマルスの体内が土だったことから、本体は巨人の身体の中にあると踏んでいたゲイラホズだが、稲妻を用いて土巨人の体内を『索敵』したがそれらしき反応がなかった。
「ではやはり人型の体内のどこかに中心核があるんじゃないかしら」
ゲイラホズに続き、前に出たのは第三位のスクルドだ。
「ふむ……では、人型の方を―――撃ち砕く」
静かにそう告げたスクルドの身体は地上から掻き消えて、一瞬でグルマルスの目前に姿を現す―――
「なんだとっ!?」
―――神速の突撃にグルマルスは驚愕の声を上げるが、スクルドは握り締めた紅蓮戦斧=『紅激』の刃の部分でグルマルスの首を一瞬で切り飛ばすと、長い柄を高速で回転させながら腕、胴、脚と次々に斬り飛ばしてバラバラにしていく。
だがスクルドの高速斬撃は止まらない―――
―――刻んだ身体を更に切り刻み、そこから再生しようとする動きを鋭い目つきで睨みながら観測していく。
しかし、再生する様子を見ても本体らしき物の存在を見定めることが出来ない―――
(おかしい……これほどの攻撃を受けながらも再生し続けるほどの能力を持ちながら、何故……本体の存在が見つからない?)
―――だが、無表情で考察するスクルドに向かって顔が崩れて再生途中のグルマルスが笑いながら、
「クハハハッ!俺の本体を探しているみたいだねぇ♪残念だけどすぐに見つかるようなところにはないよ」
スクルドの意図を読み取り、馬鹿にしたような笑みを浮かべる―――
「今度は―――こっちの番だよっ!!」
―――叫ぶグルマルスの声に呼応して土の巨人の身体から次々に棘のような、槍の様な鋭い突起が全身から突き出し、攻撃していたスクルド目掛けて突き立てられる。
「フンッ!!」
その鋭い棘を空中でヒラリと何度も回転して躱していくスクルド―――
―――その間にヒルドが飛び出して、土の巨人に向かって紅蓮双剣=『紅燐』から衝撃の音波を飛ばし、球状に巨人の身体の彼方此方を削り取っていく。
全身を何カ所も丸く抉られた土の巨人は、再生が間に合わずボロボロと地上に向かって崩れていく―――
「まだまだ!!こんなものじゃないぞっ!!!」
―――スクルドにバラバラにされたグルマルスが自身の身体を再生させながら、地面に山となった土の巨人の残骸から吐き出すようにして何かを出現させる。
「キメラだとっ!?」
それは生きている魔物キメラの群れだった。
「クックックッ!俺は体内に取り込んだモノを生かしたまま、こういう時に使うことも出来るのさっ!」
次々と土の山から現れるのはキメラだけではない―――
―――サイクロプス、グリフォン、さらにはアンデッド化しているゾンビまで群れを成して紅の戦乙女に襲い掛かってくる。
「随分と腹の中に抱えていたな」
ゲイラホズがキメラを一撃で仕留めながら呟く―――
「まったくです。悪食とはまさにこのことね」
―――サイクロプスの振り下ろす棍棒を『紅激』で軽く打ち払うスクルドもゲイラホズに同意しつつ、襲い来るサイクロプスの脳天をカチ割って血を噴水のように噴き出させていた。
空中のグリフォンと空中戦を広げるヒルド―――
「この程度の魔物で我々を止められると考えていたのなら、魔神の三妖魔も大したことはないな」
―――グリフォンとお互いにアクロバティックな旋回を繰り返し、『紅燐』でグリフォンを刻むヒルドは呆れた顔で魔物を打ち倒していった。
「チッ!だが、次は―――」
「―――いいえ。あなたに次はありません」
そう告げたのは、紅の戦乙女第一位フレイアである。
「なんだと?おい、お前一体何を言って―――」
「―――あなたの本体を見つけました。もう逃がすことはありません」
フレイアの言葉にグルマルスが一瞬、強張った表情を見せるがフレイアは構わずに続ける。
「あなたの本体は地中深く……五百m地下から根を張る様にして魔力を地面に流していますね?」
「なんだとっ!?」
「その顔は当たりだったようですね」
「フフッ!仮にそうだとして、地下五百mの俺をどうやって捕らえるんだ?地面に潜っていくとか言わないだろう?」
また余裕の表情に戻るグルマルスに、冷徹な無表情のままのフレイアが、手にした紅蓮剣=『紅彩』を鞘から抜き去る。
「ハハハッ!そんな剣一本で何が出来―――」
「―――フンッ!!」
グルマルスがゲラゲラと馬鹿にしたような笑い声を上げているその時、フレイアは紅彩を大地に突き刺すと真紅のオーラとなった魔力を地面に流し込む―――
―――今発動しているフレイアの魔力は紅の戦乙女第一位の地位に恥じぬ膨大な魔力であり、この瞬間に発動させている魔力の量だけで言えば、今の八雲の魔力を越えている。
「一体何をする気……な、なんだ?なんだ、これはっ!?」
突然、藻掻くような声を上げたグルマルス―――
―――気がつけばスクルド、ヒルド、ゲイラホズはフレイアの後ろに後退して並んでいた。
既にグルマルスが地面から吐き出した魔物達は粗方三人に討伐されてしまって、大地にひとりポツンと立っているグルマルスも、ワナワナと動揺した表情を浮かべて震えている。
「では見せましょう―――紅の戦乙女第一位の実力を!」
「や、やめろ!やめてくれぇええ―――!!!」
グルマルスの絶叫と同時に、そのグルマルスを中心にして地表から空に向かって凡そ十mの高さまでがフレイアの防壁に包まれたかと思うと、その周囲およそ地面に五十平方mの面積が箱のようになった防壁に包み込まれていた。
「き、貴様っ!俺の―――俺の本体を!!!」
余裕のない表情でフレイアを睨みつけるグルマルスだが、フレイアは無表情のままで、
「この防壁は地下五百mまでの範囲を、あなたの本体がある周囲を確実に覆い尽くしました」
静かに冷たい声をグリマルスに聴かせる。
完全に外の世界と遮断されたグルマルスは、フレイアの防壁に完全に囚われてしまった。
「だ、だが、い、いつまでもこんな膨大な魔力を消費する防壁なんて続かないだろう!!」
グルマルスの指摘は確かに的を射ていて如何にフレイアでも、ずっとこの先ここにグルマルスを捕らえ続けることは魔力枯渇の道にまっしぐらとなる。
「ええ、そうですね……ですから、あなたは此処で始末して先に進むことにします」
「えっ!?始末するって―――ゲホォオオッ!?」
グルマルスが問い返した瞬間、グルマルスを捕らえた防壁が一気に半分ほどの面積に圧縮された。
正確には地下五百mの本体まで掘り下げた縦に長方形型をした防壁の体積が、一気に地面を二十五平方mほどの半分に圧縮された状態になったのだ。
その瞬間、地上にあった隙間も地面が一気に押し上げられて、その圧縮された土にグルマルスの人型も満員電車のように押し込められる。
「き、きざまぁああ!!!―――や、やめろぉお“お”お“!!!」
絶叫を響かせるグルマルスだが、フレイアは構わず圧縮を進めていく―――
縮まった防壁と大地の間には地下五百mまでの隙間が開き、そっとそれを覗き込んだフォウリンはゴクリと息を飲み込む。
日の当たらない地下の方は薄暗くなっていき、最後には真っ暗な闇だけが下に広がっていた。
フレイアの防壁圧縮により、その場に地下五百mまでの空間が掘削された光景がそこに現れたのだ。
防壁の中では圧縮された土に押し込められたグルマルスが、防壁に巻き込まれた先ほどスクルド達が打ち倒した魔物の死体に塗れて、ますます奇怪な声を上げてフレイアを罵る。
「ごのアバズレがぁあ“あ”っ!!!ふざげるなっ!!!ゴロス!!おま“え”を犯しまくっでぇ!!!からだのなかに土づめでぇえ!!ぜっだいにゴロスゥウウッ!!!―――アアアアッ!!!やめろぉお“お”お“!!!」
「聞くに堪えませんね」
氷のような視線を向けながらフレイアは更に防壁を小さくして体積を圧縮する―――
「ぎゃぼぉオアアッ!!!―――イヤァアアだァアア!!!じにだぐないィイイッ!!!」
―――既に数mほどの面積しか残っていない棒状になった防壁。
綺麗な正方形に形取られた絶壁の中央に立っているようにしか見えないほど圧縮された防壁の中で、ついには命乞いを始めるグルマルス。
「あなたはインディゴで殺めた人間の命乞いを聞いて助けましたか?」
淡々と問い掛けるフレイアの声が最後になり―――
「―――プギョォオッ!!!」
―――防壁は数十cmほどの面積にまで圧縮され、急激に細い糸のようにまで細まり、やがては防壁ごと消えていった。
あとに残ったのは、地下五百mまで彫り込まれた絶壁状の縦穴だけである―――
「終わりましたね」
フレイアの傍にいたスクルドがフレイアに声を掛ける。
「ええ。終わりました」
フレイアは頷きながらスクルドに返した。
「今回の襲撃を気づけなかった私の失態だ」
いまだ責任を感じているヒルドにフォウリンは首を横に振る。
「いいえ。あの妖魔に気づくのは困難でしょう。それよりも皆が無事だったことを喜びましょう」
フォウリンの言葉にヒルドも心が軽くなり、改めて任務に向き合いフォウリンを護ると心に誓う。
「しかし……」
そこでゲイラホズの言葉に全員が視線を向ける。
「結局アイツの本体はどんな姿をしていたんだろうな?」
その様なことを気にするゲイラホズの言葉に全員が一瞬呆気に取られて、それから誰かしら笑みが零れる。
グルマルスを葬った本人であるフレイアが、笑顔を浮かべながら、
「―――確かに」
ゲイラホズにそう答えるのだった―――
 




