バサラとルシア
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―――天翔船朱色の女皇帝の船内
八雲の部屋でバサラが話しを続ける―――
「それで、ローゼン公爵には異世界からの転生者だって話していないんだろう?話す気はないのか?」
「それは……正直迷っていないと言えば嘘になるな……」
暗い表情で俯くバサラに八雲は、
「だったら俺も一緒に話そう。実際に異世界人が一緒に話した方が理解しやすいんじゃないか?」
「ああ、そう、だな……でもいいのか?」
「俺の見た感じだとそのことで彼女と要らない溝を作っているんじゃないのか?」
「うっ?!」
図星を突かれてバサラの表情が気不味いものに変わる。
事実、両親を失い記憶の戻ったバサラは混乱していたこともあったが、ある考えからワザとルシアを遠ざけていた経緯がある。
彼女を女王にしようと決意したのも、その時だったのだ。
「この世界に来た時、俺は恋人で幼馴染の子と突然離ればなれにされて、精神的なショックが大きかったのを今でも覚えてる。お前も今、話しておかないと後から後悔しても後悔しきれないぞ?」
経験者である八雲の言葉は何よりもバサラの背中を押していた。
「―――分かった。ルシアに話すよ」
「よし!そうと決まれば、皆のところへ戻ろうか」
八雲の言葉でふたりは立ち上がり、ルシアとイェンリンの待つ部屋へと向かうのだった―――
―――そして八雲とバサラがルシア達の待つ部屋へと戻る。
「待たせて悪かったな」
「戻ったか八雲。それで?訊きたいことは済んだのか?」
イェンリンの問い掛けに八雲は頷いて、
「ああ。俺の疑問はすべて解けたよ。あと俺もルドナのことがあるから参戦することにした」
話し合ったことを大まかに伝えた。
「ハハハッ!結局そうなったか!そうなるんじゃないかと余は思っていたぞ♪」
一緒に戦争に参加出来ると聞いてニヤリとした笑みを浮かべるイェンリンに八雲はゲッソリとした表情を浮かべる。
「おいおい……戦争しようって話に参加するのに、そんなに嬉しそうな顔をしないでくれよ……俺は優しい男が売りなんだから」
「閨ではあんなに余のことを攻めて泣かせるのに、か?」
「―――ちょっとイェンリンさん!?そういった情報は非公開でお願いしますっ!!」
突然ここで『龍紋の乙女』の夜の事情を語ろうとしたイェンリンを、八雲は慌てて口止めする。
剣聖の生々しいベッド事情にルシアは一瞬で顔を赤くして視線を逸らす。
バサラはイェンリンの強さを目の当りにしていたため、違う意味で八雲に驚愕していた。
「は、話が逸れたけど―――ローゼン公爵」
「は、はい!?/////」
ルシアはまだ顔が赤いまま、妙に声が裏返っていた。
「これからバサラが君に大切な話があるそうだ。きっと今まで君が抱いていたことの答えにもなるんじゃないかと思う」
「バサラが……お伺いします」
神妙な面持ちに変わったルシアは、ソファーに座り直してバサラの言葉を待つ。
八雲と一緒にソファーに掛けたバサラは、スゥーと深く息を吸い込むと、ゆっくりと吐き出してから―――
「俺は―――異世界人だ」
―――ルシアに真実を告げるのだった。
「異世界……人?……何を言っているの?バサラは生まれた時からインディゴにいるじゃない」
「ああ、確かに俺は此処で生まれてクロイツ家で育ち、今もこうして此処にいる。でも俺は異世界人なんだ」
「言っていることの意味が分からない。私のことを揶揄っているの!」
ルシアにとっては意味の分からないことを告げるバサラに、こんな時に何を言い出すのかと怒りを募らせていく。
「ああ~!すまない!―――少し俺に説明させてくれないか?」
そこで話に割って入ったのは八雲だ。
「ローゼン公爵がバサラの言っていることの意味が分からないのも、尤もな話しだ。まずは異世界人の存在について俺から説明させてくれ」
「黒帝陛下はご自身を異世界人だと公言していらっしゃると、先ほど仰っておられましたわね」
ルシアが八雲に問い掛ける。
「ああ、そうだ。この船も俺の世界の知識から発想を生み出した船だよ。技術的にはこの世界の魔術を取り込んでいるけどね」
「確かに、こんな物が造れるのは異世界の知識だというのは納得もいきます。ですが、バサラは―――」
「―――ああっ!分かってる!ずっと此処で一緒に育ってきたってことだろ?それには異世界人がこの世界にやってくる状況と条件によるんだ」
「……どういうことです?」
首を傾げるルシアに八雲は異世界人の 『転生者』 と 『転移者』 の違いについて説明する。
「―――俺は転移者だが、バサラの場合は転生者だ」
「……では、ではバサラはずっと前にいた世界の記憶を持ちながら、この世界で生活してきたと言うのですか?」
その質問には八雲は答えない。
話すかどうかはバサラに任せるという仕草で視線を送る。
「俺が前の世界の記憶を取り戻したのは……父上と母上が殺されている現場を見た時だ」
その言葉を聴いた瞬間、ルシアの顔色が変わった―――
―――バサラの両親とルシアの両親は同格の公爵家であり、子供達も同い年ということもあって昔から親交があった。
ルシアにとってもクロイツ前公爵夫妻は優しく接してくれた、もう一組の両親のような存在だったのだ。
その両親が亡くなっている姿を見た時に記憶を取り戻したというバサラに、ルシアはそれ以上何も言えなかった。
しかし、それでバサラがその時から自分に対しての接し方が変わったことが、ここにきて納得がいく。
「記憶を取り戻した時の俺は、正直言って混乱した。この世界で生きてきた記憶と、前の世界で生きていた時の記憶と、そんなふたつの記憶が渦巻いておかしくなりそうだった」
バサラの独白は続く―――
それから、自身の元に剣士や学者達を集めて改めてこの世界のことを学んだこと、情報収集のための部隊を創立したことなどを語る。
「……バサラ……ひとつだけ教えてください」
「なんだ?」
どこか悲し気な表情を浮かべたルシアがバサラに問い掛ける。
「貴方が……私のことをいつも女王に、と言っていたのは……そのことに何か関係があるのですか?」
「……」
押し黙るバサラをルシアはジッと見つめる。
「俺は……お前に女王になって欲しいと心から思っていた」
「私よりも貴方が王になった方がインディゴの未来のためだということくらい、世間知らずな私でも分かります」
「それじゃダメだルシア。俺じゃダメなんだよ」
「どうしてダメなの?貴方が異世界人だからというのは理由になりませんわ」
確かに、八雲も初めは異世界から来た自分が皇帝なんてものになっていいのかと葛藤したことがあった。
ルシアの言ってることは尤もで特に転生者であるバサラは血筋としては公爵、王族なのだ。
「違う、そうじゃないんだ」
「では、何が貴方の王になる道を妨げていますの?」
その問いに苦悶の表情を浮かべたバサラは―――
「―――俺はクロイツ公爵の血を引いていないんだ。つまりインディゴ王族の血を引いていない」
―――誰もが予想もしていない言葉を言い放った。
「……えっ?」
その衝撃の事実にはルシアだけではなく、その場にいる八雲、イェンリン、そしてウルスラまでが驚きの声を上げた。
「そ、そんな、まさか……」
「……本当のことだ。このことは、お前のご両親である前公爵も御存知のことだ」
「……嘘……でしょう」
深く呼吸したバサラが重たい口を開く。
「母上は子供が出来ない身体だったんだ。だが、父上はそんな母を心から愛していた。そんな時に母の親族で両親共に病死して赤ん坊だけが残された家があることを聞いた父上と母上は、その赤ん坊を引き取った。それが……俺だ」
「……女王陛下は、このことを……」
「勿論ご存知だ」
その返事にルシアが声を大きくする。
「それでは何故!王位を私か貴方に譲るなどとおっしゃったのです?血が繋がっていないことを知っていながら」
「陛下の御考えは俺には分からないが、そう告げることでお前の成長を促したかったのかも知れない。現にお前は俺に対抗する意識が芽生えて、自ら学びを得たり、見聞したりするものが増えていただろう」
「それでも……そんなことって……」
複雑な心境が渦巻くルシアの瞳には、いつしか涙が溜まっていく。
「……今まで言わなかったことは謝る。すまなかった」
バサラの謝罪の言葉に、涙はついに決壊して頬を伝う……
「今更……そんな……でも、私……バサラに嫌われていた訳では、なかったのね……」
「えっ?嫌う?そんなことある訳ないだろ……俺にとっては家族同然に大切だ」
急にそんなことを言い出したバサラに、思わずルシアは顔を赤らめて、
「言うのが遅いわ……バカ/////」
ボソリとそう呟くのだった。
そんなふたりの様子を見た八雲が、イェンリンに囁く。
「よく覚えておけよ、イェンリン。これが本物のツンデレってヤツだ」
「これはなかなか難しいものだな。余もまだまだ勉強不足というところか」
と言い合っているのがバサラの耳に入る。
「誰がツンデレだよ……良い話が台無しだろうが」
と、ヒソヒソと話す八雲とイェンリンにツッコミを入れるのだった―――
―――ルシアが落ち着いてから、八雲からの提案を話す。
「私を……この船で?」
「ああ、此処ならそこいらの城よりもよっぽど堅固な護りだし、船に乗っているのも化物クラスのヤツらばかりだ。魔神だろうが宇宙人だろうが攻めて来ても問題ないさ」
「うちゅう……じん……というのはよく分かりませんが……でも、よろしいのでしょうか?」
ルシアはイェンリンに視線を向けて恐る恐る問い掛ける。
「余の夫がお前をこの船で護ると言っているのだ。良き妻は夫の言には従うものだ」
「初めて聞いたけど?もっと前から言う事聞いて?」
良き妻を演じたイェンリンにツッコミが止まらない八雲だが、そんなふたりをルシアは羨ましく思えてしまう。
「では、このままインディゴの城まで行くとしよう。援軍に来たこと、お前達を匿うことを女王に伝えておかねばならんからな」
イェンリンの言葉に皆頷いて、天翔船朱色の女皇帝は、一路オクターブ城へと進路を向けるのだった―――
―――その頃、オクターブ城では
女王クレオニアが外壁の北門で起こった惨状の報告を聴いて、ひとり顔色を青くしていた。
その場にはバサラがいたこと、そして首都のローゼン家で起こった家人皆殺しの報を聞いて恐怖と不安が押し寄せてきたのだ。
クロイツ家のカイトの知らせでは、バサラもルシアも無事だとは聞いたものの、ふたりとも天翔船に乗り込んで今は何処に行ったのかも知れない現状がもどかしかった。
そんな時―――
「へ、陛下っ!!!―――そ、空に巨大な物体が飛び、この城に迫っておりますっ!!!」
「なんですって!?まさか―――」
玉座から立ち上がり、城のバルコニーから表に出たクレオニアが目にしたのは、且つて若き頃に憧れた剣聖と同じ朱色をした巨大な船体を大空に舞わせる天翔船の姿だった―――




