マンハント 開始
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―――ラピスラズリと約束した鍛錬当日
昨日、黒龍城で三対三のチーム戦による鍛錬に誘われた八雲が、その鍛錬の場所に選んだ『ラーン天空基地』の地表部分に集合した二組―――
二組が立つ草原はラーン天空基地にある山の麓だった。
ラピスラズリのチームメンバーはサファイア、ルビーを加えた三人である。
対する八雲のチームメイトはと言うと―――
「……それで?どうして、そのふたりがメンバーなのさ?」
―――そのメンバーを見て顔を顰めるラピスラズリ。
「いやぁ~!昨日、急だったからさっ!丁度このふたりと遊びに行ったところだったし、協力してもらおうかと」
「ふ~ん、一緒に遊びに行ったんだぁ……」
知っているにも関わらずラピスラズリの視線はわざと冷たい。
「本日は鍛錬にお呼びいただきまして、とても嬉しいですわ」
「白い妖精と鍛錬出来るなど滅多にないことだからな。今日は宜しくお願いする」
八雲が連れて来たふたりとは蒼天の精霊のウェンスとサジェッサだった―――
「こちらこそよろしくね♪ でもさぁ、普通は龍の牙を連れてくるものじゃないの?どうして蒼天の精霊?」
黒神龍の御子が何故、蒼神龍の眷属を連れてくる判断に至ったのかが気になるラピスラズリに八雲が答える。
「ああ、シュヴァルツに戻ってから皆こっちで溜まっている用事があるみたいなんだ。だから用事を優先してもらってたら誰もいなくなっちゃって。そんな時にダメ元でサジェッサとウェンスにお願いしたら承知してくれてさ♪」
「なるほどね。それじゃあ改めてルールを決めようか」
「あっ!その件だけど勝った方が負けた方に何でもお願い出来るって話は―――」
「―――それはダメッ!それがこの鍛錬のご褒美なんだから、それは変えないよ」
だが、そんな条件があることを知らなかったウェンスとサジェッサは、
「ちょっとお待ちを!それはもしも貴方達が勝てば八雲様に好きなお願いが出来ると?」
「それはいくら何でも横暴ではないか―――」
「―――そっちが勝ったらふたりも八雲様にお願いしてもいいことにするよ?」
「ならば承知しましょう/////」
「し、仕方ないな。うん、承知した/////」
ラピスラズリのボーナスルールにウェンスとサジェッサも即承知する。
「それは俺だけ負担が多いんだけど……」
勝っても負けてもお願いをきくことになる八雲は不満気味に意見するが、
「これだけの女の子にお願いしたり、お願いされたりするんだから幸せでしょう♪ まあ、勝つのは僕達だけどねぇ♪」
笑顔を浮かべながらも既に『威圧』を放って空気を変えていくラピスラズリ……
「さて、それじゃあ他のルールについて決めよう。まず『追うチーム』と『追われるチーム』になって、相手側のチームを全員戦闘不能にすれば勝ちだよ」
「追われる側も反撃していいってことだな」
「当然だよ。それで相手チームを全員戦闘不能にすれば勝ちだよ」
するとウェンスが質問する。
「戦闘不能にされてしまいますと、もうそこで終わりですの?」
「うん、じゃないと終わらないしね」
その説明を聴いて八雲は考える。
(ということは、残り人数で戦況は変わってくるな……)
「戦闘不能はどう判断する?」
今度はサジェッサが質問する。
「意識を失ったら、それは戦闘不能と見なすよ。その時は大人しく此処に戻ってくること」
「なるほど」
そこで八雲はルールを整理する―――
―――二組のチームは追う側と追われる側に分かれる。
―――追う側も追われる側も相手を全員戦闘不能にすれば勝利。
―――戦闘不能は意識を失った時点で決定、その場合は戦闘から離脱してスタート地点に戻る。
そして、八雲から更に追加を加える。
「鍛錬の範囲はここから半径十km以内とするのはどうだ?」
「うん、いいね♪ この鍛錬では追う側は『索敵』をフルに使って探す、追われる側は『索敵』に掛からないように如何にして気配を消すかっていうのも重要な点だからね」
「あと、地下の基地施設は利用禁止。あくまでこの地表部分より上が範囲な」
「分かった。大体こんなものかな?あとは……どっちが追う側になる?」
「どっちでもいいぞ」
「だったら、僕達が追う側をさせてもらうね♪ さあ、楽しい狩りの始まりだよ♪」
「何となく言い方がマンハント的で怖いけど……それにしても、サファイアにルビーは、いやに大人しいな?」
八雲はラピスラズリの後ろで黙って大人しくしているサファイアとルビーに問い掛ける。
「うるさいですわね……私達のことは気にしないでくださいませ」
「ああ、私としては久々に他の勢力の眷属同士で行える鍛錬だからな。集中しているのさ」
と素気なく答えるサファイアとルビーに八雲は並々ならぬ気配を感じた。
そしてウェンスとサジェッサにどういうことかと訊こうとして振り返ると、そのふたりも既に臨戦態勢に入っている様子の闘気が漏れ出ているのが感じられる……
「あの、これって……普通に鍛錬だよね?」
そんな神龍の眷属達の様子に、ひとり不安になる八雲の念押しにラピスラズリが笑顔で、
「大丈夫♪ 大丈夫♪ 僕達の鍛錬だと、このラーン天空基地が半分吹き飛ぶくらいなだけだよ♪」
「―――ラーンさんっ!!ちょっと今すぐここから半径十kmに強力な結界張って!!今すぐにっ!!!」
ラピスラズリの言葉に、すぐに従属させた際に堕天使ラーンと繋がったパスを利用して伝える八雲。
【了解……主の位置より半径十kmに三重結界を展開します】
八雲の指示通りに結界を展開するラーンの返事を聴いて、まずは一安心する八雲だが、
「今張った結界を破壊するのは無しだぞっ!それやったら、お願いとかも聞かないからなっ!」
他の五人にも念押しして伝えておく。
「了解!さあ、それじゃあ始めようか♪ 僕達は此処で百数えてから追跡を開始するよ。あ、あと終了時刻を決めておこうか!今から三時間でタイムオーバーとして、その時の戦闘不能になっている人数の状況で勝敗をジャッジしよう」
「いいだろう。でも、百数えるまでは『索敵』の使用はなしだからな。しかし、いざ始めるとなるとちょっと楽しみになってきたな、これ。それじゃあ―――開始だっ!!」
そう言って八雲達のチームは『身体加速』で一気にその場から掻き消えていった―――
―――その場に残ったラピスラズリ達のチーム
「九十八、九十九、ひゃ~く♪ さてと……う~ん、随分遠くまで逃げたのかな?」
そう言いながらすぐに『索敵』を展開するラピスラズリだが、やはり気配は感知出来ない。
「それで、どうやって追跡する?」
ルビーがラピスラズリに問い掛ける。
「別れて行動するのは危険だね。だけど僕は単独で『索敵』を行うから、ルビーとサファイアはふたりで行動して、僕が誰かの位置を捉えたら『伝心』で伝えるから、その場に急行して戦闘不能にしてよ」
「……いいですけど、ラピス、くれぐれも無茶なことだけはしないでちょうだいね?」
「心配性だなぁ、サファイアは♪ 僕の目的はあくまで八雲様だけだよ♪ あとのふたりはいざとなったら三人掛かりででも抑え込む」
そう言ったラピスラズリの銀色の瞳は、すでにハンターの目つきに変わっていた。
その様子に余計に心配になるサファイアだが、
「相手は御子だけではない。蒼天の精霊のセカンド『賢明』のサジェッサと、フォース『願い』のウェンスだ。一筋縄ではいかない」
ルビーの言葉に改めて気を引き締めるハンターチーム。
「それじゃあ、出発しようか♪ 何かあれば声を掛けるから―――」
―――そう言い残してラピスラズリは『身体加速』で姿を掻き消していった。
「ハァ……わたくし達も行きましょうか」
「ああ、そのことだが、私達も単独行動で行かないか?」
「ラピスの作戦からは外れますけれど?」
「なぁに、そうでなければ鍛錬の意味がないだろう?万一敵に囲まれて不利な状況になっても、対応出来るようにするのもまた、この鍛錬の目的でもあるのだし」
ルビーは理路整然と説明しているつもりのようだが、その実はこのマンハント鍛錬を楽しみたいという考えが滲み出ているのをサファイアは感じていた。
「わたくしは構いませんわ。どうせラピスもルビーのそんな性格を分かっているのでしょうし。でも、会敵した場合は必ず『伝心』だけ飛ばすようにしてください」
「ああっ!―――ではなっ!」
ルビーは笑顔を残してその場から『身体加速』で消えていった―――
「まったく……アイツを狩るのは……わたくしですわ」
―――最後に残っていたサファイアもまた、その場から風の様に姿を消していき、こうしてラーン天空基地でようやくマンハントが開始されたのだった―――
―――八雲達のチーム
ウェンスとサジェッサは互いに『伝心』が使えることから、八雲は単独で動くことにして草むらから近くの森にまずは潜伏した。
まだラピスラズリ達は百を数えている途中のはずなので、『思考加速』の領域で作戦を考える―――
「向こうの出方がまだ分からない以上、下手に動けない。向こうは三人とも『伝心』が繋がってるからな。戦闘不能を狙っていくのなら三人で行動するが、『索敵』範囲を広げるなら最低でもひとりは斥候に出すはず」
八雲の読み通り向こうはラピスラズリが斥候として動いている。
だが―――
「最悪は三人個別で動かれて『索敵』範囲を広げられることだな。発見さえしてしまえば『伝心』で味方を呼ばれたらそれで終わりだ。そうなってくると―――」
―――現状の分析を行いながら、八雲は『思考加速』を閉じてまた移動を開始する。
そんな時、ラーン天空基地の大空に一本の《火球》が打ち上げられて、大空で爆発した―――
「ッ?!―――ウェンスかサジェッサのどちらかが見つかった合図だっ!!」
―――《火球》が打ち上げられた地点には、
「今のは八雲様に向けての合図かい?」
笑顔で問い掛けるラピスラズリ。
「八雲様とは『伝心』が使えないのでな」
そう答えるのはサジェッサだった。
「それは、『まだ』の間違いじゃないかな?サジェッサ」
「……どういう意味だ?ラピスラズリ」
「そのままの意味だよ♪ 君は……いや、君達ふたりは『龍紋の乙女』に入りたいんだろう?」
「なっ!?何故そんなことを知っている!?/////」
ラピスラズリの指摘に動揺するサジェッサだったが、もうその態度がラピスラズリの指摘が正しいと示しているようなものだ。
「やっぱりね……因みに僕達が勝った時の八雲様へのお願い知りたいかい?」
「何の話だ?」
突然の話題についていけないサジェッサだったが、
「僕のお願いはね……僕を好きになってもらうことだよ♪」
銀色の瞳に妖しい光を湛えたラピスラズリに、サジェッサは自分の拳を強く握り締めたのだった―――




