新たな馬車
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―――六匹の雌犬と化した美女達を隅々まで味わい尽くした八雲
その翌日になって―――
朝食を終えた八雲はアークイラ城で話していた『運輸局』のための下準備を開始する。
黒龍城で会議のために用意した広間には八雲とノワール、そしてクレーブスの元にサジテール、シュティーア、スコーピオ、アクアーリオ、ジェーヴァ、ジェミオス、ヘミオスの龍の牙外部諜報活動を主とする左の牙が勢揃いしていた。
「八雲様。言われた通り左の牙全員揃ったぞ」
長机の上座に座る八雲に告げるサジテール。
「皆に集まってもらったのは他でもない。これからオーヴェスト=シュヴァルツ連邦は『運輸局』という新しい部局を設立させることにした。主な仕事は『人』と『物』の移動と輸送をするために、新たな乗り物を造って物流を活発化させるのが目的だ」
八雲の説明を静かに聴いていた皆の中からクレーブスが挙手して質問する。
「具体的な輸送方法と道は決定しているのですか?」
「ああ、その案は出来ている。これを見てくれ!」
そう言って八雲は《投影》の魔術でオーヴェストの地図を長机に広げて映し出した―――
「首都ティーグルから各国の首都まで繋がっている道路を拡張して片側二車線の四車線まで広げる」
「今の道路は中央に白い線を引かれていますよね?それを拡張するということですか」
クレーブスが眼鏡をクイッと上げて八雲に返すと、八雲が頷く。
「そうだ。そうしておけば巨大な輸送用の馬車が通っても他の一般の馬車や人が道を譲ったりしなくても余裕で行き来が出来るはずだ。これからその道路拡張工事を以前のように龍の牙達に手伝ってもらいたい」
そのことについてはノワールが返事をする。
「城にいる者達を好きに使って構わんぞ」
「出来たら今の道を造ってくれたメンバーに同じ道の拡張を造ってもらうのがいいと思ってる」
「その点については此方で調整しよう」
サジテールがメイド隊の人員調整を引き受ける。
「ジェーヴァ達はこの地図を見てどこか気になる場所はないか?」
「自分は特にないッス」
ジェーヴァが返事をすると他の者達も頷いて返していたが、ヘミオスが手を上げる。
「はい、ヘミオス君!」
「はいっ!えっと、この広げる道はティーグルに繋がっているけど、他の国同士の道路には走らせないの?」
八雲の広げた道路拡張工事の内容には、ティーグルから放射状に道路の拡張が描かれているが、ヘミオスはその他の国同士を繋ぐ道路は現状の道路のままという状態を指摘する。
「おお~!よく気がついたなヘミオス」
「エヘヘ♪ それほどでも/////」
「いずれは他の道路にも工事を行って開通させるつもりだけど、まずはティーグルと繋げた道で始めて運行状態を確かめてからだ。最終的には各国を繋げている道にも手をつける」
「なるほど~♪ それじゃあ、兄ちゃんはこの地図の道で、まずはお試しをしようってことだね♪」
「そういうことだ。一斉に始めて失敗しましたじゃ、シャレにならないからな」
「失敗するつもりはないのだろう?なにせ我の御子が始める事業だからな!」
ノワールは八雲のすることなら間違いない!と言わんばかりの顔で言い放つ。
「お、おう……根拠があるのか無いのか分からない期待をありがとう……むしろそれがプレッシャーだけど」
「弱気な言い方をするな!それで、次はどうする?」
バンッ!と八雲の背中を叩いてノワールが気合いを入れ直す。
「痛てぇ!と、とりあえず次は外に出てこの『運輸局』が運行する馬車を検分してもらおうか」
「なにっ!?―――もう出来ているのか!?」
「まだ外観だけな。客車の中はまだ空っぽなんだ。シュティーア!またドワーフ達と一緒に内装頼んでもいいか?」
「勿論!ガッテンですよ!アタイも新しい馬車を見てみたいです♪」
「よし!それじゃあ庭に出よう。そこでお披露目といこうか!あと、その後でクレーブスにちょっと相談がある」
「私に、ですか?畏まりました。御伺いしましょう」
そうして広間での話し合いを終えて、八雲達は全員で庭に移動する―――
―――庭に向かう途中、八雲はとある人物達と出会う。
「九頭竜君にそれと大勢で、これから戦争でも仕掛けに行くのかね?」
廊下で出会ったのはドクトル・メンフィスにメリーアン、アイズとロレイン、そしてラミアだった。
「誰がテロリストだよ?これからオーヴェストに設立する『運輸局』で運行する新しい馬車のお披露目に庭へ行くのさ」
「なに?新しい馬車だと?……君が新しいということは、この世界には無い物と思ってもいいのかね?」
「俺はこの世界の全ては知らないからハッキリとは言えないけど、たぶん今現在は無いと思うよ。これから先に誰かが造るかも知れないけど」
「面白い。どうだね、クラフト君。自分の見聞を広めるためにも、君達も一緒に見せてもらいに行かないかね?」
「はい!九頭竜君、私達も見せてもらっても構わないかな?」
メリーアン達も見たいと言うので八雲は快く承諾する。
「勿論、構わないですよ。それじゃあ皆で庭に行きましょうか」
八雲の言葉に従い、さらに人数の増えた一団は中庭へと向かうのだった―――
―――そして中庭へ
中庭の整備された広場にやってくると、八雲は振り返って―――
「物が大きいから離れておいてくれ!そう、そのくらいの場所で動かずに待っててくれ!」
―――全員に距離を取るように促す。
ひとり広場の真ん中辺りまで歩く八雲は、そこで『収納』から『創造』しておいた『運輸局』用の馬車を取り出す。
ズドォンッ!という重量のある物が大地に落ちる音と共に土煙が上がり、それが収まっていくと皆の目の前にその姿を現した―――
―――キャンピング馬車の二両分に当たる規模の馬車が目の前に現れて、全員が思わず「おおっ」と声を上げる。
「これが『オーヴェスト運輸局』が統括して運行する
―――その名も『トレーラー馬車』だっ!!」
―――黒き連結馬車、銘をトレーラー馬車
一両目は人の移動のための客室車両となっており、二両目には物流のための貨物車両が連結されている。
八雲の考えている馭者は客室車両の先頭に常駐してもらい、不測の事態が発生した場合には対応してもらうつもりだ。
貨物車両には大型物資にも対応出来るように後部と側面に収納シャッターが設置され、物の出し入れにも迅速に対応出来る物となっている。
外装から馬車を引く黒麒麟まですべて黒神龍の鱗製という、まさに装甲車でもあり、旅人と物資の安全を保証する出来となっていた。
「スゴイです!兄さま!!」
「スゴイ!カッコイイねぇ♪ 兄ちゃん!」
「そうだろう!そうだろう!もっと褒めていいんだぞ♪」
そう言って背中を仰け反らせる八雲。
「だが、これほどの巨大な物を……恐らく底に付与された重力制御の魔術で浮遊させているのだろうが、これほどの魔力をどうやって維持するつもりなのかね?」
踏ん反り返る八雲にドクトル・メンフィスから鋭い指摘が突き刺さった。
「ウグッ?!……そこなんだよなぁ……俺の魔力基準で考えていたら、コイツに魔力を注いで動かせる人間が何人いるのかということに、出来てから気がついた……」
「ふむ……馬鹿なのかね?」
「おい、メンフィス=フォレスト!我の夫に失礼だろう!そんなことくらい八雲が打開策をちゃんと考えているに決まっているだろう!なぁ、そうだろう八雲!」
自分の御子であり夫でもある八雲を馬鹿にされて声を上げたノワールだったが、
「―――クレーブス、なんかいい方法ない?」
「八雲ォオオ―――ッ!!!」
あっさりと八雲に裏切られたノワールの絶叫が響き渡る。
そしてクレーブスはトレーラー馬車を見て周り、
「フム……」
と一息吐く。
「―――この馬車に直接魔力を注ぎ込んで貯める仕組みを設置出来れば、魔力を補充して移動出来るようにすることは可能でしょう」
「だから俺以外にそれが出来る人間がいるかって話をしているんだけど?」
するとクレーブスは眼鏡をクイッと上げて―――
「何も人が魔力を補充する必要はありません」
―――と、澄まし顔で答える。
「なるほどな……クレーブス先生は面白い発想を考えられる」
そのクレーブスの言葉に納得して頷いているのはドクトル・メンフィスだけだった。
「どういうことだってばよ?俺達にも分かるよう、説明してくれ」
するとクレーブスが説明を始める。
「八雲様はその膨大な魔力でご自身の魔術飛行艇から天翔船まで数多くの乗り物を動かします。ですが、それは八雲様くらいの魔力を持っていなければ、その乗り物は動かない仕組みとなっていますね?」
「ああ、確かに」
天翔船に関しては特殊な構造となっており、初期起動時は八雲が魔力を注いで動力を起動させているが、その後は艦に対で造られた自動人形の四人の持つ魔力でも起動が可能になっている。
それはディオネ達四人を『創造』する際に、天翔船を動かせるだけの魔力を保有する構造にしているため、当初に八雲が注ぎ込んだ魔力を船の運用に効率的に使用し、また船を使用せずに船渠に停泊している間にも四人が動力部に魔力を補充しているため、飛行することに支障が出ない。
しかしこのトレーラー馬車に一台に一人、自動人形を『創造』すると今度はノワールからあった馬車で生活を営む者達を路頭に迷わせないために馭者として雇用するという目的に反することになる。
「別に乗る者、動かす者が魔力の補充を必要としない構造が出来れば問題はありません」
「でも、それをどうやって?」
首を傾げる八雲にクレーブスは、
「地下の魔力回路に接続した魔法陣を地面に展開して、その上にこの馬車を置いて魔力の補充をすればいいのです」
「地下の魔力回路?そんなものがあるのか!?」
初めて聞くその言葉に八雲は驚く。
「地下深くになりますが、『地脈』とも呼ばれています。そこに接続する魔法陣を設置すれば魔力を動力として動かす物なら充填は可能でしょう」
すると今度はドクトル・メンフィスが話し出す。
「地下の魔力回路から魔力を得るのであれば、直接地下深くに接続のための魔力針を打ち込むのがより効率的だ。君の能力であればそれが可能だと思うがね?」
「要は大地の血管みたいな物に針を打ち込むようなイメージでいいのか?」
「うむ、その認識で間違ってはいない。その針を通して地上まで魔力を引き上げてくれば、後は地上に魔法陣を描いておいて、そこでその馬車を係留して魔力の充填をさせれば理論上は可能なはずだ」
「なるほどな……だけど、その地脈ってのは、こっちの都合のいい場所を走っているものなのか?」
「地脈については魔術に深く傾倒している者ならば『索敵』で探し出すことが出来るだろう」
―――そのメンフィスの言葉を聴いて、八雲は大空を見上げる。
上空にある魔術反射衛星に自身の『索敵』を接続して、その検索対象に『魔力回路』という地脈の項目を追加すると―――
「オオッ!すげぇなこれっ!!―――あっちもこっちも地脈が走ってる!これならターミナルを建てるのも特に問題なさそうだぞ!!」
―――衛星から映し出されたオーヴェストの大地に満遍なく走る魔力回路の流れを見た。
「そのターミナルというのは?」
早速聞き慣れない言葉に反応するメンフィス。
「ああ、それはこの馬車の発着場所で、そこに乗りたい人が集まったり、乗せたい物の集積所を建てたりするんだよ。そこで料金を支払ってもらって輸送するって訳。その場所のことをターミナルって言うんだ」
「ふむ……利用したい人や物を集める場所か。それを各首都に建設して行き来させるという訳だね。料金もそこで一元管理して極めてシンプルな構成になるということか」
「その通り!そして、そのターミナルの中に今言っていた魔力針を打ち込んだ魔法陣を設置して、トレーラー馬車の魔力を充填させる仕組みにする。そうすればトレーラー馬車の数だけ輸送便の本数を打てるって訳さ」
八雲の発案した『運輸局』とトレーラー馬車はこの後、より現実的な段階へと進むのだった―――




