九頭竜八雲からの挑戦
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―――八雲の建てた『ムーンバックス・カフェ』の建物を出て、
カフェの隣にある大きな敷地には『バビロン治療院』という看板を掲げた白い診療所が立っていた―――
「此処に、ユリエルが……」
ユリエルの祖父である聖法王ジェロームは、その治療院の建物を見上げて感慨深げに眺めている。
「猊下、此方が入口になりますよ」
中に入り易いように治療院の入口には扉はなく、急患が訪れてもすぐに運び込めるようにしている。
その入口から中を覗くと―――
「―――はい、もう大丈夫だよ♪ 次からは転ばないように気をつけてね♪」
「ありがと、おねぇちゃん」
「ありがとうございました。まさか学園祭に来てこんな立派な治療院があるとは思ってもいませんでした」
転んで膝を怪我したらしい女の子と、その母親らしき女性がユリエルに礼を言う。
「ええ、去年も怪我人の対応が大変だったと聞いていましたので、今年は対応出来るようにしたいと思って」
昨年も人が多く訪れていて、その間に些細な怪我や調理中の火傷など対応が必要な怪我人が出ていたが、学園の保健室だけでは対応しきれない事態になったことをユリエルは教師達から聞き及んでいて、それならばと八雲にお願いして治療院を建ててもらったのだ。
しかし―――
本来なら微笑ましいシーンのはずが、何故かジェロームは遠目に固まっている……
―――女の子と母親が出ていった後に診察室に入ってきたジェロームが見た物は、
ユリエル本人と彼女から治療院をやると聞いて手伝いに来ているレギンレイヴの純白のミニスカナース服に身を包み、ムチムチした生足に白いニーソックスを履いた姿だった―――
「……ユリエル?」
「えっ!?うそ、お、御祖父様!?―――ど、どうしてヴァーミリオンにっ!?」
「ティーグルで会談が開かれた後に、こうしてお忍びで訪れてみたのだが、その恰好は……」
ジェロームにそう言われた瞬間―――
―――ユリエルは自分がミニスカナース姿だったことを思い出して、途端にあたふたと慌てだす。
「い、いえ?!こ、これは、あう!ち、違うのです!?その―――/////」
「―――これは俺とユリエルの故郷で医療に携わる女子が着る制服なんですよ」
慌てるユリエルに変わって八雲がジェロームや他の者にも説明する。
「おお、黒帝陛下の……なるほど、随分と先進的な格好で年甲斐もなく驚きましたぞ」
「患者さんの緊張を解くための軽装なんですよ」
八雲の説明にジェローム以外の全員が―――
(―――いや、絶対嘘でしょう、それ!!)
―――と、心の中で同時に八雲にジト目を向けながらツッコミを叫んでいた。
「で、でも、御祖父様がヴァーミリオンまで来てくださってユリエルはとても嬉しいです/////」
話を変えようとユリエルはジェロームと再会出来たことに喜びを伝えた。
「おお、私も離れた地でも、こうして民のために奉仕するお前のことを誇りに思っているよ」
そうして再会を喜び合うユリエルとジェローム。
「さて、それじゃあ次の催しにご案内しましょうか♪」
「此処はわたくしが見ておきますから、ユリエルも御祖父様と一緒に行ってきてください。折角此処まで来てくださったのですから♪」
「レギンレイヴ……ありがとう/////」
そうして学園祭ツアーにユリエルも加えて八雲は次の会場へと案内する―――
―――治療院を出てすぐ隣の広い敷地
そこは広い公園のように芝生に覆われた広場と、整備された陸上競技で使われるような小さなトラックが用意されていた。
まずは芝生に覆われた公園の様なところにある柵で覆われた広場へと向かうとその中には―――
「これは!?一体どういうものなのだ?」
―――小さな子供連れの親子や、恋人同士と思われるカップルなどが彼方此方で笑みを浮かべている。
そこには子猫や子犬、無害な魔物の子供など数多くの動物達が集められていた。
そしてその柵には―――
『ふれあい動物広場』
―――とデカデカと記載されていて、幼い子供達を対象にしたふれあいの場が設けられていた。
勿論、恋人同士や動物好きな大人も問題無く入場出来る。
そして―――
そんな広場で一際目立っているのがノワールとアリエスが同伴している地獄狼に跨ったシェーナ、トルカ、レピス、ルクティアのチビッ子エルフ娘達だった。
「ほぉ~ら♪ シェーナ~♡ こっちの子猫がお前と遊びたそうにしているぞぉ♪」
そう言って子猫を抱いてシェーナの前に差し出すノワール。
可愛いもの大好きノワールさんにとっては子猫の愛らしさもまた至宝の可愛さなのだ。
「……にゃんにゃん」
その子猫をそっと受け取って優しく抱くシェーナ。
「ブフォアッ!!―――か、可愛い天使が可愛い子猫を抱いた時、究極の力を発揮するのだな!もう可愛いの神としか言いようがない!!新たな神、ここに爆誕!!!」
「勝手に神を生み出さないでください……ノワール様」
興奮した状態から意識が高みに昇り降りて来られないノワールに、今日もクールなアリエスのツッコミが冴えていく。
「ノワール様……子供達に子猫を重ねるとか、貴方こそ神です!」
「貴方は一度向こうの治療院で頭の治療してもらいなさい」
天使プラス子猫の絶景に神々しさまで感じてしまったダイヤモンドに白雪の視線は絶対零度だ。
「もしかして幼年部にいる間、こんな調子じゃないだろうな?」
「んっ?なんだ、八雲か……って、おいどうして此処にエドワード達がいるのだ!?エヴリンまでいるではないか!!」
「ウフフッ♪ 元気そうね、ノワール♪」
エヴリンがシェーナの傍にいるノワールに近づいて笑顔で声を掛ける。
「我が病など罹るか!お前こそ元気そうで何よりだな、エヴリン」
強がりを張る言い方をしていても、ノワールが友と認めるエヴリンと再会して嬉しくないはずがない。
「この子達も元気そうね。でも……この子達が乗っているのって、まさか地獄狼じゃないの?」
「ああっ♪ どうだ?こうしていると女騎士みたいでカッコイイだろう♪」
「いや、そんな強力な魔物達がいて大丈夫なの!?」
「大丈夫だ!コイツ等は八雲が『調教』スキルで手懐けてあるからな。絶対にシェーナ達に悪さはせん。逆に強力な護衛になっているという訳だ!」
「護衛……なるほど。此処は唯の動物とのふれあいが目的ではないみたいね」
「うん?それは一体どういう意味だ?」
ノワールは理解していない様だがエヴリンは『ふれあい広場』と銘打たれた此処で、シェーナ達の乗っている地獄狼や、所々で特別クラスの生徒達がついている大型の魔物達に視線を向けて、『調教』スキルによる魔物の使役と護衛について相手を選んでプレゼンしていることに気がつく。
現に八雲自身―――
「バンドリン、実はこの地獄狼を畑や牧場の付近を散歩したり、飼っていたりすると作物を狙う害獣が来ないって話、知ってたか?」
「なんとっ!?―――その話しは本当ですかなっ!?」
「ああ!俺の故郷では狼の血を引く犬を畑の周りで散歩させて臭いをつけておくと、本能でそれを察知して作物に被害を出す害獣が寄って来ないっていう防衛方法があるんだよ」
―――八雲が説明しているのは、現代日本でも増えている猿や鹿といった野生動物による野菜畑への被害をウルフドッグと呼ばれる狼犬を用いて畑の周囲に臭い付けをさせると、害獣が寄って来なくなるという方法だ。
「だからどうだ?地獄狼を何匹か国で引き取ってみないか?」
「しかし……強力な魔物であることには変わりはありませんでしょう?」
「そこは俺の『調教』スキルで人に害を与えないようにしておくから。あ、でも攻撃したらやられるのは仕方ないと思ってくれよ?コイツ等だって生き物なんだから」
「畑を護ってくれるというのに、その様な扱いは致しもうさん!なあ、イザベル!」
「えっ!?うん!そうだね♪ アハハッ!ちょっと、顔を舐めないでぇ/////」
バンドリンと八雲が話している間、その隣では足元に近づいてきた地獄狼の子狼を抱き上げてじゃれ合っていたイザベルが可愛さに負けて顔を舐められながら返事をしていた。
どうやらイザベルはもう、この子狼がお気に入りになった様でバンドリンもやれやれ、といった表情で笑みを浮かべていた。
この『ふれあい広場』にいる害のない魔物は、反面で人間にとって有効なパートナーになれる素質のある魔物を集めてきていた。
特別クラスの中で冒険者ギルドに登録していてダンジョン探索などに秀でた生徒達がいて、多くの魔物の知識を持っていることに目をつけた八雲は、そのメンバー達と一緒にヴァーミリオンの首都郊外で確保出来る無害で有効活用出来る魔物を集めて回ってきたのだ。
ウルス共和国のロック・バッファローが代表例となるが、先ほどの地獄狼の活用もまた農業生産主体のこの異世界では害獣対策や耕地の改造は重要な事項である。
「わたくしもその地獄狼のお話、伺っても宜しいでしょうか?」
「フレデリカも勿論いいぞ。エーグルも麦の大生産国だもんな。やっぱり害獣対策が必要か?」
「ええ、エーグルでも野菜もそうですが、やはり麦を狙う動物や鳥も強敵ですの……」
「鳥は空を飛ぶもんなぁ。でも、あっちで紹介しているハイ・イーグルって魔物なら、手懐けると他の鳥達を駆除して食ってくれるから、地表の地獄狼と同じように空も護れる様になるぞ」
「八雲様!―――吾輩にもそのハイ・イーグルの話しを!!」
各国のトップが挙って八雲と特別クラスの冒険者達に害獣駆除について話しを訊いていると、他の入場客もその話しを聞いて集まり出していった。
「後のことは任せてもいいか?俺達は向こうを見てくるから」
「―――了解だよ!黒帝陛下!」
クラスメイトの冒険者メンバー達に動物達の説明を任せて、八雲達は次に隣にある陸上競技用の様な小さなトラックに向かう。
既に何人かの女性陣は子狼や子猫を胸に抱いて離したくないといった様子でついて来ている。
ノワール達やシェーナ達も八雲について隣のトラックについて来ていた。
「此処は……ハッ?!あれは―――イロンデルと戦った時のっ!?」
ダルタニアンが思わず声を上げたが、そこにいるのは『黒麒麟』の集団だった。
「そう!あの時シュヴァルツ皇国騎士団が騎乗していた『黒麒麟』だ。此処ではコイツを使って乗馬の体験コーナーをやってるんだよ」
その陸上トラックの様なコースでは順番に黒麒麟に跨ってトラックを歩いて行く催しに、子供や大人達が数多く並んで待っていた。
黒麒麟の隣で並行して歩く特別クラスの乗馬に心得のある生徒達が手綱を握り、一応安全確保をしている形だが黒麒麟は八雲の命令で大人しくしか歩かないので事故の心配はほぼない。
しかし、そんな楽しそうな様子を見ていたエドワードとクリストフは渋い顔色に変わる。
「八雲殿……あの黒麒麟、まさか売るつもりなのかい?」
クリストフが懸念したのは既にシュヴァルツ包囲網でその力を発揮している『黒麒麟』を売買されれば、良からぬ考えを持つ国が戦争に用いないとは言い切れないからだった。
しかし、八雲は笑いながら―――
「売らない!売らない!これは単純に催しで出しただけさ。ただ今後の輸送業には使えるんじゃないかとは思ってるよ」
「―――そのお話、詳しくお伺いしたいですわね」
そこに割って入ってきた声の主は―――
「―――マダム・ビクトリア!?」
「ウフフッ♪ ごきげんようですわ。まさかこんな催しを開いていらっしゃるなんて、思いも寄りませんでしたわ♪」
―――ロッテンマイヤー商会の代表であり、ラミアの母であるビクトリア=ロッテンマイヤーがニコニコと微笑みを讃えながら八雲に挨拶をする。
「驚いたな……あっ、でもラミアが通っているから来てもおかしくはないよな」
「あらっ?既に娘とお知り合いでしたの?」
「ああ、知り合いどころか一緒にアズールまで行って冒険してきたくらいの仲だぜ♪」
「冒険!?アズールまで!?……それは知りませんでしたわ。娘が何か失礼なことは致しませんでしたか?」
知らなかったビクトリアは、不安気な表情で問い掛けてくる。
「全然♪ むしろこっちが仲良くしてもらったよ」
「まぁ♪ ウフフッ♪ それは安心致しましたわ」
「そうだ!ロッシ評議長!」
「はい、如何なさいましたか?黒帝陛下」
「紹介したい人がいるんだよ。此方は今の『黒神龍特区』で商会を始めてもらっているビクトリア=ロッテンマイヤーさんだよ」
「ビクトリア=ロッテンマイヤーですって!?あの南部スッドで最大のロッテンマイヤー商会の代表ですか!?」
普段冷静なジョヴァンニもこの時ばかりは驚いた顔をして、後ろで子猫を抱いているカタリーナも同じく驚いているところを見るとビクトリアの名声の高さが伺える。
「これは♪ これは♪ リオン議会領の議長ジョヴァンニ=ロッシ様ですわね。こうしてお会い出来て光栄ですわ。改めましてビクトリア=ロッテンマイヤーですわ」
「ロッシ商会の代表を務めるジョヴァンニ=ロッシです。高名なロッテンマイヤー様にお会い出来て、此方こそ光栄です」
「ウフフッ♪ それで、八雲様。先ほどの運送業についてですが、あの黒い馬のゴーレムを用いて始めるお心算ですか?」
「うん?いやまだ具体的には考えてないけど、あれを使えば疲れ知らずで荷物も引けるから―――」
「―――では、その話、うちで受けさせて頂けませんか?」
食い気味で八雲に提案するマダム・ビクトリアだったが、
「―――お待ちください。八雲様、あれを用いての運送業は商会で取り扱うには利権が偏り過ぎます。ここは一度国営にしてから払い下げを検討する形にしなければ軋轢が生まれます」
すぐにジョヴァンニから物言いがついてしまった。
「あらっ♪ これは分が悪い話になりそうですわね。少々焦り過ぎてしまいましたわ」
「いえ、ロッテンマイヤー様が過敏に動かれるのは当然かと。私も評議会議長としてではなく、一商会の代表としてなら同じ行動を取っていたでしょうから」
「まぁまぁ、それについてはロッシ議長の意見に俺も賛成かな。ただ、具体的な方法はまったく考えていないから。だから機会があったら一度ティーグルで話し合いをしないか?」
「そうですわね。どちらにしても道路網の整備されたオーヴェストではたいへん重要な案件になりますから」
「わたくしもそれで異存はございませんわ。その時はロッシ議長、どうぞお手柔らかに♪」
ジョヴァンニとビクトリアはそれからも商売の話しに盛り上がり、カタリーナも父に学ぶようにしてふたりの話しを聞いていた―――
―――特別クラスの催し
『ムーンバックス・カフェ』
『聖女の治療院』
『動物ふれあい広場』
『乗馬コーナー』
と数々の催しを開く八雲達の特別クラスだったが最後に―――
「よしっ!それじゃあ、そろそろ―――打ち上げるか!!」
―――そう言った八雲が空に向かって右腕を上げる。
空に向けられた掌から膨大な魔力が膨らみ、そこに魔法陣が展開すると―――
「―――《投影》!!!」
―――大空に向かって得意の広告を打ち出した。
その首都レッドの空全体を覆うようにして映された内容は―――
『告知!!強者よ集え!!
【激闘!!闘技場】
バビロン空中学園の特別クラスがプロデュースする実戦スタイルの催しに参加せよ!!
学園に建設された闘技場にて、腕に覚えのある強者を待つ!!!
学園祭
一日目 受付 本日午後五時まで
二日目 予選 開始午前十時から
三日目 本選決勝 開始午後一時から
ルール
●申請者による予選選抜を行う
●本戦はトーナメント形式
●武器・防具の持ち込み可
●魔術・スキル使用可
●死亡攻撃の禁止
勝敗
相手の戦意消失、意識消失
もしくは制限時間による判定により決定
優勝賞品
主催側より金貨二枚
真の強者はここにいるぞっ!!!
自分が強いと思っている奴は―――本気見せに来いやぁああ!!!
主催 バビロン空中学園 特別クラス
プロデューサー 九頭竜八雲 』
―――ヴァーミリオンの首都レッドにいた数多くの強者達の目に触れた。
金貨二枚は日本円換算でいうと二百万円相当の賞金になる。
この異世界の生活水準からすれば、喉から手が出そうなくらいの大金なのだ。
そして首都では空を見て鋭い視線を向ける強者達。
「八雲の奴めっ!余に内緒であの様な面白そうなことをしよって!!フッフッフッ♪―――フレイア!学園祭に行くぞ!!」
その中には紅き皇帝もまた含まれていた―――




