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黒神龍の武器

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ノワール達の専用武器を創造する八雲―――

―――まず初めに戻ってきたのはアリエスだった。


アリエスは元々、八雲の黒刀=夜叉よりも少し短めの刀が希望ということで形などは大体イメージはついていたので、あとは希望の長さくらいだった―――


「八雲様、このくらいの長さが丁度いいのですが」


差し出されたのは両刃の剣だったが、長さは2尺(60cm)未満で丁度脇差しの長さに合っていた。




脇差しとは―――


刀身の長さが1尺(約30㎝)以上、2尺(約60㎝)未満の刀剣のことで、名称の由来については諸説あるが、「腰の脇に差したから」というのが定説となっている。

江戸時代以前までの脇差は、同時に佩刀する打刀と異なる外装が用いられていた。

江戸時代以降、大小二本差(だいしょうにほんざし)が武士の正装として見なされるようになると、柄、鞘の素材や色を打刀と統一した拵が使用されるようになる。

また、脇差は武士が農民などから無礼な態度を取られた場合、合法的に相手を斬る「斬り捨て御免」(無礼討ち)においても使われていた。

斬り捨て御免では、武士は打刀を使い、相手に自分の脇差を与えて、刃向かわせてから斬るといった形式で行なわれたと言う。




「如何でしょうか?」


少し不安そうに聞いてきたアリエスに、


「いや、大丈夫だ。それじゃ皆が揃ってから順番に始めるから、待っていてくれ」


「はい♪」


嬉しそうな笑顔を浮かべて八雲に寄り添うようにしてニコニコしながら、他の武器希望者達の悪戦苦闘している様子を眺めている。


(アイツら、ちゃんと探せるのか?)


ああでもない、こうでもないと言いながら武器を漁るノワール達に八雲は少し不安と呆れ気味な表情になるが、アリエスは八雲の隣でずっとニコニコしていた。


そうして―――ようやく全員が使いやすい武器を手にして持って帰ってきた。


「八雲!我はこのくらいの長くて、太くて、硬いのがいい//////」


そういって八雲に長剣を差し出すノワール。


「あ、はいそうですね……Level.100になったらね?さて、ふむ、なるほど。確かにノワールは大太刀が合っているみたいだな」


「そうか!だが見た目よりも重たくしてくれ!我に合う大太刀を頼むぞ八雲!!」


八雲はノワールが持ってきた長剣を検分して、3尺(約90cm)と大太刀に見合う剣だと確信する。




大太刀とは―――


「大太刀」とは、刃長が3尺(約90㎝)以上ある大型の太刀のことであり、「野太刀」とも呼ばれており、八雲のいた日本では神社などへ奉納するための太刀だが、騎乗用の武器として実際に戦場でも使用されたと言われている。

戦場で使う場合、従者に鞘を持たせて抜くか、従者に抜かせて主人に渡し、使用していたと言われている。




「ノワール、ジェミオスとヘミオスが戻ってくるまでちょっと待っていてくれ」


「ああ、構わん。別に急ぐような用事も無いしな」


長い黒髪を指でスゥーと櫛のように梳かしながら、相変わらず美しい笑顔を浮かべて、双子姉妹の様子を眺めていた。


「お、お待たせしました/////」


「なかなか思ったのがなくて、ごめ~ん♪」


申し訳なさそうに戻ってきたジェミオスと、悪びれることもなく軽い謝罪で戻って来たヘミオスの二人から、希望の双剣に見合う剣を受け取る八雲。


「大丈夫だ。長さはこのくらいでいいのか?」


ジェミオスが持ってきた剣は直剣型の剣で、長さは2尺(約60cm)ないくらいの長さで、ヘミオスが持ってきたのは、講義の際に話に出たカットラスのような剣で、長さはジェミオスの持ってきた剣と変わらないくらいの長さだった。


八雲の確認に「はい!」と元気よく返事をするジェミオス・ヘミオス姉妹が戻ったことで全員の武器の参考が集まり、八雲は次に移る。


「よっこらしょい!」


掛け声と同時に八雲は『収納』の空間から、13枚の黒神龍の鱗を取り出す。


(う~ん、大太刀に10枚、脇差しに1枚、直剣双剣に1枚、片刃双剣に1枚で全部で13枚……ノワールは普通じゃないから10枚で造って、まぁこれくらいだろう)


ザックリと素材の量を確認して、八雲はまず1枚の鱗から『創造』を開始する。


輝き出した鱗が、徐々にその形を変えていく―――


「おお~!スゲーな兄ちゃん?!これが兄ちゃんの『創造』なんだね♪」


横で見ていたヘミオスが面白そうに瞳をキラキラさせながら、八雲の作業を見つめている。


そうして―――そこには一振りの刀がそこに誕生した。




―――黒の脇差し、銘を金剛(こんごう)


長さ2尺より少し短い脇差しは、夜叉と同じく黒の柄に金の鍔、だが金の模様が入った鞘は、金剛の名に因んで飾られている。刀身は黒くメッキ調の鏡面仕上げに美しい刃紋がはいっており、使いやすい造りとなっている。




「アリエス、持ってみて具合を見てみてくれ」


「はい!……」


アリエスは八雲から黒脇差=金剛を受け取り、鞘から抜いて軽く振り、使い勝手を確かめていく。


「大丈夫です♪ ありがとうございます八雲様。一生大切にしますね♡」


「そこまで喜んでもらえたら、作った甲斐がある」


「あの、『金剛』という銘には、何か由来が?」


「ああ、俺の世界の神様に『金剛夜叉明王こんごうやしゃみょうおう』という神様がいるんだけど、その神様が俺の夜叉の由来になった神様なんだ。鬼神から改心して守護神になった神様で、俺の夜叉に似てるのが良いって言ってたから名前もその神様からもらったんだ」


「そうなんですね……金剛夜叉……八雲様の夜叉と同じ神様のお名前から……とても素敵です♪/////」


八雲の説明に納得したようで、アリエスはご機嫌な様子で、その豊かな胸の間に金剛を抱きしめて顔をほんのりと赤らめていた。


(気に入ってもらえてよかった……しかし、脇差しが胸に挟まれている姿が、ここまでグッとくるとは……)


胸に挟まれた脇差しの姿が卑猥に見える八雲はまた自分の性欲が溜まりだしたことに気がついていた。


(これだけ美女・美少女に囲まれると感覚が狂っちまう……)


八雲は気持ちを引き締め、気合を入れて次の『創造』に入る。


「次はジェミオス・ヘミオスの双剣だ」


「お!やったぁ♪」


「そ、その、ノワール様より先でよろしいのでしょうか?」


ヘミオスは歓喜していたが、ジェミオスは主であるノワールより先でいいのか、不安に思っている様子だった。


「かまわん。我の武器は最後に気合を入れて作ってくれるつもりなんだろう八雲?」


不安顔をしているジェミオスに、ノワールは笑みを浮かべて飄々と答えた。


「ああ、ノワールの大太刀は鱗10枚使って作ろうと思ってるから、先に二人の双剣を造っておこうと思ってな」


「我の武器は10枚か、いいぞ♪ 存分に良い物を造ってくれよ」


「もちろん」と答えた八雲は、再び鱗と向き合って加護『創造』を駆使する。


(さて……ジェミオスは直剣型の双剣、ヘミオスは片刃の双剣か……)


直剣型の双剣は西洋剣の両刃の直剣を、片刃の双剣は同じくらいの長さで、ヘミオスが持ってきたカットラス型の双剣で構造していく―――




―――黒の直双剣、銘を日輪(にちりん)


西洋剣風の両刃の黒い直剣に、金を用いた鍔、白を基調にした柄、そして黒い鞘には太陽を模した蒔絵のような模様を入れた。




―――黒の曲双剣、銘を三日月(みかづき)


カットラス型の黒い曲剣に、銀を用いた鍔、白を基調とした柄、そして黒い鞘には三日月を模した蒔絵のような模様を入れた。




出来上がった双剣を八雲はジェミオスには黒直双剣=日輪、ヘミオスには黒曲双剣=三日月を手渡した。


「はわわわぁ♪ 兄さま、本当にこれを頂いてもよろしいのですか?/////」


「ワァオ~♪ 滅茶苦茶キレイでカッコいいよぉ!!兄ちゃんありがとう♪」


受け取った二人はそれぞれの個性的な喜びの声を上げ、八雲に羨望の眼差しを向けていて、その姿を見た八雲は、


(ホント妹は最高だぜ……イカン、なんかグッとくるぞこれ。無意識に護りたいこの笑顔……)


などと考えて感慨に耽っていたとき、黒神龍様の美声が響いた。


「さあぁ!!次はいよいよ我の番だな!ほれ造れ!今すぐ造れ!もう待てないぃ~!!!」


「―――子供かっ!」


放っておけば床に寝転がって、ジタバタしそうな勢いのノワールにツッコミを入れながら、八雲は用意した10枚の鱗の山に向き合う。


(ノワールの希望は大太刀。長さは3尺(90cm)くらいで造ってみて、合わないなら微調整していくって感じで)


方針が決まった八雲は『創造』を発動、10枚の鱗はひとつになり圧縮され、形を変えていき、やがて細長い姿に纏まっていく。


(おおお!こ、これは今までよりも急激に力が吸われてる感覚が?!龍の鱗10枚で造ろうとすると、ここまで力を使うのか……)


―――ステータスの数値とは別の何か、精神的なものが吸い取られる感覚を感じながら、八雲は自分の思い描いた大太刀を形造ることに集中する。


流動的に形を変え、引き締まるように圧縮されていったその鱗はやがて―――


「はぁはぁ、出来た……」


そこに現れた一振りの大太刀は、神々しい光を放ち―――そこに顕現した。




―――暗黒の大太刀、銘を因陀羅(いんだら)


暗黒と呼ぶに相応しい闇色の刀身は鏡面仕様で怪しく光り、その長さ3尺(90cm)。

黒い柄も刀よりも長く、鍔は夜叉と同じく金拵えで造り、長大な鞘は漆黒の体に流れるような金と銀の線が絡まる模様を蒔絵のように入れた。

10枚の鱗を圧縮しただけあって、その重さも普通の人間には扱えないほどの代物となり、Levelが高い八雲でも重さを感じる。




その黒大太刀=因陀羅を受け取ったノワールは―――


「オオオッ!これが、八雲が我のために造ってくれた大太刀か……うむ、この確かな重さと風格、我が手にする武器に相応しい」


と、ご満悦の表情でウットリしながら因陀羅を見つめていた。


「ハァ、流石に10枚はかなり疲れた……」


「うむ!存分に休め!ところで八雲、因陀羅という銘の由来を聞いてもいいか?」


名前の意味が気になったノワールは、ワクテカした表情で八雲に詰め寄る。


「うん、因陀羅っていうのは、俺の世界の神様なんだけど、雷霆神、天候神、軍神、英雄神と言われていて、天帝、天空の神として神々の中心的な神様の名前だ」


八雲の説明にノワールのみならず、アリエス達からシュティーアの工房のドワーフ達まで聞き入っていた。


「そのような神が……ノワール様に相応しい武器の銘ですね。それに八雲様の世界の神話も興味深い」


と、クレーブスが眼鏡をクイッと上げ直す。


「まぁ俺の世界の話はまた今度、ゆっくりしよう。それより、新しい武器を造ったら―――恒例の試し斬りだろ!」


八雲の声に、ノワールと龍の牙(ドラゴン・ファング)達は黒い笑みを浮かべて、その瞳を怪しく輝かせていた……






―――武器を手に城を皆で出て、鍛練場となったお決まりの平原まで来るとノワールが自分で召喚魔法を発動させた。


「試し斬りは我からいかせてもらうぞ!―――《召喚サモン》!!!」


血気盛んな勢いで《召喚》魔法を発動したことで浮かび上がった魔法陣は、八雲が今まで見てきた魔法陣とはケタ違いに巨大なものだ。


魔法陣から膨大な光が放たれ、ドスンッ!!といった重たい何かの塊が地面に落ちたような地響きが響いた直後、地面から舞い上がった砂煙がモウモウと立ち上る。


―――ゆっくりと収まり始める砂煙。


そこには―――岩山のような巨大な体躯があった。


その巨大なものは、見た目は犀のような姿で、鼻先には曲線を描いた立派な角がそそり立っている。


だが―――その大きさは八雲の世界の知っている犀とは根本的に別物の巨大さだった。


「これは……犀?」


「サイ?なんだそれは?コイツは―――ベヒーモスだ!」


「ベヒーモス……」


足元にいけば見上げる必要があるほどの巨大な魔物に、八雲の空いた口が塞がらない。


「さてと……獲物は召喚したし、あとは―――試し斬りだあぁあ!!!」


叫ぶノワールは両手で柄を握って、長大な黒大太刀=因陀羅を引き抜く。


大太刀は本来、従者が鞘を握って主人が抜くか、従者が抜いた大太刀を主人に渡すのだが、ノワールは空中に何等かの力で固定した鞘からスラリと一気に刀身を抜き去っていて、その鞘は空中に浮いたまま、やがてノワールの『収納』空間に仕舞われた。


(なるほど、鞘の切っ先の方を『収納』に差して固定してから抜いたのか)


その方法ならどんな長剣でも鞘を抜く時の手間がないなと八雲は感心していたが、ノワールはそんなこと構わずベヒーモスに向かって突進していた。


疾走するノワールを目にしたベヒーモスもまた、ノワールに向かって突進を開始するが一歩一歩が大岩を落とすような勢いなので、歩むたびに地面に地響きが起きた。


「アハハハハッ!!―――ヤル気だなベヒーモス!我の因陀羅の試し斬りに相応しいぞ!来い来いっ!!」


喜々とした表情で進攻するノワールと地響きを響かせて近づくベヒーモスが、ついに衝突する瞬間ノワールが肩に担いでいた因陀羅を両手で握り直し、その雄大な暗黒の大太刀を躊躇いなく振り下ろしたのだった―――



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