褐色眼鏡美人教師の講義
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クレーブスによるこの異世界の講義は続く―――
「―――それでは、この世界の経済、と言ってもまずは通貨についてご説明しましょうか」
「通貨?つまりお金か」
「はい。この世界の通貨は共通の通貨が使用されています。ただ物価に関しては国毎に差があります。そして貨幣の種類ですが―――」
クレーブスから聞かされた通貨価値と、八雲の元いた世界の金額感覚をジェミオス・ヘミオス姉妹と話しながら照らし合わせてみると―――
【通貨】
白金貨
形状〇(直径約8cm)=約100,000,000円
大金貨
形状◇(直径約5cm)=約10,000,000円
金貨
形状〇(直径約3cm)=約1,000,000円
大銀貨
形状◇(直径約3cm)=約100,000円
銀貨
形状〇(直径約3cm)=約10,000円
大銅貨
形状◇(直径約3cm)=約1,000円
銅貨
形状〇(直径約3cm)=約100円
―――大銅貨・大銀貨・大金貨は形状が四角形で大金貨は5cm、白金貨は8cmと大きさに差がある。
貨幣価値の感覚は八雲とジェミオス・ヘミオス姉妹の、その貨幣で何が買えるのか?という買える物を擦り合わせることで、概ねの価値を算出した。
一般人では通常生活で使っても金貨まで使うのは滅多にないとのことで、街中の流通ではほぼ銅貨・銀貨で商売は成り立っており、金貨以上となると大きな買い物をするか、それこそ商人や貴族・王族くらいしか使用することはないとのことだった。
因みに、貨幣価値のすり合わせはどんな状況だったかと言うと、
「ヘミオス、さっき言ってたパンケーキっていくら?」
「トッピング込みで銅貨5枚!あ、でもお店によっては6枚とかもあるかな」
「なるほど……銅貨は100円と」
―――といった具合に、それじゃ家は?貴族の屋敷は?といった感じでどんどん物を高そうな物に変えて算出した。
「さて、今日の座学はこのくらいにして、次は魔法・魔術の講義に移りましょうか」
そこからクレーブスは次の講義に移っていくのだった―――
―――通貨の話までで今日の座学は終了し、次は外に出ての魔術の講義へと移ることになり八雲とクレーブス、それとジェミオス・ヘミオス姉妹も城から出て広い場所まで移動してきていた。
「まずはこれを見て下さい」
そう言って指を空中に向けた先に、投影魔術が発動して―――
―――そこには属性の関係性についてが簡単に説明されていた。
「属性には相性があります。火は風に強く、風は土に強く、土は水に強く、水は火に強い。そういった相性を頭に入れて、もしも対峙する敵がいずれかの属性魔術を使用してきた場合、その属性に対して強い属性を使用して攻めるのが基本的な魔術戦闘となります」
「なるほど……」
「そして光属性と闇属性は他の属性よりも上位属性ですが、光と闇と双方で対極関係にあり、その属性がぶつかる場合は魔力量の大小で優劣が決まります」
「それは他の属性ではどうなんだ?」
「はい、例えば水属性で火属性の相手に攻撃した場合、相性からすれば水属性の方が有利ですが、火属性の相手の魔力が強大であった場合は、相手を撃ち倒すことも当然あります。最終的にはやはり魔力量がものを言います」
「そうか……因みに俺の魔力量って?」
そう問い掛けるとクレーブスはニッコリと眩しい笑顔を浮かべて―――
「―――もちろん人類最強クラスです♪」
現在のLevelからして理解できなくはないが他人にアッサリと言われると八雲自身にも、ぐっと現実味が湧いて来た。
「あと神の加護の中に『創造物への付与能力』ていうのがあるんだけど、これってどう使えばいいかわかるか?」
「創造物への付与、ですか……それはおそらく魔術付与のことでしょう。武器や防具に魔術属性を付与することで、さきほど説明した相手の苦手な属性で攻めたり、逆に相手の属性に対して強い属性で防御を固めたりする魔術のひとつです。八雲様の場合は自身で造った武器や防具ならその魔術付与が使えるということでしょう。ではそれを試しましょうか」
「わかった。やってみる」
『収納』にしまっていた黒刀=夜叉を開いた空間から取り出すと、隣で見ていたジェミオス・ヘミオス姉妹から「はわぁ~」「おお~」、と夜叉に注目して可愛い声をあげていた。
その夜叉を手に取ってスラリと鞘から抜き放つと―――
「―――魔術付与」
火属性の魔術付与をイメージして八雲は手にした夜叉に込めてみると、刃紋に赤い炎が走ったかと思うと炎の剣と言っても過言ではない夜叉が完成する。
「ふわぁ~!スゲー!兄ちゃん兄ちゃん!その剣て兄ちゃんが造ったの?変わった形してるよねぇ~!シニストラ帝国の『サーベル』やソプラやゾット列島の『カットラス』にも似てるね!片刃だしさ!」
ヘミオスは興奮気味に八雲に話しかけてきて、瞳をキラキラ輝かせている。
「あ、アンゴロ大陸の剣の方が似てるんじゃないかな?同じような片刃だし、細さもけっこう似てるよ?」
ジェミオスも自分の記憶から、刀に近い武器について語ってくれた。
北部のシニストラ帝国の屈強な軍隊ではサーベルが常備帯剣として採用されている。
ソプラ諸島連合国とゾット列島国の海の男達は、昔から伝統的な武器としてカットラスを用いている。
アンゴロ大陸にも刀に似た剣があり、武士という職業が存在し、武士以上の立場の者は皆その刀の様な剣を持っているという。
八雲は、この世界にも色々な武器があるということを知ったことと、そんな離れた国のことをよくここまで知っているジェミオス・ヘミオス姉妹に改めて驚いていた。
「では、その魔術付与した武器の威力を直接体感して頂きましょうか―――《召喚》」
クレーブスは魔術付与の威力を八雲に確認してもらうために、召喚魔術を使用して魔物を召喚する。
そこに召喚されたのは―――巨大な石でできた身体で人型の魔物であるゴーレム三体だった。
「八雲様、このゴーレムを相手にその効果を確認してみて下さい」
「ああ、わかった。危ないから少し下がっててくれ」
八雲の指示にクレーブスとジェミオスも下がるが、ヘミオスは近くで眺めているのを見て、
「ヘミオス危ないぞ」
「平気平気♪ これでも序列入りしてるんだよ?心配しなくていいから、兄ちゃんやっちゃいなよ♪」
これが普通の中学生なら頭を叩いてでも下がらせるところだが、ここは異世界、相手は小さくても龍の牙と考えたら、八雲もアッサリと納得することにした。
「それじゃ―――推して参る!」
そう掛け声するや否や、八雲は高速の動きで目の前の三体のゴーレムに突進していく。
―――するとゴーレム自体の動きは八雲からしてみれば、とても鈍重で、接近する八雲への対応はスローモーションのようであり、一体目が振り上げた腕を振り下ろす前に胴が夜叉で斬りつけられて、その傷口から噴き出すように炎が上がり、石の身体は赤色化して一部溶解が始まっていた。
(思った以上に抵抗がなかったな。熱したナイフでバターを斬るみたいな感覚だ)
そう思いながら二体目のゴーレムには両腕を切り落とす勢いで連撃を仕掛けて斬りかかり、その両腕は地面にドスン!と落下し、そのまま八雲はゴーレムの頭の高さまで飛び上がると、頭頂部から真っ直ぐに夜叉を振り下ろしてゴーレムを真二つに両断する―――
―――着地直後、三体目のゴーレムが接近してきているのを感知していた八雲は腰を低く、しゃがんだまま振り返りつつゴーレムの両脚を斬りつけ切断すると、下半身が不安定になったゴーレムは前のめりに倒れ始めて、そこから八雲は逆に身体を立たせる形で、ゴーレムの腕を躱しながら脇をすり抜け際に、脇腹を斬りつけて通り抜ける。
脇腹を斬り抜かれたゴーレムはそのまま地面に倒れ込み、動かなくなった―――
夜叉を振り払い、刀身に纏った炎を振り払うと、スッと夜叉を鞘に収めた。
硬い石の身体を斬りつけたが、何の抵抗も感じず斬り裂けたことに当の八雲も魔術付与の威力に驚いていた。
(これも敵の属性や相性を考えて立ち回らないと不利有利があるな……)
八雲が戦闘分析を冷静に行っていると、ジェミオス・ヘミオス姉妹が近づいてくる。
「スゴイや兄ちゃん!スパスパッ!て斬れてたねぇ♪」
「さすがお見事です兄さま/////」
ジェミオス・ヘミオス姉妹に褒めちぎられて少し照れ臭い八雲だったが、その場にしゃがんで倒したゴーレムの切断面を検証する。
「おお……なんだか鏡みたいにツルツルの斬り口だねぇ♪ ほら僕の顔が写ってるよ!」
「思った以上に斬れ味が上がった、と言うより『溶かして斬った』っていうのが正解かもな。魔術付与の上乗せ攻撃力が予想以上でビックリだ」
そこにクレーブスもやってきて、同じくゴーレムの切断面を見て、
「どうやら魔術付与に関してはご理解頂けたみたいですね。それでは今日の講義はここまでと致しましょうか。このあとノワール様とアリエスの武器をお造りに行かれるのでしょう?」
「ああ、昨日約束したからな」
昨日、講義のあとにノワールには大太刀を、アリエスには脇差しを造ることを約束していたので、シュティーアの工房に向かおうかというところで、
「ええ?!ノワール様とアリエスの武器を造るの?!良いな良いなぁ~!僕も造ってほしい!!」
「ちょ、ちょっとヘミオス!ダメだよ!兄さまにそんなお願いしたら―――」
「―――別にいいぞ。二人はどんな武器がいいんだ?得意な武器とかあるか?」
「エエエッ?!い、良いんですか?/////」
「さすが兄ちゃん♪ わかってるねぇ~!」
八雲の即答にジェミオス・ヘミオス姉妹は花が咲いたような笑顔になっていた。
(なんだか、本当に妹ができたみたいだな)
八雲はそんな二人を見て、自分も同じく笑顔を浮かべていた。
「僕ね!僕ね!双剣が好きなんだぁ♪」
「わ、私も……双剣が得意です/////」
さすがは双子と言うべきか、得意な武器も一緒と聞いた八雲は妙に納得した。
「それじゃ工房に行くか」
そうして八雲達は城に向かって歩みを進めるのだった―――
―――クレーブスの講義を終えてシュティーアの工房にやってくると、すでにノワールとアリエスが待ち構えていた。
「遅いぞ八雲!我を待たせるとは―――」
「―――ああ、はいはい、待たせてゴメンねぇ~あと期待してくれてありがとねぇ~」
「グヌヌッ!/////」
食い気味に丁寧な謝罪と感謝の気持ちを返事すると、ノワールは顔を真っ赤にして唸っていた。
(てか、グヌヌッていうヤツ初めて会ったわ……)
そうツッコミたかったが、余計にノワールがヘソを曲げても面倒なので、八雲は黙っていることにした。
「それで、ジェミオス・ヘミオスの二人も一緒に来たのですね」
「あ、僕達も兄ちゃんに武器造ってもらうんだぁ♪」
「兄さまが一緒に造っていいよと仰って下さいまして/////」
「兄ちゃん!?兄さま?!」
二人の話に「兄ちゃん」と「兄さま」というキーワードに反応するノワールとアリエスの顔が、一瞬でジト目に変わって八雲に突き刺さる。
(オゥ……何この視線、俺死ぬの?)
八雲が青い顔をしだしたところで、工房の奥からシュティーアが顔を出して現状の状況に思わず、ん?と首を傾げていた。
それから八雲は武器の創造について、参考になる武器を探してきて欲しいことを皆に伝える。
「さてと、それじゃ始めるか!ノワールは大太刀、アリエスには脇差し、それにジェミオス・ヘミオスには双剣だな。それじゃ工房にある武器で長さとか重さが似通った武器を持ってきてくれるか?イメージしやすいから」
そう言われた武器希望者達は、元気に返事をしながら工房に置かれた武器の山に、一斉に駆け出していった。
「怪我すんなよ!」
走り出した背中に声をかけながら、八雲も皆の武器についてイメージを始めた―――
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