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4.勇者、入学試験を受ける

 あっという間に入学試験当日。

「予想通り貴族ばっかだな」

 右を見ても左を見ても貴族ばかり、この状況にアルトは若干の面倒くささを感じました。

「まずは使える魔法の属性を見せてもらう。名前を呼ばれた者から目の前の的に魔法を放て」

 殆どの貴族は1属性の魔法しか使えず、2つの属性の魔法が使えるものが現れたら歓声が上がり、試験官も見込みありといった表情をしている。

「よし、次は……あーアルト。お前の番だ、早くしろ」

 アルトの番になった途端、試験官のやる気が著しく下がったのだ。

 まるで平民の試験になんて興味がないと言わんばかりの態度であった。

「道具の使用は許可されてるよな」

「ああ、見といてやるから勝手にしろ」

 だるそうな返事と共に、アルトが道具と言った瞬間試験官はアルトの事を鼻で笑った。

 こんな平民風情が出せる道具などたかが知れてると思ったのだ。

「じゃ、好きにやらせてもらいますよ」

 まず、アルトは赤い印のついた煙草に火をつけます。

「フレイム」

 ユリウスに使ったフレイムと同等の威力の物を放ち、的にぶつける。

 的はフレイムによって粉々に砕け散った。この試験で誰もなし得なかった"的壊し"を成し遂げたのだ。

 その様子を見て、試験官は持っていたペンを落としてしまうほどに動揺をしてしまう。

「まだまだ…」

 すかさず、青色の印のついた煙草に火をつけ咥える。

「コールドスフィア」

 手から再び魔法陣を展開させる。

 すると、的の付近に大量の冷気が漂い次第に的に冷気が集まっていく。

 アルトが指を鳴らした瞬間、的が一気に氷塊の中に閉じ込められました。

「み、水属性の上位魔法の氷属性……!」

 アルトは手を緩めない。

 次は緑色の印のついた煙草に火をつける。

「ウインドエッジ」

 魔法陣から風の刃が出現し、それを的に投げつける。刃は高速回転しながら的を綺麗に射抜く。

 この時から試験官は、夢でも見ているかのように目をぱちぱちとしながら、アルトの実演をじっと見ていました。

「さぁ次はこれだ…」

 黄色の印のついた煙草に火をつけ、体に属性回路をふんだんに吸収させる。

 普通なら体に害のないこの煙草だが、雷の印の煙草だけ、少々体に負荷をかけてしまうのだ。

「サンダーボルト!」

 詠唱の直後、アルトの体が帯電を起こしバチバチと電気を発生させたのだ。

 その電気を使い、手から電気を放ちまたしても的を破壊する。

「あとはこれに加えて聖属性の魔法が使える。以上だ、平民風情が時間を取らせて悪かった。さっさと次のすごい貴族の魔法を見てあげてくれ」

 これでもかと言うほどの皮肉を残し、アルトは次の試験会場に向かった。

「く、クインテット・マジシャン……」

 そう言い残し、試験官は泡を吹いて倒れてしまった。

 その影響でアルト以降の試験は一旦中止となり、さらにアルトは貴族から恨みを買ってしまったことを、アルトはまだ知らない。






 次は魔力量の測定であったが、自身の魔力量を測る水晶がアルトが触れた瞬間に砕け散り、魔力量満点という数値ですらない評価を受けることになる。

 これにて1次試験が終了し、次の日の戦闘試験で最後となる。

 戦闘試験とは、1VS1の試験でお互いが気絶するか戦闘続行不可能になるまでおこなわれるという、貴族が参加するのには些か物騒すぎる試験である。

 しかし、勇者を目指すのならばこれくらいはできなくては困る、という学校側の意向により執り行われている。

 死人などは出ないものの、毎年かなりの怪我人が出る試験だが、観客がいるという変わった試験でもあり、人気は高いのである。





 戦闘試験にて、アルトは対戦相手の使う魔法と全く同じ物で威力を倍以上に上げた物で打ち消し、戦意をなくさせてギブアップをさせて1回目を、相手の足を凍りつかせて、足を粉々にされるかギブアップするか、という悪魔のような選択肢で相手をギブアップさせて2回目の戦闘試験を終わらせている。

 戦闘試験は勝ち負けに問わず、3回行う事が義務付けられている。

 アルトは残り1回やれば晴れて試験終了である。

「おい、平民!次の相手はこの俺だ!」

 アルトの前に意気揚々と現れたのは、先日アルトのことをバカにした貴族であった。

「ああ、あの時のバカか。こりゃ最終戦も勝ちか」

 あの時の仕返しとして、相手の顔もみずまるで興味などありはしないと言う風に、対戦カードを眺める。

「俺の事をバカにしたことを後悔させてやるからな!」

 そのままフィールドに向かい、アルトも面倒くさそうにフィールドに向かった。

「試合開始!」

 合図と共に貴族は魔法陣を展開する。

 ほかの貴族と違い、魔法陣の展開スピードは頭1つ抜けているようであった。

「フラッド!!」

 魔法陣から大量の水が現れ、それが津波となってアルトを襲ったのだ。

 試験生において、これほどの魔法を使えるのはアルトを除けばほんのひと握りしか居ない。しかし、相手が絶望的に悪かったのだ。

「アイスフラッシュ」

 その一声で、津波も魔法を放った貴族自身も凍りついてしまった。

 前回の的のような氷塊の中に閉じ込めたのではなく、完全に凍りつかせたのだ。

「お前だろ、俺の先生の悪口を試験生達に言って回ってたのは」

 アルトは凍った津波を粉々に粉砕し、凍りついた貴族の元へゆっくりと近づいていく。

 アルトはこの試験中に何回も"極悪魔女の弟子"という単語を、試験生の口から聞いていた。

 そして、その悪口を言って回っていたのがこの貴族であることも突き止めていた。

 だからこそ対戦カードが当たった時、興味の無い風を装ってはいたが、内心は喜んでいたのだ。

 このクズを殺れるチャンスであったからだ。

「この学校にはどんな怪我でも、死んでさえいなければ治してくれる先生がいるらしい。その先生に感謝をしろよ。今からお前の体を治してくれるんだからな」

 そう言ってアルトは、貴族の腕を躊躇なくへし折りました。

 凍りついているので折るというより、割れるという感覚に近かった。

 会場からは悲鳴が起こり、軽いパニックが起きる。

「オイ審判、利き腕へし折ったから戦闘続行不可能だろ。判定出してさっさと医務室に連れていった方がいいんじゃないか?」

「え!?あ、ああ!勝者アルト!!」

 判定後すぐに担架で貴族は運ばれて行った。

 この事件により、アルトは"貴族殺し"という不名誉な二つ名で、貴族から呼ばれるようになる。








 試験は当然合格であり、特進クラスの首席合格という扱いになり、新入生代表のトップ成績で入学することになる。

 入学式はそつなく終わり、いよいよ学校生活が始まる。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

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