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002 ステータスより現実

 


 湯入(ゆいり) 湯良(ゆら) 6歳

 ユニークスキル【お風呂】

 スキル【生活魔法】【時空魔法】【付与魔法】【鑑定】【農業】【酒造】

 加護【トヨウケヒメの努力】

 称号【お風呂大好き】


 これが現在の僕の簡易的なステータス。

 本格的に表示させるとレベルや使える魔法の詳細まで出てきちゃうから、なにか新しいスキルが増えた時、自分でさっくり確認するときはこう表示させた方が見やすいと女神さまにおすすめされた。

 実にゲーム的だ。


 そのゲーム的なのがこの世界〈ワイズ〉。

 人にはそれぞれスキルがあり、それを自分でみることが出来る。

 生活していけば他にもスキルが増えるらしいよ。



「わし、こういうのは専門外なんじゃがのう……」


 と言いながら僕の異世界転生用の体をつくりながら話してくれた。

 女神さまからの説明によると、ユニークスキルとはこの世界ではたまにある〈神からの大恩恵〉と言われる特別なスキルらしい。

 このユニークスキルだけは滅多なことでは他人は見ることが出来ない。

 でも普通に他人のスキルを覗けるスキルや装置があるから気をつけろとも言われたっけ。


 名前は元の世界のものをそのまま使わせてもらう。

 次の人生でもお風呂に困らなそうっていうゲン担ぎの意味で。

 年齢は平民の子ならこのくらいの年齢から自立するって教えられたからじゃあそれで、とお願いした。


 ユニークスキルの【お風呂】は、今はレベル1だけど、使っているうちにレベルが上がる。

 レベルが上がると【お風呂】のバリエーションや使えるスキルが増える。

 今のレベル1の状態では浴槽を出してお湯をそこに溜めることが出来る。

 レベル次第でアメニティーや温泉なんかも出すことが出来るみたいなので、積極的にレベルを上げる所存だ。


 次にスキルの【生活魔法】は、この世界の人の約半数は使える一般的な魔法のようだ。マストでつけてもらった。


 で、【時空魔法】は自分がゴネたので女神様が渋々つけてくれたやつ。

 今まで買いためた入浴グッズはどうしてくれるんだとか、少ないながらの貯蓄はとかブツブツ言ってたら、


「ええい! しちめんどうくさいわ! こうしてくれる!」


 とか言いながら【時空魔法】を使えるようにしてくれて、その中の魔法のひとつに【空間収納】という、いわゆるアイテムボックス的なスキルがあり、そこに自分が所持する現金・預金、家財一式を突っ込んでくれた。

 この【時空魔法】にもレベルが存在し、レベルが上がるごとに使える魔法が増えるようだ。


 それから【付与魔法】【鑑定】【農業】【酒造】は女神様の特性なので強制的につけられた。

 というか、くしゃみで出た神気が魂にまで浸食していたようで、この様な結果になったとよくわからない説明をされた。


 そして加護。【トヨウケヒメの努力】は自分……湯入由良の異世界用の体をつくったり、女神様の専門外のスキルを授けたりと言う思考錯誤の結果、これが付いてしまった。普通の加護がよかったなと思わなくもない。努力って、加護じゃなくて過程だと思うんだ……。

 それにしてもあの和装美少女女神、トヨウケヒメっていうんだね。


 で、その女神様が思考錯誤して作ってくれたこの体。

 神様謹製なのでかなりのスペックを有している。

 各種耐性や能力向上もあるみたいで、前みたいに簡単には死なないようにしてある、と笑顔で言われた。

 一抹の不安を覚えたのは言うまでもない。


 この世界は女神様の知り合いの世界だと言っていた。

 女神様も地球での湯入湯良の死を隠蔽出来るし、知り合いの神様も他の世界からの文化を取り入れることが出来そうだからと喜んでいた、と最後にぶっちゃけていた。

 ちょっとクレームを言おうとしたら「ではのー。達者で暮らせよ~」とさっさと追い出すように自分を異世界に転送してしまった。



 現状の簡単な説明はこんなものだ。


 さて、これからどうするか。


「おい、お前。大丈夫かよ」


 ビクっとする。

 後ろから声をかけられた。


「あ……」


 振りかえると、想像とあまり変わらない冒険者の出で立ちの若者が数人。男女2人ずつ。きちんと加工された防具をつけているのでそれなりに稼げている冒険者だろう。


 それと、気付けばゴブリンは地面に転がっていた。

 頭と体が離れている状態で。


 それを見て、一気に血の気が引いた。

 それからの記憶は無い。



 ◇


「ああっ!?」


 子供がゴブリンに襲われていて、声をかけつつゴブリンを倒したら子供が泡吹いて倒れた。


 ゴブリンに殺されたとか?

 いや、まさかな。


「ちょっと、ブラン! 子供まで殺しちゃったの!?」


 ブランとは俺の事。

 俺に声をかけたのは弓術士リゼ。

 リゼの声に驚く重戦士のライオと魔女のチェルシー。

 ちなみに俺は剣士だ。

 俺達4人は幼馴染で、〈黎明の疾風〉というCランクの冒険者パーティーを組んでいる。

 そんなみんなの視線を一斉に集めてしまったが、俺は殺してない。


「無実だ!」


 と叫びつつもちょっと不安になって子供を抱き起こし、声をかけるも意識が無い。


「ちぇ、チェルシー……」


 自分でも情けない声が出たなと思いながらも魔女のチェルシーに助けてほしいと目で縋る。


 するとチェルシーは舌打ちしつつもすぐにこちらに来てくれた。


「どけ、外道が」


 口は悪いが、速やかに子供を優しく丁寧に診てくれるいいヤツだって俺は知ってるぞ。


 しばらくして、チェルシーがほっと一息つくと、その様子をみて俺達も一安心。


「しかし、何故こんなところにこんな子供が?」


 冷静になれたところでライオが疑問を口にする。

 たしかにそうだな。

 ここから王都は見えるが半日は歩く距離だ。

 見れば子供は何も持っていない。それになぜか服も靴も見なれないデザインでその素材も上等なもの。

 倒れたことで多少土や砂は突いてしまっているが、それ以外に汚れもほつれも当て布も確認できない。

 つまり新品だ。こんなのを着られるということは豪商の子かそれとも……


「どう、する?」


 とみんなにお伺いをたててみる。


「バカなの? こんなところに意識の無い子供を置いて行くとかサイテーなこと考えてるとかマジ引くわ」


「考えるまでもなく町まで連れて行き兵に任せるべき」


 女性組は基本俺に厳しい。それなのにパーティーリーダーを押しつけてくるあたり謎なんだよな。


 子供はチェルシーが背負うことに。

 俺が先頭を歩き、ライオがチェルシーと子供をガード、リゼは後ろから警戒だ。


 子供の事もあるので俺達はいつも以上に急いで王都に向かう。

 門で事情も説明しなきゃならんし、今日の稼ぎはゼロだし、……いや、さっきのゴブリンの小さな魔石1つか。


 はー。

 せめて子供が無事でよかったと思うかな。

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