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ミリタリークエスト  作者: トマホーク
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第1話・運命の邂逅

あらすじにも書いてありますが、勿体ない精神での投稿です

まるで火星の地表の様に赤茶けた岩と砂しかない起伏の激しい荒野の中を1台のバイクが風を切り裂きながら疾走していた。


サイドカー付きのそのバイクはパートタイム二輪駆動構造によってサイドカー側のタイヤさえも駆動させる事で底上げした不整地走破性能を発揮し、凹凸の激しいでこぼこの道なき道なきを軽々と走破していく。


「ん?こんな所に洞窟が」


バイクのドライバーが洞窟の存在に気が付きブレーキレバーを握ると駆動するタイヤがズザザザッっと地面を擦りながら勢いを殺していく。


「うわ、砂まみれだ……」


停車の際に巻き上げられた砂塵から顔を守った薄汚れたゴーグルと灰色のスカーフを一先ず外し体を叩きながら発見した洞窟を眺める人物。


彼はマルティネスという辺境の街の近くで父と2人で暮らす黒髪黒眼の冴えない風貌の壮年──カズマ・ロングゲートであった。


「よし、今日はこの洞窟を調べてみるか。何か使えそうな物があればいいんだけどな……」


今日も今日とて日々の糧を得るべく過去の遺物の探索に出向いていたカズマは探索場所を発見した洞窟に定めると第二次世界大戦時にBMWが製造しドイツ軍が使用した事で知られているサイドカー付きオートバイ──R75を近場の岩影に停車させる。


所々に錆が浮かぶキーが捻られると、それまでは勇ましい唸り声を上げていたエンジンが途端に鳴りを潜めていく。


エンジンが静かになったのを確認したカズマは降車し、強奪を防ぐ為に擬装ネットを展開する。


そしてバイクの安全を確保した後、運転時の疲労を解消するようにうーんと背を伸ばした。


ちなみにカズマが乗るオートバイは以前、泥炭層の地中に埋没していた所をカズマが見つけて掘り出し、機械の修理に詳しい父の助けを借りてレストア(劣化したり故障したりした機械を修理して復活させる事)した車両である。


「けど、この前みたいにヘルハウンドの群れが襲ってくるとかないよな?まぁ、あれはあれで稼ぎになるからいいんだが」


以前の苦い記憶を思い出しつつカズマはゴーグルとスカーフを顔から外し、サイドカーに乗せてあった幾つかの必要と思われる道具を手に取っていく。


どれもこれも使い古された道具達を選別し終わると、今度は1935年の6月にドイツ軍に制式採用されたボルトアクション式小銃であるKarabiner 98 Kurzを手に取った。


これもR75同様に泥炭層の地中から発掘された過去の遺物である。


第二次世界大戦を通じてドイツ国防軍や武装親衛隊などの主力小銃として運用されドイツ以外の国でも広く使用されたほか、第二次世界大戦後もドイツを始めとする各国で使用され続けた傑作軍用小銃。


それを手慣れた手付きで扱い、ボルトを引いてからクリップ(銃火器に複数個の弾薬を1度に装填する際に用いる器具)で5発一組になった7.92x57mmモーゼル弾をレシーバー内部にある固定式弾倉に装填。


最後にボルトを押し込み初弾を薬室に送る。


「ま、なるようになりますか」


装填完了の合図であるジャキンッという勇ましい音で気合いを入れ、カズマはKar98kを構えつつ目の前の洞窟へと足を踏み入れた。


「うーん。魔物も居ないが鉄屑1つも無い。こりゃ……望み薄だな」


頭に被ったM35スチールヘルメットに無理やりくくり付けたライトで進む先を照らして暗闇に包まれた洞窟の内部を歩いていくカズマはいくら探索しようとも砂と岩しかない広々とした洞窟に落胆のため息を漏らす。


「──行き止まり。はぁ……結局、何も居ないし何もないな。……またボウズか」


曲がりくねった迷路のような洞窟の内部を進み、最深部の開けた空洞で進むべき道を失ったカズマは落胆を隠しきれず立ち尽くした。


「うーん。従軍していた時の貯金も底を尽きかけてきたってのにこのままじゃ無一文になっちまう……」


貯蓄の残高が芳しくないことを嘆きつつ、カズマが手ぶらのまま帰ろうと踵を返した時であった。


「ッ!?──うわああああああああああああああああっ!?」


突然ピシッと小さな亀裂が足元の地面に走ったかと思うと、一瞬のうちにビキビキビキッと亀裂が拡大し地面が崩落。


カズマは大口を開ける穴の底へ重力に引かれるまま落ちて行ったのだった。


「──……ッ……ッ、イタタタ……うわっ、結構な高さから落ちたな」


落下の衝撃で意識を失っていたカズマは額に落ちてくる水滴の微かな衝撃と冷たさで目を覚ます。


「まぁ、大きな怪我が無くて良かった」


自分の体に異常が無いことを確かめ起き上がったカズマはそこでようやくあることに気が付く。


「って、なんだここ……もしかして大当たり?」


それは遥か昔に存在したとされる高度文明時代に建造され、時の流れに耐えきれなくなった事で崩壊したと思われる建物の中に自分が居るという事。


つまり、探し求めている過去の遺物が眠っている可能性が高い場所を見つけたのだ。


「災い転じて福と成す、だな。……イテテ。とりあえず目ぼしい物を探そう」


洞窟の地下に高度文明時代の建物があったという事に驚きつつも目ぼしい物がないかどうか、カズマは辺りの探索を開始する。


それからおよそ30分経った頃。


カズマは部屋の一番奥、瓦礫に埋もれていた生体ポッドを発見する事に成功した。


「こんなモノが……しかも、保存機能が失われていない?」


見つけた生体ポッドは長い年月を瓦礫に埋まって過ごしていたであろうにも関わらず、未だにその機能を失っていなかった。最も元は透明であったであろうガラス部分の表面は傷と経年劣化によって真っ白になってはいたが。


余程大事な物がこの中にあるんだな……よし、開けてみるか。


好奇心に突き動かされ、カズマは1時間掛けて生体ポッド周辺の瓦礫を撤去。


そして、父から教えてもらった古代言語──日本語という言語を解読しながら生体ポッドの開封に挑む。


「よし、開いた──ッ!?……こ、これって人間とかエルフの死体じゃないよな」


汗だくになりながら生体ポッドと格闘していたカズマは作業開始から1時間後、ようやく生体ポッドの扉を開く事に成功する。


ただ成功したと言っても古代言語の解読に失敗したがために、予備の7.92x57mmモーゼル弾から取り出した火薬を爆薬代わりに使い小規模な爆発で扉を歪ませてから強引に抉じ開けたのだから成功という表現が正確であるかどうかは議論の余地がある所であった。


「死体じゃないな……ってことは……やっぱり、うなじに接続端子がある。なら自動人形か」


生体ポッドの中に入っていたのは高度文明を誇った前時代の技術力を象徴する遺物──精巧に作られた女性型の自動人形(オートマタ)


「女性タイプの自動人形自体が珍しいが……それにしても、ずいぶんと綺麗で精密な造りの自動人形だな。端から見たら人間と変わらないぞ」


自分が見つけた自動人形が今現在、主に使われている自動人形──骨格や基部が剥き出しになっているような安っぽいそれとは一線を格したクオリティを誇っている事にカズマは驚いていた。


彼女の長い黒髪は生体ポッドの中を満たしていた薬液でしっとりと濡れ艶やかな光沢を放ち、珠のような肌はカズマが被るヘルメットに付けられたライトに照らされてその白さを際立たせている。


胸やお尻も出る所は出て、顔の造形もカズマが一度だけ目にしたことのあるエルフに軽く勝るもので、まさに女神というべきモノであった。


それほどまでに完成された姿形と美貌を誇るが故に発見した当初、カズマが自動人形であると思わずに人間かエルフの死体かと誤認しかけたのも無理は無かった。


「これだけ綺麗に保存されていたら、この場で動いたりしないかな?」


珍しい物を手に入れムクムクと沸き上がる好奇心に負け彼女を起動させるべくカズマは起動方法を模索する。


だが、つい先程古代言語の解読に失敗している事を鑑みると望みは限りなく薄かった。


「んん?ん〜……ん?はぁ……手持ちの簡単な機械だけじゃあ、起動出来ないみたいだな」


案の定、カズマは彼女を目覚めさせる起動方法が分からず、すぐに根を上げる事となった。


5分ほどで起動するかどうかを諦めたのは自身の手に負えないと理解したのか、はたまた起動方法の模索に疲れたのか。それはカズマだけが知るのであった。


「まぁ、とにかく持って帰るか……ウチの親父なら起動させることも出来るだろ。というか起動出来なくてもこの容姿だ。ガワだけでも好事家に高く売れる」


厄介な事は父に押し付ける気満々のカズマは望外の品を回収出来た事に頬を弛ませながら帰路へとついたのだった。

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