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4話め 漆黒の少女

体調が悪いながらも投稿です...

修正と追加分です...

でゎ、お休みなさい。

湿った空気が支配する薄暗い森の中を一人の少年が走っていた。

「―――――――くそっ! 何でこんな目に・・・・・・」

などと、悪態をつきながらも皇 クロナは走ることを止めなかった。


黒い巨大な獣。

自動車の二倍近くあるであろうか先ほどの咆哮の持ち主が、追いかけてくるのを止めないからである。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――









―――――――――もうかれこれ、何キロ走ったのだろうか。

巨大な獣の走る速度は、こちらより上だったが樹を縫うように進むことでなんとか振り切れていた。


しかし日常でさえ、こんなに走ることのなかったのに大樹や木の枝などの障害物、ぬかるむ足場。

そして、この終わりのない持久走。

精神的にも体力的にも相当参ってきた。


しかし、ここで足を止めてしまえばすぐさま獣の餌食になってしまうだろう。


「―――――――ハァ……ハァ……ぐっ 」

汗と涙でぐしょぐしょになりながらも走り続けると村でもあるのだろうか煙が上がっている。

――――――次第に開墾されたのだろうか少しずつ木々が少なくなってきていた。


走る速度を落とさずにクロナ振り返る。

と、クロナは走る速度を落とし足を止めた。

いつの間にか、あとを追ってきていた巨大な獣がいなくなっていたからだ。


「く、くっそ・・・・・やっと撒いたか」


クロナは、その場でペタンと座り込みたい衝動に駆られたが、撒いたとはいえ人気のない場所は危険だと判断し煙の出所へと向かおうと考えた。




――――――――――刹那、突然目の前に現れた二つの紅い双眼に体が硬直する。


薄暗くなった森の中に灯りの一つもなかったため、気付かなかったのだ。


漆黒の毛並みに巨大な体躯。見た目はゴリラに近いが、頭部にはヤギのような角を生やし尖った爪を持つ獣が眼前に迫ってきている。


クロナは半ば放心しながらも、このまま後ろにぶっ倒れて死んだ振りをするかぁと半分以上本気で考えた。


「今度、どうか起きたときには獣が去っていますように・・・・・」


「退け。邪魔だ」


え? とクロナ思った瞬間、横を何かが駆け抜けていった。


「!?」


何が起きているのか理解できないクロナの前で、まるで獣から守るようにクロナの前に立ち塞がった。


体は細く身長も低く、声からして歳も恐らくクロナより下の十四、十五だろうか。


風によって棚引く髪。

そして、特徴的なのは闇さえ飲み込んでしまいそうな漆黒の色か・・・・・・



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「何をしている。 さっさと逃げろ」

呆然としている少年にチッ、と忌々しそうに舌打ちをすると漆黒の獣に向かって走る。


ガキッ!! という硬いものと硬いものが交差する音が辺りに轟いた。


迫り来る獣を正面から真っ二つにしようとする一撃。


それが、剛角により防がれたと確認すると体を回転するように刃を引き抜き紅い眼へと突き刺す。


「オッ、グォォおおおおおおおお」

獣が叫び、拳を握りのた打ち回りながらも、刀身を掴み少女の動きを封じる。


眼を潰されても逃げずに居るのは、このような状況に慣れている者か相手との力量の差がわからず自ら死に赴く愚かな獣だ。


だが、こいつの場合は前者だろう。明らかに戦い慣れしている。


逃げると言うことをプライドが許さないのであろう。


相手もこちらが一筋縄で済む相手ではないと悟ったのか、こちらの攻撃を避けずにただひたすらに攻撃をしてくる。








チッ、と少女は忌々しそうに舌打ちをした。

しかし、彼女は眼前の攻撃をしてくる獣に毒づいたのではない。


――――――――――少女はその後ろに呆然と座り込んでいる少年を気にかけながら戦っていた。


早く逃げろと言ったのに逃げてくれない。

今は、こいつ()がこちらに注意を向けているがいつ少年のほうに向かうかわからないからだ。


「早く止めを刺さなければ」

少女はボソッ、と呟くと更に大剣を強く握り締め力任せに肉薄していく。


無理やり引き抜いた一撃のため、腕がミシミシと悲鳴を上げているが無視した。


刹那、突然漆黒の獣が辺りを響かせるほどの咆哮をあげる。


少女は、突然の咆哮に反射的に耳を塞いでしまった。

「――――――し・・・まっ・・・・・・た・・・・」


獣は巨木のような腕を横へ薙ぎ払う。

少女は、とっさに身をかがめて避けようとしたが、

ゴッ!! と重い一撃が、少女の体に直撃した。


少女は力任せの一撃で強引に押し倒され、地面をごろごろと転がっていった。







――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


皇 クロナは、今まで守ってくれた人が女だと気付き愕然としていた。


それと同時に、今まで少女に守られていたのかと悔しくなった。


「ああもぅ、なんなんだよこれは。何がどうなってるんだよ。こんなわけのわからない場所でわけもわからないまま死んでたまるかっ」


いきなり見知らぬ世界に放り出され、挙句には見知らぬ獣に散々追いかけられ、今すぐここを抜け出したいという焦燥に駆られながらも漆黒の獣の気を引くために石を投げつける。


獣は、こっちを一瞥すると決して早くはない・・・・・・だが、良い知れぬプレッシャーを放ちながらこちらへと向かってきた。


自分ではこいつに勝つことも傷をつけることもできないだろう。

しかし、囮になら・・・・・・ 俺にもできる・・・・・・

せめて、あの少女が立ち上がる時間ぐらいは・・・・・・


「チッ、いつまで寝てるんだ。早く起きやがれ」

クロナは、少女が倒れた方向に向かって怒声を上げた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





体の中の酸素を全部吐き出させられ、意識が朦朧とする少女は、眼前で少年に向かっていく漆黒の獣を見た。


今にも飛びそうな意識を必死に繋ぎとめながらも、この状況をどうにか呑み込もうとする。


「――――――――――・・・・・・ッ まさか、助けられるとは」


体は悲鳴をあげているが、なんとか立ち上がる。

次の攻撃が最後の一撃になるだろう。


少女は、再び剣を強く握り締めると少しずつ・・・・・・しかし、確実に勢いをつけ加速し獣の心の臓を目指して剣を突き刺す。


背後からの一撃。

体は悲鳴をあげ、腕の筋肉繊維もプチプチと嫌な音を立てている。

もう、どちらの肉が裂けているのかもわからない。


最初は反応があった獣も少しずつ動きが緩慢になっていき、やがて動きを止めた。


「――――――――――終わったか」


漆黒の獣は、暴れることも悲鳴をあげることもなく命の幕を閉じた。






・・・・・・獣が事切れるその瞬間を待っていたのだろう。

涙で顔がグショグショになっている少年が駆け寄ってきている。

まるで先ほどまで、注意を引くために凛と獣に立ち向かっていた人の顔ではないみたいだ。


「おいっ! おいっ! 大丈・・・・・・」


意識が遠くなる中で助けた少年を見て微笑み、少女は意識を手放した。

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