あれはなんですか?
「ひどい目にあいましたよ、」
私は深いため息をついた。
「勇者様、大丈夫ですかね?」
勇者様はロボットを斬った後から、眠り続けている。
「まだ器を成していないのに剣の力を使ったからですな。」
ジイが言った。
剣の力?
「というと?」
「先程ロボを斬りました時を覚えていますな?」
「敵の光線を自分の力に変えて相手にぶつけました。」
「吸収して解き放つ、それが人滅の剣の力ですな。」
なるほど。
「そこまで細かく伝記には書いてなかったです。」
「滅魔の剣の力は?」
私はマオが携えている剣を見る。
「衝撃を無効化できます。」
さすが伝説となるだけはあって2つともでたらめだな。
「使いこなせば魔王を倒すのも夢では無いですね。」
「え、倒される?」
マオが自分を指差す。
「あノ男の人ですネ?」
「そうです、マオじゃないですよ?」
「あいつね。」
マオが苦い顔をした。
「で、勇者様は起きるんです?」
しばらく経つも起きる気配は一切ない。
「このままでは起きませんな。」
え?
「起きない?」
「はい。」
ジイはキョトンとした顔で答える。
「どうするんですか?」
「教えません。」
なんで!?
「勇者が起きなくなるとは、好都合ですなマオ様!」
忘れかけてたけど、そういえば二人は敵でしたね。
「いいじゃん教えてあげなよ爺や。」
「マオ様! なんでですか。」
「ね?」
マオとジイが何やら見つめ合っている。
「仕方ないですな。」
ジイはいやいやだが、教える気になったようだ。
「この薬草達を煎じて飲ませれば起きるはずです。」
そう言って見せてくれたのは古びた一枚の紙。
「殆どは持ってますが、ここいらで採れない物もありますね。」
困りました。
「どうしましょうか。」
「私、持ってマすよ?」
「私の村ノ近くにタくさんアったのでス。」
イオは自分の鞄から薬草を取りだした。
「そうなんですか。ありがとうございます!」
私は安堵してイオが取り出した薬草を貰おうと手を差し出す。
「駄目デす。」
そう言ってイオは薬草を、鞄に入れ直してしまった。
「え!? どうしてですか?」
「欲しかっタら私の質問ニ答えテくださイ。」
イオは少し怒ったような、困ったような表情を浮かべている。
「質問って何?」
マオが話に入ってきた。
「あなたについての質問です。」
マオを軽く睨んでいる。
マオについて?
なんだろうか。
「マオさんっテ、魔王でスよネ?」
そう言ってイオは、マオの帽子を剥ぎ取った。
「あ! 取られた〜。」
ん?
「どうシて魔王ト、勇者ガ一緒にいるンですカ?」
あれ?
言ってなかったっけ?