第3話 元の世界に戻れない!!?
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「ふざけんじゃねぇぞ! てめぇっ!! 俺達が元の世界に戻れないってどう言うことだっ!! あぁっ!!?」
「龍哉! お願い! 止めて!!」
「龍哉! 暴力は駄目だって!!」
「お、お前達! お、王様をお守りするんだ!!」
「貴様! 王様に手出しはさせんぞ!!」
「あわわわ……」
謁見の間全体に響き渡る怒声。その怒声の主は、龍哉だ。
王様から元の世界へ戻れないと告げられた龍哉は、彼に怒号を放ちながら近づいて行く。どうやら龍哉は、身勝手な事をして自分達を元の世界へ戻れないようにした王様を、殴ろうとしているようだ。
しかし、そんな龍哉の暴走を勇綺と秋が止めに入る。秋は龍哉の腕にしがみつき、勇綺は秋に続くようにして、龍哉の身体にしがみつく。そして龍哉の腕や身体にしがみついた二人は、王様を殴ろうとしている龍哉を落ち着かせようと、必死になって説得をする。
勇綺と秋が龍哉の説得をしている最中、オドワルドの側で立っている巻き髭の男は、怒った龍哉がこちらに近付こうとしている様子から、彼が王様に危害を加えようとしていると感じとり、直ぐ様兵隊長や兵士達に王様の護衛をするように命令を出す。
巻き髭の男からの命令によって兵隊長と兵士達は、王様を守るようにして王様の前へとズラリと横に並び立ち、こちらに近付こうとする龍哉の目の前を遮った。
龍哉と睨みあっている兵隊長と兵士達の後ろで、オドワルドは龍哉の迫力に圧倒されてしまったのか、震えながら龍哉達と兵隊長達のやりとりを見ていた。
「龍哉! 今は一旦落ち着こう? ね?」
「秋の言う通りだよ! まずは落ち着こうよ? 龍哉の気持ちもわからなくも無いけど……、今ここで王様を責め立てても、どうにもならないと思うからさ……」
「……ちっ! わ〜〜たよ! 二人がそこまで言うんだったら、王様をぶっ飛ばすのをとりあえず止めるよ」
(た、助かった……)
秋と勇綺の必死の説得により、激怒していた龍哉は落ち着きを取り戻す。そして冷静になった龍哉は、二人の懇願を聞き入れて、王様を殴るのを取り止めるのであった。
龍哉の言葉を聞いたオドワルドは、自分が龍哉に殴られずに済んだ事に、胸の中で安心していた。
「兵隊長よ、私の事はもう心配ない。お前達は元の位置に戻りなさい」
「し、しかし! 王様!」
「「「「「王様!!」」」」」」
「王様……、兵達を下げても本当によろしいのですか?」
オドワルドは、龍哉がこちらに攻撃する意志が無くなったと判断したのか、今、自分を護衛している兵隊長と兵士達に、護衛を止めるように命令を出す。
だが兵隊長と兵士達は、王様の命令に不服なのか、王様に意見をする。おそらく、王様の事が心配なのだろう。
そして王様の側にいる巻き髭の男も、兵隊長達と同じように、王様の事が心配なのか、王様に異議を唱えた。
家臣達の意見に、王様はと言うと……。
「大臣、兵隊長よ。私は先程も言ったぞ?もう心配ないと。だから、兵隊長達は元の位置に戻りなさい。このまま兵隊長達が私の目の前で護衛を継続していたら、私や救世主達が、落ち着いて話し合う事が出来ぬではないか?」
「……そうですか、わかりました。元の位置に戻ります……」
「……」
オドワルドは兵隊長に何とか説得して、彼を納得させた。
王様に説得された兵隊長は、渋々ながら兵士達を引き連れて元の位置へと戻ってゆく。
しかし、大臣と呼ばれた巻き髭の男は、王様の説得に何処か不満そうな表情を浮かべていた。
「あ、あの! 王様!」
「? 何だね?」
すると突然秋が口を開き、王様に話しかけた。
秋に話しかけられたオドワルドは、秋の方を見据える。
「先程王様は、私達を元の世界に戻せないと言っていました。どうして元の世界に戻せないのですか?」
「その事か……。この異世界転移の魔法は、異世界の人間を連れて来る事は出来るが、元の世界に戻す事は出来んのだ……」
「何じゃそりゃ……。ひでぇ魔法だな……。何でそんな、致命的な欠陥のある魔法を使ったんだよ……」
(そうだよなぁ……。龍哉の言うとおりだよなぁ……。異世界転移系のラノベでもそうだけど、この異世界転移魔法の欠点については、本当に酷いと思う……。そんな欠陥魔法に後先考えずに手を出した王様達は、ちょっと軽率だったと思うなぁ……。まぁ……、そんな欠陥のある魔法に頼りたくなる位までに、王様達は追い詰められていたんだろうな……。それを考えると、王様達が異世界転移魔法に手を出すのは仕方ない……かな?)
秋は、自分達を元の世界に戻せない理由を王様に問い掛ける。
オドワルドは秋からの質問に、異世界転移の魔法についての欠点を簡潔に説明した。
龍哉は、致命的な欠陥のある異世界転移の魔法を使った王様達に、呆れ返っているようだ。
そして勇綺は、異世界転移魔法と後先考えずに異世界転移魔法に手を出した王様達を、胸の中で酷評していた。だが勇綺は、王様達がこの異世界転移魔法に頼らなければならない位まで追い詰められていたって事を、ある程度は理解しており、彼等が異世界転移魔法に手を出すのも仕方がないと思っているようである。
「君達には、酷い事をしたと思っている……。私達の都合で君達を巻き込んでしまって、本当に申し訳ない事をした……。許してくれとは言わない……。だが、これだけはわかって欲しい……。私達は、この国や民達を何としても守りたいのだ! どうか頼む! 救世主達よ! 闇の王倒す為に、我々に力を貸してほしい!!」
「だから、言っただろ! あんた等の世界を救う気はねぇって! それに、こっちはそれどころじゃ無いんだよ! お前等のせいで元の世界に戻れねぇから、俺達は何とか元の世界に戻る方法を探さなきゃいけねぇんだよっ!!」
オドワルドは勇綺達に謝罪をした後、再び彼等に、闇の王の討伐を頼み込む。
またもや王様に闇の王の討伐をお願いされて、龍哉は王様のくどさに苛立ちを覚えながらも、先程と同じように王様の願いを一蹴する。そしてさらに龍哉は、異世界を救うよりも、元の世界に帰還する方法を探し出す事を優先していると、王様達に主張するのであった。
「……ねぇ、勇綺! あたし達の力を王様達に貸してあげましょう! こんなに困っている王様達を、あたしは見捨てる事なんて出来ないわ!」
「はぁっ!? 本気か秋!? 俺達の都合も考えない、こんな自分勝手な連中に力を貸すのかよ!? 止めとけって!! 録な目に合わねぇぞ!!? おい! 勇綺! お前も秋に説得してくれ!!!」
「え、え〜〜と……」
すると秋は、困っている王様達に加勢する事を、勇綺に提案する。
必死でこちらに懇願する王様を、秋は放って置く事が出来ないようだ。
しかし秋の提案を聞いた龍哉は、王様達に力を貸す事に反対のようである。元々龍哉は、こちらの都合も考えずに自分達を異世界に呼び寄せた王様達の事を快く思っていなかったので、秋の提案に反論するのも当然と言えよう。しかし龍哉が秋の提案に反論したのは、それだけが理由ではない。一番の理由は、幼なじみ達を危険な目に合わせたく無いのだ。龍哉にとって勇綺と秋は、小さい頃から一緒に遊んだり、お互いに助け合ったりしてきた、大切な幼なじみ達なのである。だからこそ龍哉は、勇綺と秋を守る為にも、王様達の願いと秋の提案を聞き入れるわけにはいかないのだ。
なんとしても大切な幼なじみ達を守りたい龍哉は、勇綺にも、秋の説得に協力するように促そうとする。
幼なじみ達の意見に勇綺は、秋と龍哉のどちらの意見を選んだら良いのか判断できず、ただ戸惑うばかりであった。
今回はここまで!
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