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第2話 救世主

なんとか六月中に投稿できた……。


一ヶ月につき一話は、必ず投稿できるようにしなければ……。


それでは、最新話をどうぞ!

 静寂に満ちた豪華絢爛な部屋。

 その部屋の中で、勇綺、龍哉、秋の三人とオドワルドの臣下達が、張り詰めた空気を漂わせながら、オドワルドの話に耳を傾けていた。


「先ずは、お主達がここへ召喚された事から話そうか……。簡潔に話すと、お主達は世界を救う【救世主】として、このランドロック王国に召喚されたのだ」


「俺達が!?」


「私達が!?」


「「救世主!!?」」


(うわぁ……、テンプレだなぁ……)


 オドワルドは勇綺達がこの王国に召喚された事を、かいつまんで話し出す。

 オドワルドの話しを聞いた龍哉と秋は、自分達が異世界を救う救世主として召喚された事に、二人揃って目を丸くして驚いた。

 幼なじみの二人が王様の話を聞いて驚いている最中、勇綺はというと、オドワルドの話を聞いて微妙な表情を浮かべている。

 何故ならオドワルドの話が、ラノベのテンプレと同じ展開だったからだ。このようなテンプレ展開に対して勇綺は、これを笑うべきなのか、それとも話しに捻りがない事に呆れるべきなのか、色々な感情が入り混じった何とも言えない複雑な気持ちになってしまった為、王様の話しに微妙な表情を浮かべてしまったのである。

 この何とも言えない微妙な表情を浮かべている勇綺に、オドワルドは特に気付く事もなく話を続けた。


「この世界では、邪悪な魔物を束ねる闇の王達が人々を苦しめている。我々人間達は、闇のな王達の支配から逃れるために、武器を取って決死の覚悟で奴等に挑んだ。だが、奴等は恐ろしい程の強さだった……。奴等の圧倒的な力によって、いくつもの村や町、国が蹂躙されていった……。このランドロック王国も一度、奴等に狙われた時があってな……。その時は、何とか奴等を撤退させる事ができたのだが……、それと同時に多くの民の命も失われてしまった……。もしもまた、奴等がここを狙いに来たのなら……、恐らく、この国を守りきるのは難しいだろう……」


 落ち着いた表情で話を続けていたオドワルドの表情が、徐々に曇ってゆく。

 恐らく、闇の王の強さや戦いの中で散っていった民の事を思い出しているのだろう。


「……我々は、この状況を打破するために、最後の手段である【救世主召喚】を行う事を決めたのだ」


(話はテンプレだけど……、相当ヤバそうだなぁ……。確か王様は、闇の王《達》って言ってたよな……。RPGで例えると、魔王が複数いるって事かぁ……。もう、詰んでんじゃないのかなぁ……)


 オドワルドは、救世主召喚を行う事を決断した経緯を丁寧に勇綺達に話した。

 王様の話を聞いた勇綺は、闇の王と呼ばれる魔物の王が複数存在している事に、気持ちが萎縮して半ば諦めかけているようだ。


「あんた等が俺達を召喚した経緯は良くわかった……。つまりだ……、あんた等は救世主として召喚した俺達に、闇の王の退治をして欲しいって事だな?」


「……そうだ」


 王様が話した後、開口一番に口を開いたのは龍哉だった。龍哉は王様に、自分達に闇の王の退治をして欲しいのかと問い掛ける。

 オドワルドは、龍哉の問い掛けに表情を変えずに返答した。

 すると突然、秋が口を開く。


「龍哉! あんたまた、そんな口の聞き方を!! どうしてそんな物言いしか出来ないの!?」


「……」


「あ、秋、落ち着いて……。龍哉だって、悪気があって言っているわけじゃないと思うから」


 秋は顔を真っ赤にして怒りながら、龍哉を批難した。どうやら秋は、龍哉の上から目線の言い方に怒っているようだ。

 だが龍哉は、秋に怒られても何処吹く風のようであった。

 二人のやり取りに勇綺はおろおろしながら、龍哉に怒っている秋を、何とかなだめすかす。


「う〜〜、わかったわよ……」


(よ、良かった〜〜……)


 勇綺が一生懸命宥めた事で、秋は何とか落ち着いたようだが、その表情はどこか不満そうだ。

 とりあえず秋が落ち着いて、勇綺はホッと胸を撫で下ろす。


「……そろそろ話しても良いか?」


「あっ! す、すみません! 話の腰を折ってしまって!! ど、どうぞ!! 話の続きをお願いします!!」


「は、話を遮って本当にすみませんでした!!」


 オドワルドは勇綺と秋に、話を再開してもいいかどうかを、確認するかのように尋ねた。

 オドワルドに問い掛けられた勇綺は、話を遮ってしまった事を王様に謝罪をする。謝罪をした後、勇綺は、王様に話を再開するよう促した。

 勇綺に続くように秋も、頭を下げながら、王様の話を遮ってしまった事への、謝罪の言葉を口にする。謝罪をしている時の秋の表情は、トマトのように顔が真っ赤だ。話を遮って、王様に迷惑をかけてしまった事が、余程恥ずかしかったのだろう。


「……では、話を再開しようか。先程も言ったが、我々は救世主である君達に、闇の王の退治をして欲しいのだ。どうか、頼む!」


 オドワルドは勇綺達に、闇の王の退治を懇願した。

 すると……。


「あんた達の事情はわかった。だが、俺達には関係のない話だ。何の思い入れも無い、この世界を救ってやる義理は無いね!」


「!?」


「なっ、何だとっ!?」


「ちょっと! 龍哉!? 本気で言ってるの!!?」


(龍哉の言い方はアレだけど……、まぁ……、そうだよなぁ……)


 龍哉は、王様の懇願を迷いなく一蹴する。

 龍哉の発言に、オドワルドと彼の側にいる巻き髭の男は、目を丸くして驚いた。

 そして秋は、龍哉が王様達を見捨てようとする発言に動揺を隠せずにいる。

 だが勇綺は、龍哉の発言に納得していた。

 何故なら、無理矢理異世界から召喚された勇綺達が、友人や家族、親しい人達が居るわけでも無いこの世界を守る為に、命をかけて戦うのが可笑しな話なのである。

 それらを考えれば、龍哉が王様達の懇願を一蹴するのは仕方ないと言えよう。

 これがもし、ラノベ主人公のような正義感あふれる人物だったのならば、王様の懇願をすんなりと承諾していたのかもしれない。


「龍哉! 王様の話を聞いていたでしょ!? 王様達は困ってるのよ!? どうしてあんたは、そんな酷い事が言えるの!!?」


「俺が酷い? 酷いのは、どう見てもこいつらの方だろ? 勝手に、俺達の都合も考えずに救世主召喚とかで異世界に拉致した挙げ句、【闇の王】とかっていうヤバそうな連中を、俺達に退治させようとしてるんだぜ? それらを考えれば、どちらが酷いかなんて明白だろ?」


「うぐっ!? うぐぐぐ………」


(龍哉……。言っている事は正しいんだけど……。でも、そろそろ止めてあげて。王様の心はボロボロだよ……)


 龍哉が王様達を見捨てようとする発言に、またもや秋が怒りだす。そして秋は、鬼のような形相で龍哉を咎めた。

 しかし秋に咎められても、龍哉は全く動じていない。批判された龍哉は、屁理屈にも聞こえる正論で秋に言い返した。

 この龍哉の返答によって、思わぬ人物が、呻き声をあげながら苦い表情を浮かべてしまう。そう、王様だ。王様は、勇綺達を無理矢理召喚してしまった事に、負い目を感じていた。そんな状態の王様に、龍哉が秋に言い返した屁理屈にも聞こえる正論によって、王様は精神的なダメージをうけてしまったのだ。

 龍哉の正論に、勇綺は納得しているが同時に、王様の精神面の心配もしていた。何故なら、幼なじみの正論と言う名の暴力によって、精神的にフルボッコにされて苦しむ王様の姿を見てしまった勇綺は、流石に彼の事が不憫だと思えてしまったのだ。


「くうぅぅ〜〜……、悔しいぃぃ〜〜!」


「お、落ち着いて! 秋! ね? 一旦、落ち着こう?」


「あ! そうだ! 忘れてた! おい! 王様!」


「!? な、何だね!?」


 龍哉の正論によって言い負かされた秋は、言い返す言葉が思い浮かばず、唸り声をあげながら悔しがった。

 言い負かされて悔しがる秋を、またもや勇綺が宥めて落ち着かせようとする。

 勇綺が秋を宥めている最中、龍哉は何かを思い出したのか、大きな声で王様に呼び掛けた。

 龍哉に突然呼び掛けられたオドワルドは、彼に精神をフルボッコにされたせいなのか、内心ビクビクしながら返事をする。


「さっきも言ったけど、俺達はあんた等の世界を救う気はねぇ。だから、さっさと俺達を元の世界に戻しやがれ!」


「うぐっ!? そ、そ、それはだな……」


「王様?」


(おいおい、まさか……)


 龍哉は王様に、自分達を元の世界に戻すように催促する。

 龍哉の催促に、オドワルドは冷や汗をかきながら、しどろもどろに返事をしてしまう。

 様子がどこか可笑しい王様に、秋は、いぶかしむように首をかしげる。

 だが、勇綺だけはラノベを多く読んでいた経験があった為、王様が今から言おうとしている言葉に、何となくだが予測する事ができた。


「じ、実は……、わ、我々には、君達を元の世界に戻す事ができないのだ……」


「は!?」


「え!?」


(はぁ〜〜……、やっぱりこうなったか……)


 オドワルドは申し訳なさそうな表情で、勇綺達に元の世界へ戻れない事を告げる。

 王様から、元の世界へ帰れない事を知らされて、龍哉と秋は二人揃って顔を青ざめながら驚愕した。

 幼なじみの二人は元の世界へ帰れない事に驚いている最中、勇綺だけは、ある程度冷静のようである。勇綺はこういったシチュエーションのラノベを多く読んで耐性がついたので、龍哉と秋のように驚いたりはせずに冷静でいられたのだ。

 そして勇綺は、王様の告げた言葉が、自身の予測どおりであった事に、落胆しながらため息をつくのであった。


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