プロローグ3
お待たせしました!
やっと異世界へ転移します!
それでは最新話をどうぞ♪
勇綺は、振り下ろされた博孝の拳に、反射的に目をつぶり、彼の攻撃を受け入れる覚悟を決める……。
(……? あれ?)
だが、いくら待っても殴られた感触や痛みが中々感じてこない。勇綺は閉じた目をゆっくり開けると、そこには……。
「あっぶね〜〜! ギリギリだったぜ……。大丈夫か? 勇綺?」
「勇綺の教室に遊びに来てみたら、この状況は一体何なのよ? 勇綺!」
「!! 龍哉!? 秋!?」
勇綺の目の前には、博孝が勇綺に目掛けて振り下ろした拳を片手で受け止めている男子生徒と、勇綺を庇うように彼の前に立つ女子生徒がいた。博孝の拳を片手で止めた男子生徒の名は鉄龍哉。隣のクラスの生徒で、勇綺の幼馴染みであり、勇綺と秋にとっては頼れる兄貴的な存在である。
身長は百七十九センチメートルで、目付きは鋭く、サラサラの髪の毛には赤みがあり、全体的に近寄りがたい雰囲気を放っていた。
こんな恐い見た目だが、以外にも女子生徒からは人気があるらしい。
次に女子生徒の方の名前は、紫堂秋という。彼女も龍哉と同じく勇綺の幼馴染みである。
背は百五十九センチメートルで、髪色は橙。ボサボサのショートヘアは、彼女に活発な雰囲気を出させていた。
彼女の持ち前の明るさとサバサバした性格は、意外にも男子生徒達から支持されているらしい。
「隣のクラスの奴か! そこを退け! そこのリコーダー泥棒をぶっ飛ばせねぇだろうが!!」
「あん? 何だって? 勇綺がリコーダー泥棒だとぉ? どういうことだ?」
「そこに居る成神君は、愛鯉のリコーダーを盗んだんだ。その証拠に、彼の机の中に愛鯉のリコーダーがあった! これは彼が犯人である事に間違いない筈だ!!!」
博孝は、勇綺を庇う龍哉と秋を忌々しそうに見つめながら二人を批難した。
龍哉は博孝の言葉から、勇綺がリコーダー泥棒の疑いを掛けられていた事を知らされ、博孝に勇綺を犯人扱いした理由を問いただす。
すると、龍哉の問い掛けに答えるように、正義がドヤ顔で勇綺が犯人である理由を語り出すが……。
「はんっ! 勇綺の机に桃条のリコーダーが入ってたからって、勇綺を犯人だと決めつけるのは早計だと思うけどな!! 大体、盗んだリコーダーを机の中に入れっぱなしな事に、違和感を感じねぇのかよ?」
「そうよ! それに、盗んだ物を机の中に入れっぱなしにするより、持ち帰った方が疑われる可能性が低い筈よ? 後、犯人が桃条さんのリコーダーを盗む所を、誰も目撃した人が居ないんでしょ? それらを考えると、勇綺が下校した後、誰かが勇綺に濡れ衣を着せる為に、勇綺の机の中に盗んだ物を入れたって考えもできちゃうのよね!」
「龍哉……、秋……」
龍哉は嘲笑いながら、正義の主張に疑問点を述べだす。
そして龍哉に続くように秋は、勇綺が誰かに無実の罪を着せられるている可能性を主張して、二人に反論する。
そんな最中、勇綺は自分を守ろうとしてくれている幼なじみ達に、顔を綻ばせていた。
「んなっ! てめぇらっ! 屁理屈言って、煙に巻こうとしているな!?」
「ふん、馬鹿馬鹿しい推理だ。 君達は、僕達の中に犯人が居ると言いたいのか?」
「でも、紫堂さんの言う通り、その可能性も有るかも……」
秋に言い負かされた博孝は、狼狽えながらも龍哉と秋を批判する。
狼狽えている博孝とは逆に、正義は秋の反論にまるで意に介していないようで、彼女の意見を冷静に言い返す。
そんなひねくれた二人とは対照的に、愛鯉だけは秋の話を素直に聞いており、耳を傾けない博孝と正義に意見をするが……。
「愛鯉! 泥棒達の妄想に耳を傾ける必要何てない!! 正義はこちらにあるんだ!!!」
「その通りだぜ愛鯉! こんな屁理屈を言って、罪から逃げようとする奴等の話を鵜呑みにする必要なんてねぇ!! こういった糞共は、力ずくで自分達の過ちを気付かせた方が手っ取り早い!!!」
「ふん! 結局、力で解決か!? 良いぜ! かかってこい!!!」
(やばい……、どうしよ……)
正義と博孝は愛鯉の意見を一蹴して、自分達の正しさを彼女に押し付ける。
更に博孝は、秋達に言い負かされた事に相当腹が立っていたのか、かなり物騒な事をのたまいだす。
そんな博孝の過激な発言に触発されたのか、龍哉は喧嘩腰になっており、今にも二人と喧嘩を始めてしまいそうな状態である。
一触即発な状況に勇綺は、ただあわてふためく事しか出来なかった。
するとその時……。
「!? な、何だ!? これは!?」
「!?」
「え? えっ!?」
「ちょっ!? 何っ!?」
「おいおい……、嫌な予感しかしねぇぞ!!」
「こ、これって、もしかして……」
突然、博孝と正義と愛鯉の足元に、青く光る幾何学な模様が入った円形の魔法陣が出現。それと同時に、秋と龍哉、そして勇綺の足元にも黄色く光る幾何学な模様が入った円形の魔法陣が出現する。六人は突然現れた魔法陣によって、それぞれ動揺しだす。
オタクである勇綺は、こういった展開のライトノベルを多く読んだ事があるためか、この状況がライトノベルとかによくあるシチュエーションに似ている事に気付く。
そして、光輝く魔法陣は更に輝きだし、六人を眩い光で包み込む。
六人が光に包み込まれて数秒程経つと、光が徐々に消えてゆき、そこには六人の姿が忽然と消えていた……。
「う、嘘……」
「は!? えっ!? マジかよ!!?」
「消えちゃった……の?」
「お、おいっ!? どうすんだよ!? これ!!?」
「私に聞かないでよ!!」
「これは夢だ!! 絶対、夢に決まっている!!!」
「わ、私!! 先生を呼んでくる!!!」
六人が謎の光によって突然消えた事で、クラスメイト達が一斉にあわてふためく。クラスメイト達の中には、今起きた出来事を夢だと決めつけて現実逃避をする者や、担任の教師を呼ぼうとする者もいた。
そんな異常な環境にも関わらず、空気を読まずにはしゃいでいる者達がいる。それは……。
「ハハハ! 糞オタ消えてるよ! 超うけるぅ〜〜!」
「あっ! 糞オタが消える瞬間を動画に撮っておけば良かったなぁ〜〜! アレを動画サイトに投稿すれば、視聴回数が相当な数になってるだろうなぁ〜〜?」
「ヒャッハ〜〜! すっげぇなぁ〜〜! こんな漫画みたいな展開って有るんだなぁ〜〜!」
あわてふためいている他のクラスメイト達と違い、一也と二郎そして三太の三人は、勇綺達が消えたにも関わらず、取り乱したり心配する素振りすらも見せず、ヘラヘラと笑っている。まるで、この状況を楽しんでいるかのようだった……。
さてはて、消えた六人はどうなったのか?
次回もお楽しみに~~♪
後、感想もよろしくお願いいたします!