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そう、しようかい  作者: どりもどり
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そして星になる

少年は星に恋した。

ある日、星になるために少年は崖から飛んだ。

飛ぶ寸前に彼は、少しためらった。

彼は崖から落ちて砕け散った。


少年は星に恋した。

ある日彼は星になろうと崖から飛んだ…………


目が覚めると学校の駅はまだまだだった。いつもはぐっすり眠れるのに今回は3駅分しか眠れない。

目が覚めてしまった僕は本を読む。宿題として出された課題図書を読むのは、はっきりいって、無意味ではないだろうか。国語の授業が嫌いなわけではない。でもそれは一見面白くない本を力説する先生によってであって、面白くない本を自分で読めと言われてもつまらない。

そんなことを考える電車はごく当たり前の日常だ。

いつもはほとんど遅れない電車なのに、その日は急ブレーキが掛かった。前の電車が人身事故を起こしたのだと言う。

まいったな…

学校に間に合うだろうか。僕は学校まで一時間かけて電車で登校する。残りの12駅はいつもの40分とダイヤの乱れ、人混み。そして事故復旧に1時間かかるだろう。間違いなく1時限目は出れないや。

高校生の僕は、もちろん遅延証明書を知っている。でも問題はそこじゃない。

1時間目は彼女と席が隣になる英語の授業だ。出ないわけにいかないだろう。彼女は代名詞の彼女じゃない。ガールフレンドの彼女だ。中2から付き合っている。教科ごとに教室移動する僕の学校は、どうしてなかなか、彼女と同じ席にならない。せっかく同じクラスなのにそうなると、唯一隣の英語の授業は大切な時間なのだと彼女は言う。

その授業に遅れるとなれば、あいつは不機嫌になって今日は一緒に帰ってくれないだろう。


電車が動き出したのは1時間と30分がたった頃だった。課題図書を読み終えていなかった俺にはちょうど良い足止めだったけれど、沙呉サクレはきっと怒ってる。いつもは積極的に声をかけてくれるけど、怒ると全く話さない。

それだけで僕の一日は薄っぺらくなったような気がしてさみしい。だから、いつもは僕から声をかけてご機嫌をとろうとするけれど、昨日も授業で寝ていて無視していたから、この手は通用しないな。なにか、お土産でも買っていった方がいいのだろうか…。

僕は女の子と付き合うのが初めてだ。今年で3年目になる彼女との付き合いは本当に正しいものなのか。今だに答えが出ていないのが男らしくない。でも、恋愛に答えはあるのかとも思う。彼女が話しかけて僕が応じて、機嫌が悪くなると僕が話しかけて。そうやって関係を取り持ち続けているものが付き合っていると言えるとも考えている。でも結局答えがでなくてうやむやになる。人生って結局こんな感じなんだろうっていつも思う。

大学になっても、大人になってもこの関係が続くままなのだろうか。

関係が変わるなら、僕の人生は大きく変わる。そういう、変化は面倒だし不安になる。できることならこのまま続けばいいんだろうな。

課題図書は珍しく面白かった。明治時代にドイツに留学にいった主人公が踊子と恋に落ち子供もできるけど、結局は愛より出世を選び一人で日本に帰ってしまう。昔の人は自分で物事を判断するのが怖かったんだなって、思った。

読み終わった本を鞄にしまい僕は停車した駅の名前を見ようとする。

ドアが開いても満員状態の車内からは何も見えない。アナウンスに耳を凝らすと

あと3駅だった。

もう少しでここから降りなきゃいけないと考えると、ドアの近くに行くべきだと感じる。でもこの人混みから動くとなるとすごく顰蹙ひんしゅくを買うだろうし、やっぱり動かない方が良いと思う。沙呉の不機嫌な顔を思い出したら、動かなきゃいけないと思った。

「す…すいませ…ん」

ドアが閉まらないうちに動かないと人も壁は動かない。そそくさと人を掻き分けていく。最近は痴漢とかあるし、なるべく手は頭の上…なんて考えながら進むと、どうしても不格好になってしまうのは仕方ないだろう。僕は背が小さいからおじさんの鼻息が手に当たって少し気持ち悪い。曲げたビジは僕と同じ身長くらいの女の人たちに顔に当たりそうになる。ヒジを確認しながら進んでいると、同じ学校の生徒がいた。

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