第4話
大陸の中央やや西よりに、エイステイン王国の王都にシェルグレット城はある。
「おい!小僧。」
いきなり顔の前に剣が現れた。
「マルティン様!!」
少女は少年の前に立ちふさがり、相手を睨み付けた。
「アネタ!」
「…っ、召し使いっ!じぁまだどけ!」
「アネタ!!」
「…」
もう一度名を呼ばれると、少女は後ろに下がった。
マルティンは片膝をつき、剣先へ顔を進める。
忠誠の証である。
「ホーヴァル様、お許し下さい。」
「躾がなってないな小僧、いくら兄上が甘いとは言え、城内を歩く時は気を付けろよ…さもないと、俺が王になった時に後悔するぞ?」
ホーヴァルは、剣先をマルティンの額に押し付けていく。
マルティンの額から血がにじみだす。
後ろのアネタは怒りで震えていた。
「ホーヴァル様」
「ふん、解っておるレグダル。戯れだ。…しかし、召し使いは許せん、お仕置きをせねば示しがつかんなぁ、そうだろ?」
「ホーヴァル様、この者の主は私です。罰は私が受けます。」
「おやおや小僧、心配するな。召し使いの躾は得意ゆえ、きっちりと教えて返してやるぞ。」
アネタは前に出て膝まづいた。
「レグダル、引っ張ってこい。」
すでに歩き出したホーヴァルの後ろで、レグダルに腕を捕まれて、アネタは立ち上がった。
「アネタ…」
「マルティン様…心配しないで下さい。すぐにもどりますから。」
アネタは微笑みながら、歩き出した。
「すまない、アネタ。」
「マルティン様お部屋へお戻り下さい、後は私に…」
レグダルはそう言って、アネタを連れて言った。
8年前、父テオドール一世は戦で殺された。母はその3日後処刑された。そして7才だった自分は、人質としてシェルグレットに送られた。ラスチスラフ城からは、祖父のテオドール一世が地方に追いやられ、妹のエレナは行方不明となった。ラスチスラフはホーヴァルが治める事となった。