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とりあへず戦記(仮)  作者: ういん23
3/9

第3話

「アル、アルはいるか?」

「はい、父上。」

裏庭で馬の世話をしていた手を止め、アルフレート=ホルバトは、家に入ってきた。


「今から手紙を書く、それをシュミツェル様の所へ持っていってくれ。」

「父上…それでは…」

「うむ。」

「わかりました、急いで支度をいたします。」


ボルフ島、大陸の南東、元ラスチスラフ王国の王妃の出身の島である。今は公国となったラスチスラフの公都からは遠く離れている。


夜遅く、ある屋敷の地下に10個の人影が、蝋燭の炎にゆれていた。


「皆の者聞いてくれ、今朝早く主様(あるじさま)より、ダヴィド=ロゼルナフの所に知らせが来た。」

「おお、ついに。」

「ついにこの時が…」


小さく何人かが呟く、一段高くなった場所から一同を見渡し、ゆっくりと両手をひろげる。

「マグヌスの命は間もなく尽きよう、これを期に我は立ち上がるのだ。」

「シュミツェル様。」

「うむ、永く虐げられてきた、主様(あるじさま)の誇りと土地を取り返す時が来た。」


全員フードを深くかぶり、表情は見えなかったが、わずかなすすり泣きや呟きを聞くことができる。


「ダヴィド、トーレ、ラドスラフ、パトリック、4人は残ってくれ、他の者は準備に取りかかってくれ。くれぐれも慎重にな。」


一人また一人と暗い部屋から消えていった。


「こちらへ来てくれ。」

シュミツェルを中心にテーブルを囲む、テーブルの上には地図が広げられている。


「さて主様あるじさまは、マグヌスの葬儀の日にマルティン様を救出する。その手筈は整ったとおっしゃってる。我々はその時の追手を防ぐ役割を仰せつかった。後エレナ様を主様の所へお連れする事もだ。」

「では二手に。」

「うむ、パトリックとダヴィド、お前たちはエレナ様をお願いする。」

二人は頷く。

「トーレとラドスラフは、シメンと合流してマルティン様の方を頼む。」

「わかりました、」

「おまかせ下さい。」

「少数づつ公都へ向かい、奴等に気取られぬよう。」

「後パトリック、島内に怪しい者がいないかも頼む。向こうもこの機に我々が動くと思っていても不思議ではない。」

「わかりました、それでシュミツェル様は?」

「私はわざと目立つようにして、奴等を迷わせる為に明日ネフランへ向かう。これで少しは皆が動きやすくなるはずだ。」

「ネフランへ…危険では?」

「トーレ大丈夫だ、危険でないと目がこちらに向かないだろう?」

「しかし…」

「エイステインに攻めこまれてより8年…ようやく巡ってきた好機、いまこそ、王と王妃の敵を打つのだ。」

「シュミツェル様…」

「王や王妃だけではない、ストーレ、ロアール、数々の同志が先の戦で倒れた。多くの無念を晴らすのだ、その為にはこの躰一つの危険、なんのことがあろう。」


暗さと静けさの中で、5人は8年前の事を思い出していた。

大国からの侵略、王と王妃の死、王子の捕虜、幼き王女を連れ出すのが精一杯で、それまでの王都を奪われ、属国としての扱いを受ける。

言葉、宗教、慣習の強要は、耐え難いものであった。


「我らが王 テオドール様の為に。」

「我らが王 テオドール様の為に。」

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