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◆01(……お父さんってのは、大変だねぇ)

まえがき


 ふと思いついたアイディアを書いてみたらまとまったので投稿します。

 コメディなのでアクションとかシリアスを期待すると残念なことになるかと思います。

 あらかじめご了承ください。


「行ってきまーす」

「ああ、行ってらっしゃい」


 朝のダイニングキッチン。

 登校する息子を見送る父親。

 ごく一般的な家庭の日常に見える。


 場所は都市周辺部にあるマンション。

 息子は普通の高校生で、名前を鈴木太郎という。

 中肉中背、成績も運動能力も中の中。

 平凡や一般的という言葉が具現化したような少年だ。


 その父親――鈴木大悟――の方はちょっと普通ではなかった。

 身長は一九〇センチメートルオーバー。

 筋骨隆々なプロのボディガード。

 これだけでも十分特殊と言えるが、実はそれどころではない秘密がある。


 だが、その秘密の存在を息子は知らない。


 部屋のドアが閉まる。

 太郎がエレベータールームへと移動する光景を、父親は家の中から“見て”いた。

 彼らの住むマンションのあちこちには隠しカメラが取り付けてある。

 そして大悟が今しているように、鈴木家にあるディスプレイでモニタリングできる。


 大悟は息子が一階へと降り、マンションのエントランスから外に出たことを確認すると、寝室へと急いだ。


 ベッドに隠したスイッチを押すと、隣室――マンションのお隣さんの部屋――に面する壁が開く。

 実は鈴木家の左右の部屋はどちらも鈴木家が使用している。

 さらに言うと、マンション全体が鈴木家の持ち物だ。


 隣室の雰囲気は住居のそれではない。

 工場か理系の研究室のような、あるいは病院のようにもみえる。


 大悟が隣室に移動すると壁は自動的に閉まった。


 大悟は着ていたシャツとスラックスを脱ぎ、全裸になった。

 そして、斜めに傾いたベッドのようなもの。

 モバイル器機のクレイドルのようにも見える装置に横たわる。


 すると、鍛え上げられた大悟の肉体が……“割れた”!


 頭部が一度持ち上がり、後方にスライドする。 

 胸部から腹部に関してはパッカリと左右に割れる。

 脚部も両脚の腿が左右に開く。


 オープン状態になった大悟の中には人間が入っていた。


 艶やかな背中まで伸びる長い黒髪。

 血色はよいが日に焼けていない白い肌。

 パッチリとした茶色い目はやや釣り気味だが愛嬌がある。


 ひと言で表すならば……美少女だ!


 歳のころは高校生くらいだろうか?

 背の高さは大悟の息子、太郎よりやや低い。

 脚はスラリと長く、バストやヒップのボリュームと共に日本人離れしている。


 そんな美少女が、アンダースーツのみを身にまとい、大悟の中に入っていた。


 大悟の中から出てきた少女は、慣れた手つきで学校の制服――女子用のブレザー――を着込む。

 手早く身支度を終えると、専用のエレベーターで秘密の地下駐車場へ降りた。


 そこには一台の高級車が駐まっており、その脇にひとりの初老の男性が待機していた。


「出してくれ」


 大悟の中から出てきた少女は高級車のドアに手をかけつつ可憐な声で指示を出す。

 初老の男性は運転席に乗り込むと、後部座席の美少女がシートベルトを締めたのをバックミラー越しに確認し、車を発進させた。


 大悟の住むマンションから一軒おいた隣のビルから高級車は街に出た。


「……いつも思うんだが」


 初老の男が少女に声をかける。

 黒のスーツをきちんと着た、紳士にしか見えない男は案外フランクな雰囲気で質問した。


「この毎朝の“お見送り”って意味あるのかね?」


 美少女の方も外見に似合わなずラフに返答する。


「毎度同じ答えでなんだがな……必要な不合理ってやつだ」


 オッサンのような口調で会話する少女は、その間手鏡で身だしなみをチェックしていた。

 その態度は年相応の少女に見える。


 やがて、少女たちが乗った高級車は大悟の息子太郎に追いついた。


「じゃあ、行ってくる」

「ああ、それじゃお勉強頑張れよ、“お嬢様”」


 少女が顔を歪めるのを無視して、初老の運転者はクラクションを鳴らした。

 太郎がそれに気がついて振り返る。


 運転者は車を停めると、運転席から降りた。

 先ほどとはうって変わって慇懃な態度で、後部座席のドアをうやうやしく開く。


「行ってらっしゃいませ。お嬢様」

「ありがとう高城さん」


 そう言って社外に出てきた美少女の態度も先ほどまでとは全然違う。

 優しげな微笑みを浮かべ、両手で通学用のカバンを持って太郎に歩み寄る。

 その仕草やおっとりとした表情はまさに“お嬢様”のそれに見えた。


「おはよう、山本さん」

「おはようございます。鈴木くん」


 そんな風に挨拶を交わすふたりを見ながら高城と呼ばれた、今は良家の執事のように見える初老の男性は内心で思った。


(……お父さんってのは、大変だねぇ)

あとがき


 なお、鈴木家の朝食の後片付けは別のスタッフがおこないました。


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