閃光
爪が、止まった。
ミリアマリンは目を見開いた。苦悶の声を漏らし、胸の水晶玉を注視する。
水晶玉はひび割れていた。
中央の金色の光を射抜きーーーー金色の剣の白刃が、内から外へと飛び出している。
そしてその先は、アルムの額の皮を薄く突き刺していた。
アルムの額から血が滴った。彼女の眉間を落ち、えくぼを伝う。
[悪い、遅れた]
「ええ、待ってた」
「バカっ――――」
ミリアマリンのリアクションを待つよりも早く、アルムが動いた。
剣をミリアマリンから引き抜く。のけぞったミリアマリン。それをよそにアルムは金色の剣をつかみ取った。
ミリアマリンが叫ぶ。――――それ以外、一切の動作は間に合わない。
[水晶玉! そのまま斬り裂けぇ!!]
「やあああああああああああああああああああ!!」
一条の閃光が放たれた。
それは魔力の炉心であった水晶をあっけなく打ち貫いて、バラバラに砕き落とす。
ミリアマリンの体の端々から魔力が漏れていく。押さえても押さえても止まらない。堰を切ったように、ミリアマリンの体から魔力素が漏れ落ちて、魔法樹に戻っていく。
怨嗟が悲しく鳴り響く。涙を流し、血を流し、感情とヒトには不釣り合いの魔力素を吐き出し続けるミリアマリン。アルムはその姿から剣尖をそらした。
「魔法の中枢はこっち?」
[ああ。感じるぞ。そこのへそだ。あそこの下。思いっきり斬れ。これは勢いが大事だぞ。その分、魔力素がいい感じに掻き消えてくれるずだ。そういう気がする。アルム、このオレを信じてくれるか?]
「疑ったことないよ」
[愛してる]
アルムは迷いなく頂点のへそに剣を向ける。
その足首に、弱弱しくミリアマリンが縋り付いた。やめてくれ。これが私の希望なんだ。私があのお姉さまを守るための。唯一の。絶対にこの帝国を続けていくためには必要なことなんだ。そんなことを言っていた。
アルムは首を振った。
「違います。ミリアマリン様。こんなものでは守れない。なぜならば、この魔法樹が守れるとすれば、このひとり分の椅子だけだから。みんなが暮らして続いてきた帝国と、そんな帝国を受け継ごうとしているディアエレナ様を助け守っていくことなんて、できるはずがないんです」
そうして思い切り。
玉座をたたき割った。




