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魔性を追う剣


 怨念の獣魔人無限湧き。


 まるでボーナスステージみたいな響きだが、一体一体が致死性のレベルと考えれば、ただの鬼畜仕様のマゾゲーでしかない。


 早急に解決策を思いつかなければ、冗談抜きでアルムはおろか、帝国は滅亡してしまう。


 ーーーーだか、件の【強い魔法】こと、帝都上空に守護結界の魔法を隠れ蓑に張り巡らされた謎の魔法X。その魔法の中心はこの皇城のなかでは、オレには見つけられなかった。


[やることはわかってるんだが……ターゲットがわからないんじゃあな……]


「面倒ね。帝都、吹っ飛ばす? さっきのアルムの第六魔法とかいうので」


「…………できるわけないでしょ。あれだって、どうしてあんなことになったのかわからないもの。…………あんな、まるで、私の魔法を先読みして、故意に共振させる、みたいなの……」


 言って、アルムは表情を翳らせた。


 苛立つフィーネ。言いたいことがあるならハッキリ言えと目で訴えている。


 …………アルムは。


 重々しく、口を開いた。


「思いついた。魔法の中心がある場所」


「いいわね。行ってきなさい」


「そう、だからーーーーーーーーえ?」


「ここは押さえておくから、早いところどうにかしてこいって行ってるわけ!」


 叫んで、フィーネは背後に視線を向けた。


 ーーーー正面と同じ圧力、悪寒、邪気、が。骨そのものを震え上がらせた。


「このままだとジリ貧なのよ、ボクら。状況わかってる?」


「バカ言わないで。あなた、ケガしてる。たとえあの獣魔人が怨念だけで練った実像でオリジナルより弱くても、あなたひとりで、それも二体なんて……!」


「そうね。これ、大ピンチだわマジで。ーーーーえ、本物ってコレより強いわけ?」


「うん。なんていうか……気迫から、違うかな。もっと気配だけで殺してくるよ、本物」


「…………なら、俄然やる気出てきたわ」


「あなただって本調子じゃ……!」


「いいのよ、むしろそれが。ボクが本気で殺されるシチュエーション、大ピンチ……こういうのがいいのよ、こういうのが! ゾクゾクする!」


「…………」


 頰を赤らめ、瑞々しい唇の間で唾液が糸を引く。恍惚とした表情のフィーネ。


 ……………オレはもちろん、アルムもドン引きしていた。


 その惚けた瞬間。


 フィーネの背中から水竜がまた一匹顔を出し、アルムの襟首を噛んで吊り上げた。


 そのままーーーー。


 割れた窓から、外に放った。








 地上高およそ10メートル。


 4階の高さから投げ捨てられたアルムは空を掻いた。フィーネに声を飛ばす。重力には逆らえない。


 落ちていく。落ちていく。落ちていく。落ちていく。


 着地の直前で重力魔法を使う。重力を緩め、速度を緩め、衝撃を緩め、静かに着地した。


 ーーーーそこは。


 皇城の入り口だった。


 ヒトがいる。ヒトがいる。ヒトがいる。


 子どもがいる。貴族がいる。騎士がいる。姫がいる。従者がいる。メイドがいる。商人がいる。兵士がいる。


 混乱していた。


 皇城のかしこで爆発音がする。生首の大猪が宙を舞い、魔獣の皮を剥いだコートが邪気を放ち、壁画に押し固められた夥しい骨が闊歩をはじめる。


 邪気と戦うものがいる。逃げるものがいる。先導するものがいる。見捨てるものがいる。叱咤するものがいる。嘆き崩れるものがいる。武器を探すものがいる。責めるものがいる。


 混乱が、全てを剥き出しにして、かき混ぜていた。


「いくよ!」


 誰にいうわけでもなく、アルムは走った。


 罪人に構うものはいない。誰もその余裕はなかった。


 たとえ逃げたとしても、誰にも気付かれず、ヒトの洪水の中に消えてしまうだろう。


 アルムは混乱の奥に突っ込んだ。


 ヒトをすり抜け、狂刃を砕き、魔性を蹴り、悪意を吹き飛ばしーーーー。


 目的の場所まで、たどり着いた。


[ってこれ、なんだ? ……でかい…………水晶玉、か?]

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