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拒絶の剣


 相変わらず無軌道に城の中を歩き回るディアエレナ。もしかしてこいつ、ヒマなのだろうか。


 実際に言ったらぶっ飛ばされそうなことを考えているうちに、ディアエレナはふと、足を止めた。


 ちらりとある扉を見やる。


 固く閉じられた扉だった。わずかにも開いていない。重々しい扉だ。


[…………なんだ?]


「相変わらず、趣味が悪い扉だな」


 あまり答える気なくそう呟いて、ディアエレナは無遠慮にその扉を開けた。


 文化的に手で引いてーーーーではなく。


 指先を一度ノブに近づけ、軽く払っただけ。


 ディアエレナは扉に触ることもなく、超重量と思しき扉は発砲スチロールのような軽量感で、静かに開いた。


「ーーーーあ、あらら? どうしてこちらに?」


 当然、困惑する中のヒト。見るからにメイド的な服装をした従者だった。


 ディアエレナは一度深呼吸して気分を整え、腕組みをしてふんずと仁王立ちをした。


「いいえ、質問するのは貴様でなく私である。して、貴様はどうしてここにいる?」


「なぜって、ここはーーーー」


「いかにも、私の愚弟の部屋だ。趣味が悪いよな。わざわざあのような兵舎のような扉を拵え出しだのだ。おかげで並の筋力では部屋にも入れんときている」


 ディアエレナはニコリともしない。ナチュラルにギアシフトを一気に皇女モードにぶち込んだ。


 静かに、しかし明確に、中のヒトへと近づいていく。


「さあ、答えよ。我が愚弟ガーネイドでない貴様が、どうしてここにいる理由がある?」


「わ、私はガーネイド様の専属でお世話をさせていただいております。ウリックと申しーーーー」


 ます、と言い終えるより早く、ウリックは後方に吹っ飛ばされた。


 目の前でヒトが壁に叩きつけられる。


 その状況を前にしても、ディアエレナに動じた様子はない。瞳を金色に鈍く光らせ、小さくため息などを吐いてみせる。


「嘘を言うなよ。貴様のような痩せ細った貧しげな女を好き好んであのガーネイドが置くはずがない。もっと私に似た高貴で豊満な女を選ぶ。


 それにな? 貴様の細腕ではあの扉はひらけない。嘘を付くならもう少しまともな言葉を吐けよ、テロリスト」


「わち、私はっ…………ちがいっ……」


「嘘を言うなと言っている」


 ディアエレナが命じ、またウリックの体は壁に叩きつけられた。


 悲鳴を上げながらドアに這って逃げるウリック。ウリックの体はその度に壁や天井に叩きつけられ、ボロボロになっていく。


 目の前のその光景に、まるで動じた様子もないディアエレナは、床に這いつくばるウリックにコツコツと歩み寄り。


 ヒールの高い靴で、腹を刺した。


「かっ…………ぁあああ」


「見よ。私の履物はこの通り、細く繊細なのだ。この意味がわかるか?


 ーーーーあぁ、良いぞ。答えずとも理解しているという顔だな。ならばあんな泥臭く情けない逃げるポーズなぞ取らんで良いものを。


 この靴は私のお気に入りだ。傷つけず歩くのにも気を遣ってしまうからな。無闇に動くなよ」


「わ、らひぁ…………違っーーーー」


「強情だな。危うく私も騙されそうになるがーーーーまぁ、首を刎ねればそう言わなくなるかな」


 ディアエレナは目を細めた。金色の眼光がウリックの体を跳ね飛ばす。


 ウリックは頭から血を流し、焦点の合わない目を泳がせている。足の骨は折れているのか、紫色に腫れ上がっている。手の力だけで這って進んでいる。


 ーーーーその背中から、青く霞が抜けていくのが見えた。


 ディアエレナは金色の鍔に手を掛け。


[って待て! 抜くのか?! 使うのか?! やめろ、なんかこのヒトから出ていったぞ! 魂かも! これ以上はっ……つぅか、やりすぎだ!!]


「まさか。何も抜けてはいない。なによりまだ息がある。やりすぎなわけがない」


[ふざけんなっ……お前なんなんだ?!]


「第一皇女、【帝国の火】、超天才美少女。ーーーーまぁ、どれでも好きに取ればいい」


[お前はっ…………最低だ!]


 鞘から剣を抜くーーーー。


 その手が止まる。ディアエレナは腕をぶるぶると震わせ、眉間にしわを寄せる。剣は鞘から白銀の光を見せていない。鞘に貼りついたように引き抜けないのだ。


「……ほう、どういうことだ? 魔法? 封印の? しかしそんな魔法術式など、どこにもなかったはずだが。私の目を欺くほどのギミックだと? あり得ない」


[ヴァカが! お前に使われるんくらいなら鞘にでも引きこもるね! オレは引きこもりにかけてはプロだぜ! あんたの頭にぶっ刺せないのが不満だがな!!]


「…………貴様の仕業? たかが剣、たかが鉄くずの貴様が? この私に逆らうだと? 小癪だな。やはり気に入らん。我慢ならんわ。消し飛ばすか」


 ディアエレナはオレを無造作に投げ捨てた。壁に当たり、床に落ちる。


 落ちた拍子に空間がひしゃげた。鞘が軋み、周囲の床や壁が抉れる。


「ははぁ。この程度、目線に乗せた魔力弾では無傷か。


 ……ああ、【星竜】。伝説に聞く魔を断つ権能も、あながち嘘ではなさそうだな。


 ーーーーでは、これはどうかな?」


 ディアエレナの両目が金色に輝く。片手を伸ばし、投げ捨てられたオレを掌の上に置くようにお椀を作り。


 そして、握りつぶす。


 ーーーーオレの周りの空間が五指の形で押しつぶされ。


     目の前は、まっくらになった。


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