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金魚の剣



 ーーーー延々、ディアエレナはオレを隠し持ち、皇城を歩き詰めた。


 帝都を包むほどの魔法の中核。それだけ色濃い魔力の流れの中心。それだけ大きな魔力素の塊。そんなもの、オレには見つけられなかった。


 …………それを正直に話す。


 ディアエレナは周りに誰もいないことを確認してから、いらいらと舌打ちをした。その苛立ち、オレは悪くねぇと思いたい。


 しばらくして、ディアエレナは行く先を変えた。ハイヒールが踵を返す。ドレスを翻り、早足に進む。


[ちぇ、んなにイラつくなら自分で見ろよ。オレをアルムのところに返せや]


「ほう、金ピカ。貴様は面白いことを言う。私に魔力を見ろ、と?」


[そうだよ。なんでもできんだろ、おまえ]


「その発言は是だな。私におよそ不可能はない。…………が、こればかりは無理だ。


 いやいや。なにも私に不可能があると言う話ではない。これは単純な、効率の話だ。然るべき条件で検索をすれば、魔法の中核など簡単に探し出せる」


[じゃあさっさとそうしろや!]


「いいから聞け。これは効率の話だと言っているだろう? 私にも不可能ではないが、おまえほどの『魔を見通す目』は持っていないのでな」


[なんでぇ。あんじゃねーかよ不可能]


「………………なるほど。金ピカ、貴様はこれを不可能と称するか。


 しかしな。肉を焼く、魚を焼く、卵を焼く……単に『焼く』という調理の中に、ヒトは何通りの方法を持っていると思う?


 余熱で焼く、直火で焼く、魔法火で焼く、木炭で焼く、電熱器で焼く、IHで焼く、石で焼く、網で焼く、フライパンで焼く…………それら数多ある手法からあるひとつのみを正当とするその判断に、何の意味がある?」


[は?]


「要は……だ。おまえという道具を使って同じことができるなら、私ができるのと何も変わりないと言うことだ」


 …………ものすごく、力技な理論だった。


 それを置く目もなく断言するディアエレナ。世界の常識と言って憚らない雰囲気と気迫でオレを押しつぶした。


 なるほど、これは大器かもしれない。皇帝の器かもしれない。この名状しがたいジャイアニズム的なモノは。


「補足をするとだな」


 しかし単にできないで済ませない。プライドの高いディアエレナだった。特にオレが何も言わなくても解説をはじめた。


「この帝都の魔力。相当濃いものであることは理解しているが、それでも私には圧迫感程度しか感じない。肉の器に縛られた我々生物にはそれが限界なのだ」


[オレは剣だから見えるってか?]


「で、あろう。認めるのはいささか癪だが……肉を持たぬ故、お前の魂のステージはより魔法的に高位のあるといえる。


 この帝国最強の魔法使い、【魔導】にあたるこの私が言うのだ。誇って良いぞ」


 さり気ない自分ageを忘れない。本当に、自己顕示欲が服着て歩いているような女である。


 声に出してツッコミのひとつでも入れてやりたいところだが、自重しよう。マジ捨てられるかもしれない。


[今まで、んなことなかったけどなぁ……]


「認知の有無ではないか? 『そういう目線がある』と自覚することは魔法の基礎のひとつだ。


 おまえは今まで、魔力の素まで見えると認知していなかった。だから形にならず、本来ヒトには見えない領域は見えていなかった」


[要は思い込みひとつ、と。なかなかカルトじみてやがるな]


 オレの感想をさて置いて、ディアエレナは城の窓枠から手を伸ばす。


 ふいにーーーー緑色の光の玉が、ふわりと上空から落ちてきた。


 それはトンボのようにディアエレナの立てた指の上に乗り、何度か点滅を繰り返し、やがてまたふわりふわりと浮かんでいった。


[………………え、いまのなに]


「精霊。この第四世界よりも魔法的に上位に位置する第五世界の住人。…………の、欠片のようなものだ。


 さっきも言ったように、私には完全発動前の魔法を見ることはできない。だから、こうして精霊にお願いして様子を見てきてもらったのだ」


[ほほう。で、何かわかったのか?]


「…………やはり、帝都の守護魔法に偽装して広がっているようだ。全容がその守護魔法と重なっていて見えにくい。


 詳細はなにか、魔法術式の中身がわからなければ断言はできないが…………そうだな。これは【切断】の魔法だ」


[切断? 切る? なにを…………?]


「さてな。これだけの魔力だ。守護魔法ごと帝国領土を両断するつもりか、または…………もっとなにか、概念的なものを大きく切り裂くつもり、か」


[概念?]


「概念を切り取る第五魔法。それをこの規模で展開…………バカな。魔王でも呼び起こす気か?」


[魔王? ……あのさぁ、その固有名詞で固有名詞説明するやつ、やめてくんない? そうやって頭いい風の話し方すんなや!]


 ふん、と鼻で笑うディアエレナ。


 とうにも【魔王】という単語はそれほど、ディアエレナにとって馬鹿馬鹿しいらしい。やめろやめろと言わんばかりに軽く手を振り、窓辺から離れていく。


 …………いい加減面倒になってきたのかもしれない。


 気分直しついでに【魔王】の話でも掘り下げたかったのだがーーーー。


 あんまりしつこいと今すぐ窓から堀とかに捨てられそうな雰囲気だった。


 …………それは困る。さすがにシャレにならない。


 口は、閉じておこう。


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