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そして、マジカル


[聞こえてる……のか……?]


 驚愕したオレにニカリともせずにディアエレナは視線を外した。周囲にヒトがいないことを確認する。


「無論だ。私ほど完璧なら、世界の方から私に付いてくるものである。


 貴様のいう女王、否、女帝と言うべきだが、とにかくそれを襲名するのは時間の問題だ。しかし今の私は第一皇女。ゆめ間違えるな。生身なら塵に返すところだ」


 皇女モードの話し方でディアエレナは歩を進める。


 どうやらここはまだ帝都の中のようだ。ディアエレナが我が物顔で闊歩しているあたり、一番偉そうな建物なのだろう。ホワイトハウス的なヤツだ。


「私のアルムを籠絡するのであれば、まず貴様を始末する故がある。別段、私には貴様のような品のない剣に関心はないのだ。


 ーーーーああ、だがさすがに人語を解する剣となれば、多少関心はあるがね。女として、ではなく、魔導師として、だが」


[魔導師? お前、皇女じゃないのか?]


「…………まぁ良い。ヒトならざる貴様にヒトの常識を倣わせるのもおかしなこと。今日の私は気分もいい。貴様の不敬も流してやる。


 私は【護帝三騎将】の【帝国の火】、帝国を照らすものである。火とは文明、我が帝国において、それへ魔法である。


 すなわち。この帝国の中において、私以上の魔法使いは存在しない。正しく『魔導』と呼べるのは私だけであろう」


[違うのか? 魔法使いと魔導師って]


「違う。料理人と料理長ほどの違いだな。ーーーーまぁ良い。これも戯れ。どれ、御前に魔法のイロハというのを教授してしんぜよう」


 ホワイトハウスをぶらつくディアエレナは、本当に暇つぶしのような雰囲気で語りをはじめた。


 これまでしれっと使われ続けてきた、魔法についての説明だ。


 なんでもーーーー。


 魔法というのは【神代】と呼ばれる時代に生まれた技術なのだそうだ。


 国産みの神々が使った奇跡の法則。それをヒトの手で扱えるほどにグレードダウンさせたものが、現代の魔法である。


 魔法は環境に溶け込んでいる【魔力素】ーーーー読んだ通りの「魔法の力の素」を数式のような「法則」にあてはめ、方向性をつけることで発動する。


「魔力素を食材、法則は調理方法と考えればよい。きちんと手順を踏めば、魔法の料理ができあがるということだ」


 ーーーーさっきから例えが料理なのはアレか。ディアエレナは食いしん坊ってことなのか。


 調理方法に例えられる「法則」は、例えた調理方法のように幾つもの実行方法がある。


 要は魔力素を乗せられれば、音でも絵でもカッコいいポーズでもなんだっていいのだそうだ。


 際たるものがフェーネの「鍵盤」で、音と刻みつけた「楽譜」で魔法を表現するらしい。コンマ数秒のうちに水の竜を身の回りに生み出せたのはその効率の高さ故だ。


 対して、アルムが何度かやったように「つぶやき」と「図形」のふた通りの方法を並列して別々の魔法を発動させるタイプ。特に並列という点は珍しいらしい。


「ああいうことをすると、大抵発散する。野菜を切りながら魚を捌くようなものだぞ。なかなか器用よな。発散せずに連鎖して魔法が発動するのはあの効率の良さ故だな。


 ーーーーさすが、私のアルムだな」


[あ?]


「そういきり立つなよ、サヤ……だったか? 何故、この私が、貴様ごときにこんな話をしてやっているのだと思う?」


[暇つぶしだろ]


「ふむ、その回答では五割だ。ーーーー人語を解するほどの魔剣なら弁えられよう。魔力素の流れ、魔力、すなわち『魔法の構造』が」


[はぁ?]


「気づかないか。……まったく、話も城内徘徊も骨折り損だな。見ろ、城に魔力が渦を巻いているだろう?」


 そう言って、ディアエレナは窓際でホワイトハウスの上空を指差した。


 …………青い雲がある。


 それが渦を巻き、ホワイトハウスの真上にだけ点穴ができている。まるで台風の目のようだが、不思議と風は感じない。


[なんだ、あれ]


「見えるか。安心したぞ、サヤ。あれはだな、端的に言えばーーーーこの帝都を吹っ飛ばそうとしている大魔法だ。第五魔法級だな」


[……………………は?]


「あの魔法を消さぬ限り、我々は帝国と共に消し飛ぶということだ。魔法の構造を理解できる貴様がいると話が早い。アテにさせてもらう」


[…………………………えっ?]


 ーーーーかくして。


 アルムと離れ離れになったオレは。


 哀れ女王様にパシられることになった。


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