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夢の道筋

「ふはははははははははははははははあっははあっははははははあっははははははははは!!」


 観客のバカ騒ぎから逃げて舞台から戻ってきたはずだったがーーーー。


 待っていたのはまたバカ声だった。


 アルムの目の前には、腹部を押さえながら爆笑する男がひとり。


 アルムは無視して通り過ぎようとしたが、がしりと肩を掴まれた。振り払おうにも相手の力は強く、そう容易ではない。


「まあまあ、そう邪険に扱うな。おれは楽しい。無茶苦茶にだ。アルム殿、あんた強過ぎだろう。くははあはははははっはははあはっはあっはあははははははははばさっじゃ」


 もはや最後の方は笑い声かどうか判別できない。タイプミスを疑うレベルである。


 じろりと睨んで相手を伺うアルム。


 帝国を代表するほどの騎士であるシュラはアルムを前にして肩を掴み、何をするでもなく笑い転げていた。


[なんだこいつ]


「…………なに?」


「ふづひゃはひゃはうあっはうあじゃや。……ああ、すまんすまん。つい笑いが過ぎてしまった。まずは一回戦突破おめでとう。とにかくこちらが先よな。気分は最高か?」


「出来過ぎだった。私が重力魔法が使えると知られていれば、ああも簡単に張った罠にハマってくれたのは偶然。ライラックの戦い方とうまく噛み合っただけだよ」


「そうであろうな。ライラックはあれで無策なだけの突撃バカではない」


[うっそでぇ。お前だって昨日雷バカ呼ばわりだったじゃねーか]


「ライの強みは直感力だよ。無策でも土壇場でそれをフォローできる男。フレキシブル突撃バカだ。単純な斬り合いなら、あいつ相手に楽勝するヤツはいまい。


 まぁ、ヤツの得物は銃だがな。タダノ・アルム殿の罠はライの直感をはるかに超えていたという話だ。それ故に……」


「同じ手は二度通用しない……ということ?」


「その通りだ。これは、私がひとりの騎士として、ひとりの友人に贈る助言だ。


 ーーーーあのような手が二度使えるとは思わないことだ。では、二回戦の健闘も期待している」


 最後だけ表情を締め、シュラは宣告した。すぐににかりとして太陽のような表情を作り、軽く手なんか振りながらその場を退散していった。


 選手専用のベンチから観客席ーーーー貴族達が集まっている場所に目を移す。場は相変わらずやかましく活気に満ちていた。まだアルムの次の試合は始まっていない。


 アルムの一戦が大きなインパクトだったのだろう。貴族達もどこか浮き足立っている。ざわつきが大きな波になっているのを感じる。


「あの様子じゃ、観客席に私が行くのは難しいかな」


[騒ぎの当事者が爆心地に行けば、当然もみくちゃだろうな]


「…………ジョンに会っておきたかったんだけどな」


[好きなのか!?]


「お願いのこと。あれで良かったのかって聞きたいの。魔法だけで勝つって……派手ならいいって言ってたけど。……次もやるなら私、さすがに負けちゃうよ」


[まぁ……その観客席がアレなら、反響は充分っぽいけど。ところで二戦目は? 会えない奴の話より、目の前のことをやろうぜ]


「…………そうだね」


 アルムは観客席に向けていた視線を外した。ジョンを諦め、対戦表の張り出されたフロアに足を向ける。


 ーーーーやったぜ。あんな得体の知れない男にアルムを好き勝手させてやるものか。


 対戦表は少し開けた場所、各々の選手控え室に分かれる前のフロアに大きく張り出されていた。


 どうやらこの世界、インターネットだのスマートフォンだのの通信技術はあまり発展していないらしく、こういう紙面が主流のようだ。


 しかしこのポスター。驚くなかれ、インクが勝手に動いてトーナメントの進行が逐一リアルタイムで自動更新されるのだ。


 別系統の技術ながら、十分インターネットしている。まさにファンタジー。


 対戦表の前には誰もいなかった。アルムの次の試合が行われている真っ最中のせいだろう。控え室に引っ込んで試合を見ているのかも知れない。


 メンテをしにきたヒトがいたというわけでもない。


 しかしやはり、明確に見えていた。


 対戦表上でも間違いなく、ライラックの名前は消えーーーー。


 アルムが次に駒を進めていた。


 ……それを見つけて、アルムはわずかに顔を緩ませた。オレは見逃さなかった。

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