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マホウのキオク

 ジョンはぽつりぽつりと話し出した。


 ーーーーかつて。


 ジョンはその昔、夢を語り合った5人でチームを作り、東奔西走の大活躍(自称)を重ねに重ねたそうだ。立ち上げた伝説は数知れず。まさしく一世風靡した知名度を誇ったらしい。


 しかし、ある時突然、チームは解散になった。


 それからは散り散りになり、連絡もさほど取り合う間ではなかった。


 しかし最近になって転機が起こる。チームメンバーの一人が亡くなったのだ。


 そのヒトはーーーーチームの一人と恋仲だった。そしてジョンの恋敵だったそうだ。


 そういうわけでジョンは意中のヒトに会いに行こうとしたわけだが、相手は帝都住まいの貴族階級。会うにもこうしてチャンスを伺う必要があったーーーーらしい。


[…………要は未亡人をターゲットに焼けぼっくりに火をくべに行くわけか。うわーうわーうわー。汚いなさすがオトナってきたない]


「何年会っていないか知らないけれど、会ってどうするの? 相手は貴族。今更、その……あなたが相手にされるとは……思えないのだけれど」


「ハッキリしてるな、アルム……。まぁ否定出来ないのが一番キツイが。


 まぁ、仕方ないだろう。会いたくなったんだ。そういうものだよ。意味は別としてね。


 ーーーー何も起こらないなら、それが一番いいんだろうさ」


「…………それは、どういう…………?」


[あー、やめろやめろやめろ。アルム、そこはそれ以上掘り下げちゃダメだ。ネットリとした性が! ネバネバした情念が! 耳からなにかデキちゃうから! 筋肉裂けるから!]


「………………???」


 混乱を極めた表情のアルムをよそに、ふたりはパーティドームに到着した。


 ジョンが招待状を見せる。警備員らしい黒スーツの男は特に警戒した様子もなく中に招き入れた。


 ーーーードームの中は、広かった。


 さすがに野球はできそうにない。いくつかの支柱が立ち並び、壁に仕切られ、いくつかのハコに切り分けられていた。そのハコひとつの容積では野球には狭すぎる。


 それでもハコひとつひとつは展示場と呼ぶ程度は確保されているあたり、ドームの容積自体は野球が出来るほどにはあるのだろう。


 また、装飾には黄金色の造詣が目立つ。黄金の像。黄金の扉。とにかく明るいシャンデリア。まともに目を開いていてはすぐにでも目を灼かれそうな空間だ。


 レッドカーペットが道筋を目立たせ、所々には白いテーブルクロスを掛けた背の高い丸テーブルがある。


 老若男女、しかしいずれも整ったドレスに袖を通し、極めて上品な笑い声をあげてご歓談しなさっている。


 ーーーーオレたちは100%ぶっちぎりの場違い感だった。


 身なりはいい。しかし一目瞭然だった。漂うオーラというか彩度というか光度というか、そういうものが絶望的に隔たっている。


 身につけた下ろしたてのドレスがダーティに見えてくる。輪郭さえくすんでいる。背中も煤けている。このまま陽炎になって消え去ってしまいそうだ。


 理屈でなく卑屈でもなく、これは本当に「遺憾」としか言いようないが、貴族社交界的に余所者・部外者なのが丸分かりだった。


「…………固まっているとツラいな。別れるぞ」


「えっ」


「女は度胸だ。素敵なジェントルマンをダンスにでも誘ってろ。ではな」


 などとアドバイスらしいことを言って、ジョンは逃げ出した。足早に。


 煌びやか120%の社交界に、アルムはひとり取り残されていた。いや、正確にはオレもいるわけだが。


「…………どうしよう」


[とりあえず…………食べるか?]


「…………食べよっか」


 ころりと気持ちを切り替えて、アルムは近場のテーブルに向かう。見渡す限りの料理、皿、料理、料理、酒、料理、皿、料理ーーーー。


 アルムの気持ちは跳ね上がった感触が、確かに伝わってきた。


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