第九話 ゴスロリ幼女は強かった
行きたくないとゴネるフランを小脇に抱えた俺は、公園へと向かっていた。
ギャーギャー騒ぐから通行人の目が痛い。
決して誘拐じゃないんです。
俺は単に、SSRに当選したヤツと、そのSSRを見たくてたまらないだけなのだ。
そして、出来ることならコイツと交換してもらおう。
黒柱があった辺りに来ると二つの人影が見えた。
やべぇ、小さい!
でも、どっちも可愛いよぉ!
ハァハァ。
片方はセーラー服を着た中学生くらいの子、黒髪をボブっぽくしている。
もう片方は、なんだこれ?
レースをこれでもかとふんだんに使ったゴスロリ? みたいなヒラッヒラな服を着たツインテールで小学生くらいの子。
なんだか色々ダメそうな気もするが、中ボスクラスを一瞬で消し飛ばしていたことを思い出し、出来るだけ爽やかでにこやかに近付いて行く。
是非ともお近付きになりたい。
ハァハァ。
「やぁ。さっきのはすごかったね。君たちだろ? アレを倒したの」
「キモッ」
俺の小脇で荷物扱いされてるフランがボソっと言う。
ゴミ箱にぶち込んでやろうかと思ったが、気を取り直し、改めて二人を見やる。
二人とも目の覚めるような美少女だ。
セーラー服の子がためらいがちに答えてくれた。
「そうです……でも私、なにがなんだか」
そうだろうとも。
俺ですら未だによく解らん。
くー、声も可愛いなぁ。
「で、そっちの君がSSRの子かい?」
ゴスロリっ子に声をかけると、
「そう…わたしはSSRのシャニィ…こちらの如月弥生様が…わたしを御当選なさった…」
と、頼んでもいないのに説明してくれた。
ダメだ。
二人とも俺の好みすぎる。
「…貴方も…当選者…?」
「おう」
ゆったりとした口調のシャニィに俺は小脇に抱えたフランを、猫の子のように掲げて見せた。
「俺はミウラアキト、こいつがSSRのフランだよ。ほれフラン、挨拶」
「ひさ、ひさしぶりねシャニィ……」
「…何をやっているんですか…貴女は…」
呆れたようなシャニィにフランは引きつった笑顔で答えた。
「えっ? 知り合い?」
「…はい…向こうでは…フランさんが…わたしの先輩…」
「うわー……」
ドン引きした俺が情けない先輩を見ると、フランは真っ赤な顔を両手で隠した。
よほど恥ずかしかったようだ。
こんなアホっ子が先輩では、シャニィもさぞや苦労したことだろう。
「で、弥生さん、だっけ。どうぞよろしく」
「あ、はい。よろしくお願いします。ミウラさん」
少しオドオドした感じで言う彼女に俺は「アキトでいいよ」と片目を瞑って言った。
我ながら格好付けすぎかと思っているところに、小脇のフランがプークスクスと笑っている。
後で泣かすと俺は誓った。
「あ、私もヤヨイでいいですよ! 名前で呼ばれるの、好きなんです」
意外と積極的なことを言う子だった。
オドオドモジモジっ子かと、勝手に思っていてゴメン。
「フランさん…話を戻しますが…貴女は何故まだこちらにいるのでしょう…? 貴女が当選者の元へ転移したのは…かなり前なのでは…?」
シャニィが最もな意見を言う。
喋り方はアレだが、中身はまともなようだ。
「だってこの男がゴネるんだもん! 私だって早く戻りたかったのに、この男がここがいいんだろ? まだいいんだろ? って……!」
「おいこらテメェ! 適当なこと吹いてんじゃねぇぞ!」
ヤヨイとシャニィが汚物を見るような目で後ずさる。
違う! 違うんだ!
パンツを見たり、風呂を覗いたりはしたけど、まだ一線は越えてないんだ!
誤解を解くべく必死に説明すると、二人は訝しみながらもなんとか納得してくれたようだ。
危ないところだった。
こんな可愛い美少女たちを逃がすのは勿体ないもんな。
なんとしても仲良くならねば。
取り敢えず、フランよ。
お前は折檻確定な。
俺は、どうやってフランを泣かせるか悩むのであった。