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第四十五話 地下回廊で見た物は


 さぁ。いよいよ下へ。



 俺が先頭で慎重に降りて行く。

 かなり長い階段だ。

 相当な深さまで達しているだろう。


 妙な臭いはしない。

 ジメジメしているわけでもない。


 淡い光源はどうやら壁自体が光っているようだ。

 ある程度の光量があるのでランタンや松明は必要なさそうだった。

 一応準備はしてきたんだがな。


 それにしても……なんだこりゃ……?


 古代に作られたんじゃなかったのかよ……


 壁も床も直線だ。

 あまりにも整いすぎた直線だ。


 まるで俺たちの世界の建物の中、いやそれ以上か。


 整然としすぎていて、近未来映画を見ているような錯覚に陥りそうになる。


「すごいな……」


 思わず感嘆の声が漏れてしまう。


 通路は結構広く、三人は並んで歩ける。

 全員が下りたのを確認してから歩きはじめた。


 とは言うものの、視界に入る限りは真っ直ぐな通路しか見えない。

 俺は盾だけを構え歩き出した。

 対侵入者用のトラップが無いとも限らないからだ。


 体感で数分も歩いただろうか、代わり映えのしない直線通路が続いていた。

 だが、突然どこからともなく声が聞こえてきた。


「ここは閉鎖されている。すぐに引き返せ。これは警告である」


 重々しい男の声だった。


 正直驚いたが、俺たちはその場で身構えた。

 しばらくそのまま待ってみるが、変化はない。


「不死者の王かと思いましたね」

「ああ、ビビらせやがる」


 ヤヨイの言葉に俺は大きく頷いた。


 そう何体も不死者の王がいるとも思えないが、脳裏をよぎったのは間違いない。


「わざわざ警告してくるってことは、この先は危険ってことだろうな。慎重に行くぞ」


 全員が頷くのを見届け、再び歩き出した。


 するとすぐに前方から蜂の羽音のようなものが迫ってきた。

 どうやら複数だ。


 ビィィィィィィ


 俺たちの少し上にホバリングしているそれは、大きな眼球に四枚の羽を付けたような姿をしている。


「なんだこれ? 誰か知っているか?」


 皆、首を振る。


 ビッ


「うおっ!」


 目玉が俺を目がけて赤い玉を放ってきたのだ。

 その光弾は俺の肩を鎧ごとぶち抜いた。

 被弾した場所が煙を上げる。

 肉の焼ける臭い。


 頭の中までが焼けるような痛み。


「アキト!」

「ぐっ、油断した。フランとミリアは後ろへ! ラスターは前に来てくれ!」

「応!」


 俺のもとに駆け寄ろうとするフランの手を引っ張り、ミリアがさがっていった。

 代わりにラスターが盾を構えながら前に出てくる。


 しかしなんださっきの攻撃は。

 あれじゃまるで光学兵器だろ……


 肩の激痛に盾を持ちあげることも出来ない。


 その時、俺たちの身体を包み込むように紅く輝くシールドが展開された。


 フランか、ナイスだ。



「僕に任せたまえ」

「無理はするなよ」

「わかっている」


 短いやり取りの後、ダッとラスターが走り、跳んだ。

 目玉の一匹に斬りかかる。


 ガゴッ


 金属を金属で叩いたような音がした。

 斬れてはいない。

 だが目玉は叩き落された。


 眼球部分が大きくへこんでいる。

 四枚の羽が力無く数度動き、止まった。


 ラスターを囲むように残りが羽ばたいた。


 彼の背中側に回ってきた目玉を剣で殴りつける。

 片腕が利かないせいで剣筋が乱れるも命中した。


 狙い通り、羽を破壊。


 落ちた目玉は、びーびー音を立てて飛ぼうとするが無駄だ。

 真上から眼球に剣を突き刺してやる。

 その寸前、目玉がこちらを凝視し、光弾で反撃してきた。


 カンッ


 フランの張ってくれた紅いシールドが綺麗な音と共に弾を跳ね返した。


 やるじゃんフラン!


 その間に俺の剣が眼球をベッコリとへこませる。

 切っ先が欠けそうな手応えだ。


 多数の光弾がラスターを襲っているが、紅きシールドが全て無効化していた。


 全方位防御とは恐れ入った。



「アキト! ここは僕が引き受ける! 君は癒してもらうんだ!」

「わかった! 任せる!」


 俺はラスターの邪魔になると判断し、一旦後方へ退いた。

 俺の前にヤヨイとリッカ、そしてシャニィが入れ替わりで出る。

 すぐに泣きそうな顔のフランと心配そうなミリアが駆けてきた。


「鎧を外しますねっ」

「ああ、頼む」


 傷はミリアに任せよう。


「アキト、大丈夫!?」

「大丈夫だ。泣くな」

「グスッ……うん」


 結局泣いてるし。


 俺はフランの涙を親指で拭ってやった。


 傷口だが、血はそれほど出ていなかった。

 焼けて歪な形に塞がっている。

 光弾の熱量によるものだろうか。

 本当に光学兵器のような気がしてきた。

 ここは本当に謎と疑問だらけだ。



 ミリアの癒しを受けて回復した俺は、鎧の肩部分を外したまま前線へ戻る。


 皆の奮戦により、残りは二匹まで減っていた。


 見れば全員身体の端々から細い煙を立ちのぼらせている。

 直撃ではないようなので少し安心した。


 シールドの効果が切れてしまったのだろうが、この先何が待っているか解らない。

 フランの精神力を出来れば温存しておきたかった。


「俺が出る!」


 阿吽の呼吸で全員が俺に道を開けた。

 残った二匹が縦に並んだ瞬間を狙う。


 裂帛の気合と共に振り下ろした剣は、二匹を同時にとらえた。


 通路に叩き付けられ、どこまでも転がって行く二匹。

 そのまま二度と動き出すことは無かった。



「みんな、怪我は?」


「…かすっただけ…」

「私もです」

「私もよ」

「僕も問題ない。今の太刀筋は良かったよアキト」



「…あ、でも…ここ擦りむいたから舐めて…」


 シャニィは自分の胸を指さしている。



 どうやってそこを擦りむくの!?



 ダメだ。目付きが危ない。

 ほっとこう。



 そして俺たちは全員集まってハイタッチをするのだった。



 少しの休憩を取った後、俺たちはまた歩き出す。

 先程の目玉羽がもう出ないことを祈りながら。


 それにしても長い通路だ。

 無限に続くのではないかと言う不安に襲われる。


 そうか、だから彼方の回廊なのかな?


 真偽はともかく、俺たちはひたすら歩いた。

 すると、またあの声がどこからともなく響いてきた。


「今すぐ立ち去るのだ。これは第二警告である」


 うへ。最初のでも結構苦労したのに。

 先が思いやられる。


 更に進むと、いきなり壁の光源が途切れている場所があった。

 行き止まりである。


 これで終わりなはずはない。

 いや、ここに追い詰めるのが目的だったとしたら……


「ラスター。念のため後方を警戒してくれ」

「わかった」


 俺は行き止まりの壁の厚さを調べるべく、ドンと叩いた。

 つもりだったんだが……俺の拳は空を切った。


「えっ?」


 反動でつんのめるのをなんとか踏みとどまる。


 どうなってるんだ?


 壁のように見えるそれは何の抵抗もなくすり抜けられた。

 ただの通路に壁の絵を投影しているだけなんだろうか。


 俺は思い切って頭を突っ込んでみた。


 視界が一気に開ける。


 かなり広い空間の真ん中に、台座に乗ったガラスケースのようなものが鎮座していた。

 その中には何かが納められているようだが、ここからは良く見えない。



 近寄ろうとした時、警報音のようなものが空間中に鳴り響く。

 緑がかった光源が、パッと赤色に切り替わった。

 どう見ても警戒色だろう。


 うわ、やっちまったかな……?

 こりゃフランの事をアホの子呼ばわり出来ないな。


 ゴゴゴゴ


 ガラスケース手前の床が開き、何かがせり上がってきた。





 圧倒的な存在感と威圧感。


 それは、真っ白いつるんとした全身を持つ、人型の何かだったのだ!

 

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