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第四十四話 二人は全裸でベッドイン!?


 翌朝。



 チュンチュン



 ベッドの中でまどろみの中、鳥のさえずりを楽しんでいる。


 

 別に朝チュンではない。



 朝か……起きたくない……


 久しぶりに緊張感のいらない夜だったのだ。

 ゆっくり寝ていてもバチは当たるまい。


 部屋の中にまで階下の食堂から、焼き立てのパンの香ばしい匂いが立ち込めている。



 いい香りだなぁ……


 この石鹸の匂いも……


 それと人肌のぬくもりはやっぱり安心するよな……





 ん?

 石鹸?


 人肌!?



 バチッと目を開けた。



 俺の胸元にかかる寝息、そしてツインテールの頭が毛布に半分埋まっている。



 なんだ……シャニィか……

 シャニィなら俺の身体を普段から枕にしてるような子だからいいか。



 あれ?

 でもなんで人肌……?



 俺は恐る恐る毛布をめくってみた。

 嫌な予感というものは的中率が格段に上がるのだ。



 二人とも全裸だったのである。



 待て待て、待って!



 これ完全に朝チュンじゃん!!



 嘘だろ? いくら俺がロリコンとは言え……やべ、自分で認めちゃった。

 いや、そうじゃなくてこれは事前なの!? 事後なの!?



「…んぅん…」


 シャニィは俺に抱き着く位置を変え、また気持ち良さそうに寝息をたてはじめた。

 もぞもぞ動く身体にどうしても目が行く。


 まだ色々小さいが綺麗な身体をしている。

 思わず生唾を飲み込んでしまった。


 勿体ないが、目を無理矢理引き剥がす。


 今こそ冷静になる時だ。

 こんなパンツも穿いていない状況では流石に言い逃れできない。


 まず、確かめることがある。


 俺は自分のブツを触ってみた。

 何かを発射した形跡はないようだ。

 カピカピになっていたりもしていない。


 俺は少しだけホッとする。


 第一段階クリアだ。

 次は昨晩の記憶を探る。


 えーと、風呂から上がった後……食堂で酒を飲み直して……あれっ?


 そこからの記憶が無い。


 しばらく頭をひねるが、全く思い出せない。

 仕方なく諦めて別の問題に悩むことにした。


 このままのオチだと、フランが飛び込んできて、うわーーん! のパターンだよな。

 それを回避するには……


 俺は目を閉じて思案する。


 何かいい手はないものか。



 チュッ


 唇に柔らかいモノが当たった。



「…おはようアキト…目覚めのキス……それと…昨夜はおたのしみでしたね…」


 イタズラっぽく微笑むシャニィ。

 頬が赤いのは流石に羞恥心の表れだろうか。



「待てぃ。俺に記憶は全くないぞっ。それにチューはまずいだろチューは」


「…どうして…?」


「いや、その、倫理的にと言うか……」



「…わたしはアキトが大好き…愛してるからいいの…」


「あ、そ、そうですか……じゃなくて!」



「…証拠を見せる…」


 俺の顔をがっちりホールドすると。



 ブッチュウウウウウ



 す、吸われるっ!!


 吸引力に負けて引きずり出された俺の舌に自分の舌を絡ませてきた。


 なんて大胆な!!

 お父さんはゆるしま、すん……


 許しちゃった!


 シャニィは愛おしむように優しく吸いつく。

 ここまで来てしまったら、俺も負けてはいられない。


 わざとピチャピチャ音を立てていやらしく舌を絡ませてやる。


「…んんっ…んっ…はぁっ…」


 頬を真っ赤に染めて必死に小さな舌を動かしている。

 こんなに小さいのに感じているのだろうか。


 やばい、興奮する!


 俺の手は無意識にシャニィの胸や尻をまさぐっていた。

 小さいが柔らかくすべすべな感触に、手は加速していく。



「…あぁっ! …んっ…!!」



 舌と手が今まさに最高潮と言う時────



「アキト。食事の時間らしいよ。起きたま……えええぇーーーー!!!???」



 朝練帰りだろうか。

 剣を担いだラスターの絶叫が木霊した。



-------------------------------------------------------------------------------


 結局、昨晩は何事もなかったようだ。


 明け方、トイレ起きたシャニィが俺の部屋に潜り込んで寝ていただけらしい。

 俺が全裸だったのは酔った暑さで脱いだのだろう。

 シャニィまで脱いでいたのはさっぱり意味がわからないけどな。


 それにしても潜り込んだシャニィに気付かず、朝練に行ってしまったラスターもすごいな……

 剣術馬鹿にも程がある。



 唾液でベタベタの顔を洗い、着替えて階下の食堂へ降りる。



「アキトー。おはよー。遅いよー」


 フランが元気にパンを頬張っていた。

 他のみんなも揃っている。


 シャニィも既にもぐもぐしていた。

 俺に気付くと、なんとも妖艶な笑みを浮かべる。


 なにその大人の女になった! みたいな顔。


 俺も椅子に座り、お茶を飲む。

 気まずくてフランとヤヨイの顔をまともに見ることが出来ない。

 

「「……?」」


 やばい。

 二人が何か感付きそうだ。

 こういう時の女子の嗅覚力、察知力、洞察力は半端ではない。


 俺は素知らぬ顔でパンを食べ始めた。

 二人の視線を顔に感じるが、無視無視。





 女将さんの話だと、彼方の回廊はこの街から西へ、歩いても半日程度で行けるらしい。

 俺たちは余計な荷物を馬車から降ろし、宿に置いて行くことにした。


 一応、不測の事態に備え、三日分の食料と水は持っていこう。


 準備万端整えて、いざ出発。



 森の中をひた走る黒王号と流星号。

 世話人の腕がすごかったらしく、二頭の毛並みがつやつやしていた。



 そして昼を過ぎたころ、それらしき場所に辿り着いた。


 なるほど、壊されてはいるが確かに教会っぽい建物だ。

 石造りのせいもあるのだろうが、幸い火をかけられた跡は無く、瓦礫をどかせば内部の探索はできそうだった。


 辺りに散らばるステンドグラスの残骸が無残である。


 手分けして入口の瓦礫を運び出す。

 数分で人が入れるくらいの隙間を確保した。


 勿論俺が先頭を切って入る。

 しんがりはラスターだ。

 怪物が潜んでいないとも限らないからな。


 内部はやはりあちこち破壊の痕跡が見られ、荒らされてもいた。

 それでもなお、神聖な空気は揺るがない。

 

 一番奥には所々欠けているが、大きい女神像のようなものが優雅に微笑んでいた。

 

 何の神を祀っていたのかも解らない。

 なぜここが彼方の回廊と名付けられたのかも解らない。


 それほど大きくないこの建物にいったい何があると言うのだろう。


 そして何故怪物たちはここを破壊したのだろう。


 何か理由があるはずだ。


 確信にも似た何かを俺は感じている。

 クレアの占術、女将の言葉。


 答えは必ずある。

 それが俺たちを帰還させられるものであることを期待しようじゃないか。



「みんな、すまないがちょっと見回ってくれないか。どんな些細な事でも気になったら教えてくれ」


 皆は素直に頷いてくれた。


「それと、玉座があったらその後ろを良く調べてくれ」

「教会に玉座があるの?」

「お約束ってヤツだよ」

「なにそれー」

「それは冗談だが、フラン。お前には期待しているぞ」

「そ、そう? エヘヘー、頑張るね!」


 なんてチョロい子……


 俺は思わず憐れみの涙を流しそうになるのをグッと堪えた。


 でもフランに期待しているのは本当だ。

 なんせ余計なものを探し出す天才だからな。


 俺も探索を始める。

 すると間もなく。


「なんだろこれ」


 ほらな?



 ゴゴゴゴゴ



 建物全体が小刻みに振動している。


「フラン。何を見つけた?」

「うん。壁の隅にね、色の違う石があったから押したの」


 フランの指さす辺りの壁を見ると、確かに色の違う四角く小さい石がはめ込まれている。


 本当に良く見つけるなこんな細かいの。


 振動と地鳴りがやむと、女神像の下に人一人が通れるくらいの降り階段が現れた。


「良くやったぞフラン。こっちに来い。撫でてやる」

「わーい」


 フランの頭を撫でながら俺は思う。

 これこそがこの彼方の回廊の隠された真実なのだろうと。


 階段の奥には、まるで俺たちを導くかのような淡い光が見えていた。




 未知への興味に俺の胸は高鳴っていったのだ。

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