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第四十三話 浴場で欲情する者


 嘘だろ?


 このおばちゃんは何を言っているんだ?

 いきなり目的地が無くなったぞ。


 俺たちは食べるのも忘れて呆然と固まるしかなかった。



「あら? あたし変なこと言ったかねぇ?」


「い、いや、いいんです。大丈夫です」

「ねぇ、どうするのアキト。どうするの」


 どうするって言われてもなぁ。


「取り敢えず明日にでも直接見に行くしかないだろう」


「お兄さんたち、彼方の回廊に用があったのかい?」


「ええ、まぁ」


「そうかい。そりゃあ残念なことしたね。とは言っても、彼方の回廊なんて仰々しい名前だけど、あそこはただの古代教会だからねぇ。定期的に掃除には行ったりしてたんだけど、普段は誰も寄り付かない場所だしね。怪物もなんでそんなところを壊したのかわからないんだよ。でもねぇ、昔から大切にしていた場所だからねぇ。やっぱり寂しい気持ちにはなるよ。聖騎士団もとっとと災厄を祓ってくれればいいのにねぇ!」


 話が長い!


 だが、今の女将さんの話には気になる情報が含まれていた。

 確証も確信もないので今はまだ黙っておく。



「うん。やっぱり明日行ってみよう」

「もぐもぐ……アキトに任せまーす」


 フランはいつも俺に丸投げだろ。


「悪いが、予定通りだ。すまんなラスター」

「大丈夫だよ。僕も興味があるしね」


「よし、じゃあ今日は食って飲んで風呂でさっぱりしよう!」


 俺たちは気を取り直して、二度目の乾杯をするのであった。


-------------------------------------------------------------------------------


 食後、俺は部屋に戻り剣と鎧の手入れをしていた。


 各パーツのゆるみなどがないかチェックし汚れを拭った後、武具屋の店主に教わった通り油で磨き上げる。

 くすんでいた金属が光沢を帯びる様はなかなかの快感だ。

 

 一人で悦に入っていると、ラスターが部屋に戻ってきた。


「熱心だねアキト。武具を大切にするのは良い事だよ」

「こいつらが生命線だからな」

「ハハハ、君はきっと良い剣士になる」


 ラスターは濡れた髪を拭きながらニコニコしていた。


 この爽やかさんめ。


「おっと、先にお風呂をもらったよ。君も入ってくるといい」

「ああ、行ってくるよ」


 俺は下着と手拭いを持って風呂場へ向かう事にした。

 途中で出会った女将に案内してもらう。



 チャポーン



「ふぃー。やっぱ風呂はいいなぁ」


 手拭いを頭に乗せ、木造りの湯船にゆったりと浸かる。

 かなり大きい湯船だ。

 五、六人なら入れるだろう。


 お湯に疲れや悩みが溶け出していくような感覚。


 ババンババンバンバンと鼻歌を歌いたくなるのは国民性ゆえか。




「あー、おなかいっぱいだねー、まんぷくーまんぷくー」

「…ここの料理はおいしかった…」

「やっぱり料理は出来た方がいいですよ。胃袋を掴めって言うじゃないですか」

「私は苦手なのよね……」

「今度私が基本から教えますよ」


 脱衣所の方から声がする。


 まじかよ!?

 男湯だぞこっちは!


「おっふろー! いっちばーん!」


 脱衣所からフランが飛び出してきた。

 そして俺を視認した途端に硬直する。


 手に大きいタオルを持ってはいるが、当然全裸だ。

 やはりなかなか良い身体をしている。

 特にふとももから尻へのラインが素晴らしい。


 俺はもはや逃げも隠れもせず、どっかりと湯船に浸かったままだ。

 覚悟など一瞬で完了している。



「ほう、フランは大胆だな。俺に見せたいのか?」

「……アキ、ト……? なにしてるの……!?」


「ナニって風呂だが。ところで隠さなくていいのか? ならもうちょっと見せてくれよ、グヘヘ」

「……ッ!!!!!!!!」


 声にならない悲鳴を上げて、フランはしゃがみこんだ。


「はっはっは、照れ屋さんめ。可愛いお尻が丸見えだぞぉ」

「エッチ!!」



「…あれ? アキトがいる…わーい…」


 シャニィもタオルを巻かない派か。

 神よ、ありがとうありがとう!


「ちょ!? 何をやってるのよアキト! アンタそこまで堕ちたの!?」

「あらあら、どういうことなんでしょう」

「アキトさんの変態! 鬼畜! ホモになっちゃえ!」


 なってたまるかっ。


 おっと三人組は身体にタオルを巻いていたか。

 無念。


「俺にもわからん。女将さんの案内で来たんだが」

「私たちもですよ」

「ははは、こりゃあ謀られたかな?」

「うふふ、そうかもしれませんねっ」


 などと、のんびりミリアと談笑する。

 動じていないミリアもすごい。


「ほれ、お前たちも遠慮せずに入るといい。おっと、身体を洗ってからな」


「…はーい…」


 シャニィを先頭に洗い場のほうへ向かう五人。

 素直すぎる上に誰も出て行こうとしないのが不思議だ。


 小さい椅子に腰かける五つの背中と、お尻。


 しかも洗う時に動くもんだから色々見えそうに……!


 ハァハァ、たまらん!!


 おれは平静を装いながらガン見する。

 こんなチャンスは滅多に無い。

 右から順に、じっくりと舐めるように眺めて行く。


 本当は背中を洗ってやりたいが、今立ち上がるわけにはいかないだろう。


 俺のアレもアレなことになってるしな。



 どっぱーん


「…アキトーあらったー…」


 洗い終わったシャニィが全裸のまま湯船に飛び込んできた。

 そしてそのまま俺に抱き着く。


 ちょっ、密着されるとやばい、けどすべすべだぁ。

 せっかくだし堪能しておこう。


 あっ、あっ、シャニィ今はあんまり動かないでくれ……暴発しちゃう!


「…なにか硬いのがあたってる…」

「た、短刀さ。いついかなる時も用心しないとな」

「…そうなの…?」


「こらー! 離れなさいシャニィ!」

「…いやです…」


 フランの怒号とともに、他のみんなも湯船に入ってきた、が残念なことにタオルを巻いている。


「思ってたよりも恥ずかしいんだけどー……」

「これはある意味屈辱だわ……」

「ここまで変態で鬼畜だとは……思っていましたよ。ええ」

「気にしたら負けですよっ」


 何と勝負しているのかはわからないが、皆の顔が上気しているのはお湯のせいだけではないだろう。

 肌も艶めかしく赤く火照っている。


 みんなエロ……否、色っぽいですなぁ。


 流石に六人が湯船に入ると少し窮屈だ。

 自然にお互いが密着する。


 やばいな。

 我慢できるか自信がなくなってきた。

 黙っていると余計にやばい。

 何か話して気を紛らわせよう。


「みんな、今日までの旅、ご苦労様。明日からもよろしく頼むよ」


 俺は頭を下げた。


 俺の殊勝な態度にみんなは気を取り直したようだ。

 フランとヤヨイはキュンとした顔になっている。


 計算通り……!

 チョロいもんよ。


「アキトこそご苦労様! 慣れない土地で大変だったね!」

「アキトさんがいたからここまでこれたんですよ!」


 フランとヤヨイが左右から俺の腕にしがみついてくる。


 ああっ、割と大きいのと小さいのが同時に……!

 計算外だっ!

 でも柔らかい!

 って余計にピンチだ!


「まさか私も本格的に剣術をさせられるとは思ってなかったわ……」

「私は楽しいですよ、みなさんとご一緒ですしねっ」

「…わたしも楽しい…みんなとずっと居たい…」

「あっ! 私もー、私もー!」

「勿論、私も忘れてもらっちゃ困りますよ!」


 うんうんと全員が頷いている。



 我が女神たちは最高です。



 俺たちはその後ものぼせる寸前まで笑い合うのであった。

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